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クリスマス休暇がやってきた。この休暇で残っている生徒は例年より遥かに少ないらしい。きっと事件が続いている事が影響しているのだろう。クリスマス当日の朝、私は珍しく早起きをして3人が談話室へ降りてくるのを待っていた。
「ナマエ、随分早起きね。メリークリスマス」
「メリークリスマス、ハーマイオニー」
「まあ、今年は何をくれるの?」
今年のプレゼントは去年よりも少し大人っぽい物をチョイスした。ハーマイオニーには確か、リップだったような。女の子は冬になると唇や皮膚に敏感になるらしい。これはママの情報だからにわかには信じ難いけれど。
「ありがとう、ナマエが選ぶ物はいつもお洒落ね。何だか申し訳ないわ」
お返しにハーマイオニーは魔法薬学が苦手な私のために今年は薬学図鑑をくれた。ふむ、重宝しよう。これでスネイプ先生に一泡吹かせてやれるかもしれない。
「ジニー、おはよう」
「ナマエ!」
「顔色良さそうだね、良かった」
「ナマエのお陰で落ち着いたわ。ナマエは、大丈夫?」
「私なら大丈夫、何もないよ」
日記にはあの日以来触れていない。あのままリドルと話していると中毒になってしまうような気がしたのだ。ジニーも恐らくそうして引き込まれてしまったに違いない。まるで麻薬のような人だった。
「まあ、ピアス!」
「前に可愛いって言ってくれたから。やっぱりジニーにはピアスかなって」
「本当にありがとう、ナマエ!」
最近ずっと浮かない顔をしていたジニーが今、私の目の前で笑っている。ほっと安堵の息が漏れた。やはりあの日記がなければこんな事にはならなかったのだ。私も早く捨てなければ。
朝食を摂るために大広間の扉を潜ると別世界が広がっていた。初めて学校で過ごすクリスマスは中々印象深いものになりそうだ。
「やあナマエ」
「俺達からもメリークリスマス」
「僕達、というよりママからだけど」
大きな包みを開くとモリーさんお手製のセーターとプラムケーキが出てきた。私は同時に双子にもプレゼントを渡す。フレッドにはベスト、ジョージにはネクタイとタイピン。私は真っ先にセーターへ腕を通した。若干ぶかぶかで袖が長かったけれどとても暖かくて心地良かった。
「あのふくろう、ナマエのところに向かってない?」
「私?」
ジニーが指を差した先には激突する勢いで飛んでくる梟 ふくろうが1羽。思わず頭を覆う。が、真横を光速で通過して机の皿ががらがらと割れる音が背後から聞こえた。
「どこのふくろう?」
ふくろうは力無く嘴からプレゼントに繋がる紐を落とすと再び不安定なまま飛んで行ってしまった。青い箱と怪しげベージュの小包。ベージュの小包は何処か見覚えがある。開くと金の枠で縁取られた私の瞳と同じ色のブローチが入っていた。そしてお馴染みのクリスマスカード。
――メリークリスマス。立派なレディーに成長する事を祈っているよ。
誰だろう。パパでも、ママでもない。しかし私にはこの字に間違いなく見覚えがあった。去年のクリスマスにペンダントを送ってくれたその人。読みにくいけれど達筆な字を書く誰か。パパとママからはケーキとネグリジェだった。
メリークリスマス、ナマエ。ホグワーツでのクリスマスは楽しんでいるかな?今年のクリスマスはママと2人きりだがいつでもお前のことを思っているよ。ファフニールも随分大きくなった。次の休暇でまた一歩レディに近付いたナマエの顔を見せてくれ。PS.小包は昨夜届いた物です。
薄っすら申し訳なさを感じつつ、次の休暇では両親に思い切り甘えてやろうと心に固く誓った。ファフニールにももうじき私の身長を超えてしまうのではなかろうか。
そういえば、プレゼントを渡していないハリーやロンはどこにいるのだろう。ハーマイオニーの姿も見えない。廊下、図書館、談話室。どこにもいなかった。3人とも、一体どこへ?散歩がてらクリスマスムードで賑わう廊下に繰り出す。
「ねえ」
「はい?」
「あんたよね、ドラコを振り回してる女って」
「私が?マルフォイを?」
気の強そうな女の子が腕を組んで私を睨みつけていた。緑のローブはスリザリンの証。思わず怯んだ。マルフォイを振り回す?どういった因縁だ。
「何かの誤解じゃないかな」
「誤解なんかじゃない。私見たのよ!あんたがハロウィーンの夜、ドラコを廊下に連れ出すのを!あの日からよ、ドラコがおかしくなったのは!」
ハロウィーンなんて3ヶ月前。あの日からマルフォイはずっと、私の言葉を引きずっていたと言うのか。確かに言い過ぎたとは反省していた。しかしハリーやロンに嫌がらせをしているのを見る限り、気にしている素振りはなかったし、これといったアプローチをかけられることもなかった。
「その目、本当に気持ち悪い。でも、蛇に似ているくせにスリザリンにも入れないのね」
怒り狂ったと思えば平静さを取り戻して彼女は嘲笑を浮かべた。今更この目が何だ。気持ち悪いのは百も承知だ。中にはこの目を好きだと言ってくれる人もいる。流石スリザリン、容姿から貶めて追い込む魂胆か。
「別に元からスリザリンに入る気なかったし、人のこと言う前にそのパグ顔直したらどう」
「パグ顔ですって?あんたなんて半分は化け物じゃない!」
「お生憎様、その化け物の血で容姿には恵まれたので大いに結構。マルフォイのこと好きならこんなことしてないで一緒にクリスマス過ごしたら?」
「あんたね……!」
思い切り平手打ちをお見舞いされた。じんわり、頬が熱い。廊下を行き交う生徒達がみんな私達を見ている。「このクリスマスに三角関係か?」なんてそんな噂間違っても広めないでほしい。
「パーキンソン!」
「ドラコ…!」
ブロンドの彼はオールバックではなく前髪がふんわりと下りていた。何だ、こっちの方が似合っている。最初からデコなんて出さなければ良かったのに。
「違うの、この女のせいでドラコの様子がおかしくなったから話していたらパグ顔って言われて」
「僕が一度でも、お前に頼み事をしたか?」
冷たい目をしていた。「あ、これが生粋のスリザリンか」と思わずにはいられなかった。仲間意識が強い分、掟に反した者への制裁もえげつない。彼女は強い憎しみを込めて私を睨むと走ってどこかへ行ってしまった。マルフォイも私を一瞥するとローブを翻して彼女の消えた方向へ足を踏み出す。
「待ってマルフォイ」
振り向いたマルフォイに赤い箱を投げる。去年は用意していなかったから今年は奮発したのだ。彼がゲームや悪戯グッズを楽しむような人間は見えないので、ネクタイピンはどうかとママにアドバイスをされお金と引き換えに取り寄せてもらったのがこれだ。
「良いクリスマスを!」
マルフォイは手元に飛び込んできた箱に大層驚いていた。まさかこの状況下でプレゼントを渡されるとは思ってもみなかったのだろう。良い子悪い子関係なしにクリスマスは楽しむものだ。純粋に私を助けてくれた彼に満面の笑顔を向けた。
20171109