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クリスマスまで2週間を切ったある日。マクゴナガル先生がクリスマスに寮に残る生徒のリストを作っていた。私やハーマイオニーは勿論家に帰るけれど、ハリーやロンは違った。ハリーはマグルの世界でお世話になっているおじさんが余り好きではないらしく、ロンは両親がルーマニアに行くので残るという理由だった。そして本題はここから、つい先程受けた魔法薬の授業がスリザリンと合同だった。クィディッチの試合でスリザリンが敗北して以来マルフォイはやたらハリーに突っかかり、彼の機嫌も大層悪くなっていた。お陰様でここのところハリーに話しかけるだけで舌打ちされる始末だ。
「やぁ、ハグリッド、手伝おうか」
魔法薬の授業を終えて地下牢から出ると廊下一面に樅の木が置かれ、ハグリッドが次から次へと担いでいた。まだ5つも運ぶ必要があるらしく、流石に1人で運ぶのは、と心配したロンが真っ先に声をかけたのだ。
「いんや、大丈夫。ありがとうよ、ロン」
「すみませんが、そこ退いてもらえませんか」
最近よく耳にする傍迷惑な人物の声、マルフォイだ。両脇に巨体を2匹連れてふんぞり返っている。何もそこまで敵意を剥き出しにしなくてもいいのに。
「ウィーズリー、お小遣い稼ぎですかね?君もホグワーツを出たら森の番人になりたいんだろう――ハグリッドの小屋だって君達の家に比べたら宮殿みたいなんだろうねぇ」
「オパグノ 襲え」
天井に下がる氷柱がマルフォイを一直線に飛んでいく。良い気味だと思った。そんな優越感に浸って私は気付いていなかったのだ。スネイプ先生がすぐそこまで迫っている事に。
「ミョウジ!」
「ヒッ」
喧嘩は校則違反。そんな言いがかりをつけられ、グリフィンドールは5点減点された。ハグリッドも庇ってくれたけれどスネイプ先生の前では無駄だった。マルフォイ一味はざまあみろと言わんばかりに樅の木の間を乱暴に潜り抜けて葉を散らしていった。刺さってしまえば良かったのに。
「ナマエ、ありがとう。僕もあいつを殴りかけたけど、すっきりしたよ」
「だめ、もう一発だけ」
マルフォイは一度痛い目に遭った方がいい。ハーマイオニーが何やら叫んでいたけれど無視して私は彼らを追った。良く言えば粛正、悪く言えば腹癒せ。ハリーにも、ロンにも、ハグリッドにも、勿論私にも謝るべきだ。ついでに前髪もオールバックは止めた方が良いと思う。
「グリセオ 滑れ」
物陰から魔法をかけると3人は一見何もない廊下で見事に転けた。笑いが止まらずお腹を抱えていると3つの影が私を覆った。何だか悪寒がする。顔上げたくないなあ。
「やあ、ミョウジ。こんなところで何をしているんだ?」
「ちょっと探し物をしてて。見つからないなあ、どこかなあ、私の眼鏡」
「茶番も程々にするんだな、ミョウジ。スネイプ先生に言いつけてやろうか」
「すぐそうやって言うんだから。今度はローブ燃やす?」
「ふん、やれるならやってみろ」
やっぱりスリザリンなんて嫌い。いや、セオ以外。みんなお高くとまって、少し魔法で悪戯したら怖気づくくせに。
「ドラコ、彼女を苛めるのは止めてやってくれないか」
「セオ?」
セオはヒーローのように眩い後光を放っていた。相変わらず片手には分厚いサイズの小さい本を抱えて、鉛色の瞳を鋭く細めている。マルフォイは口を開けたまま動かない。身を案じてセオの背後に隠れるとマルフォイの青白い顔が一瞬にして赤みがかった。
「ノット、君はそいつを庇うのか?ミョウジはグリフィンドール、ましてや……半分はヒトですらない」
酷い言われようだ。恐らく多くのスリザリン生にはそう思われているのだろう。純血、マグルの類でもない、半ヴィーラと魔女の子供。しかしこれは恥じるべきことではない。父は魔法を使えるのはさることながら、あの大きな魔法省で働いている。太陽を浴びると宝石のように輝く髪も、滅多なことでは焼けない素肌も誇りを持っていいと幼い頃から言われていた。
「僕は確かにスリザリンだけど友達を見捨てたりはしない」
「……勝手にしろ」
まるで玩具を取り上げられた子供のようにマルフォイは拗ねてどこかへ行ってしまった。そしてセオも何事もなかったかのように歩き出す。
「あ、待ってよセオ!」
「何?」
「助けてくれて、ありがとう」
「……たまたま通りかかっただけ」
ちょっと心配したのはセオとマルフォイの関係。私のせいで亀裂が入ってしまったら寮に居づらくなってしまあのではないか。申し訳ないことをしてしまったと今更自分の行為に後悔した。
「安心しなよ。ああ見えてドラコは単純だから、君と似てね。とても扱いやすいんだ」
セオは薄ら笑み浮かべて行ってしまった。何だか遠回しにかなり失礼なことを言われたような気がする。
「――あ、雪だ」
雪景色に目を奪われる。ホグワーツで初めて迎える冬はいつもと違って私の胸を高鳴らせた。クリスマスがやってくる。ハリー達には何を贈ろう。そうだ、パパとママとココアを飲もう。一緒にケーキを作ろう。頭の中のスケジュールは既に埋め尽くされていた。
20171105