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クリスマス前日、私は久し振りに我が家へ戻ってきた。パパもママも相変わらず元気そうだ。娘の姿を目にすると我先にと駆け寄ってきてくれる。「ナマエ、お帰り!」
「見ないうちに大きくなったなあ、私の娘は」
「成長期だもの。ひと月やふた月でぐーんと大きくなるわ」
「そうか、パパは悲しいぞナマエ!」
「パパ、苦しい……」
「ん?ああ、すまないな」
パパが絞め殺すのではないかという勢いで抱き締めてきた。でも、温もりが懐かしくて安心したのは事実。やっぱり家が一番。ルールも何もないから夜更かしも出来るし。
「お友達がたくさん出来たみたいでママ安心したわ。いじめられてはないのよね?」
「双子に悪戯されるのは日常茶飯事だよ」
「ふふ、アーサーさんのところの息子さんはお茶目なのね」
「フレッドとジョージは悪戯の天才だとアーサーも話していたよ」
「突っ込むところそこなんだ」
まあ、悪戯をされても何だかんだ仲が良いと言えば……良いのだろうか。でも授業のコツはたまに教えてくれるし(主に魔法薬学)、頼れるお兄ちゃん、なのかもしれない。
「懐かしいなあ、スプラウト先生は元気だろうか」
「フリットウィック先生からはこの間葉書が届いていたわ」
「2人ともグリフィンドールじゃないの?」
初耳だ。ハッフルパフに、レイブンクロー?パパは特にグリフィンドールっぽいと思っていたのに。ハリーを追いかけてグリフィンドールに入った私が言えることではないのだけれど。
「そういえばそうだなあ、ナマエはグリフィンドールだったか」
「親と違う寮に配属されるなんてよくある話だから、気にすることないわ」
「ふーむ、君はグリフィンドールが良いのか」
「絶対グリフィンドールがいいの」
「探究心が旺盛、よろしい……多少の狡猾さも兼ね備えておるか。いやしかし、機知は残念ながら継がれなかったか」
「嫌味がさり気ない!」
「やはり導かれてしまうものか、ならば仕方ない――グリフィンドール!」
確かに私も無理に意見を押し通してしまった節はある。しかし組分け帽子も選ぶべくして選んでくれたはずだ。私の選択は間違っていなかったと思う。違う寮に入ろうと私がパパとママの子であることには変わりないのだから。
いよいよクリスマス当日。ツリーの下にはプレゼントがわんさか届いていた。さてどれから開封しようか、迷いつつも1つずつ紐解いていくのがクリスマスの醍醐味である。
「はい、ママ達からのプレゼントよ」
「何これがさごそ動いてる」
「開けてからのお楽しみだ」
ゲージに布がかけられているものの、何かが跳ねて今にも壊れてしまいそうだ。生きのいいやつだ。それにしてもこのサイズなら種類としては大型だろうか。オスかメスか、どんな名前をつけよう。心躍らせながら布をめくった私は言葉を失った。
「ええと、まって」
「どうした?可愛いだろう」
「私が欲しがってたペットわかってる?」
「まあ、パパと一生懸命選んだのよ?」
因みに私が頼んでいたのは犬である。ホグワーツには連れて行けないけれど、家に帰ってくれば遊び相手になってくれる、飛びついて出迎えてくれる、そんな展開を望んでいたはず。しかし、今私の目の前にあるのは。
「ドラゴン……」
「パパ、ドラゴンを育てるのが憧れだったんだ」
「大きくなって食べられても知らないから」
「育て方は確かハグリッドが詳しいな。ナマエ、ホグワーツに戻ったら聞いておいてくれ」
「はあ」
何とまあマイペースな両親だろうか。素知らぬふりをしているけれど間違いなく自分達が飼いたかっただけだ。大型犬サイズのそれはパパに撫でられてうっとりと目を細めている。
「お前、名前何がいい?犬だったらシャーロットとか可愛い名前にするつもりだったんだけど」
黒い竜はきゅう、と鼻を鳴らして口から小さく火を噴く。前髪が焦げた。危うく火傷するところだった。やはり扱うのは難しそうだ。
「ファフニールにしよう」
「強そう」
「北欧神話のドラゴンだ」
「よろしくね、ファフニール」
口から火炎放射するドラゴンの様が目に浮かぶ。まだ大型犬サイズだから良いものの、これが私の身長を超え、屋根を超え、窮屈な空間で生きられなくなってしまったら自然の世界に返すか、目くらまし術をかけて育てなければ可哀想だ。出来ればずっとこのままでいてほしい。
さて、因みに3人の友人からもプレゼントが届いていた。ハリーは赤いブーツに目一杯お菓子を、ロンは仕返しに使える悪戯グッズを、ハーマイオニーは女の子らしく淡い石鹸の香りのコロンを。
「他のプレゼントは……あれ?」
茶色の紙袋に入ったやや大きめな包み。宛名は書いていなかった。怪しいプレゼントを恐る恐る開けるとそこには1通の手紙と包みのサイズに比例しないロケットペンダントが同封されていた。中には知らない女性と男性の写真。
――入学おめでとう、そしてメリークリスマス。愛する魔力の子に捧ぐ。
「うーん、誰だろう」
ますますわからない。パパを呼び出して手紙を見せると眉間の皺を寄せて、悲しげに羊皮紙を撫でる。パパの知り合いなのだろうか。
「ああ、そうか」
譫言のように呟いてパパはしみじみとロケットを眺めた。やっぱり、知り合いなんだ。私には話してくれそうにもないけれどパパの苦しげな表情を見ていたら、今はまだ知らなくて良いのかもしれないと思った。
20171105