酔っぱらっちゃうのは
※成人済み設定-----------------------------------------------------
「いや〜、やっとだね!楽しみだよ〜」
「そうですね…前を見て下さい」
もう夜も更けた時間に二人の男女が歩道を歩く。
静まり返った町はもう誰もが起きている様子がなく夢の中へと旅立っているようだ。
そんな中、女は頬を赤く染めては彼女の後ろを付いていくように歩く男の方をくるりと向いてへらっと笑うと男は呆れたように返事をしそっと前を向くと足取りの危うい相手にひやひやしながら注意を促す。
「むぅ…どうしてそう、君は返事するのかなぁ。一ノ瀬くん〜。もっと喜ぼうよぉ」
「喜んでますよ。ただ、喜びに駆られて酔っぱらっている貴女を見て半減しているだけです」
「何ぃ!?私のせいですか!!」
冷静に返事をする男…一ノ瀬トキヤの反応がつまらないのか喜びを分かち合えないことが残念なのか女はピタリと歩みを止めて頬を膨らませては文句を言う。
しかし、トキヤはしれっと酔っぱらいのせいでこの態度だと言うと間髪おかず彼女はムキになる。
「ええ、貴女のせいです。みょうじさん。どうして毎回曲を完成させる度に酔っぱらうほど酒を飲むか不思議で仕方ありません」
「……しょうがないよ。毎回夢がかなうんだから」
「……夢、ですか?」
トキヤはため息を付きながら彼女の名前…みょうじなまえの名前を強調して呼ぶ。
どうやら、彼女が喜び酒をかっ喰らって酔っぱらった理由は曲を完成させたからだったようだ。
完成を祝って飲みに行っていたらしい。
彼女の毎回の行動に疑問を覚えて仕方ないようだ。
それを素直にトキヤはなまえに伝えるとふと目線を下に下げて自嘲気味に彼女は笑いながら呟いた。
小さな呟きだったが聞き逃さなかったトキヤは聞き返す。
「んー、もともとね、私…歌手になりたかったの」
「…は?」
「ふふ、びっくりした?…結局、私の歩む道はそれじゃなった」
くるっとまた前を向き歩みを止めていた足を進め始めながら、昔抱いていた夢を告白するなまえに驚きを隠せないトキヤは間をおいて一言発するのがやっとだった。
その反応を後ろで感じながら神奈は笑っては遠い昔を見つめるように大事なものに触るように話しを続けた。
「でもね、たとえ歌手になれなくても音楽に関わっていたいなって思ってたの。ほら、事務とかマネージメントとか?そうしたら、まさかの作曲家!ね、凄くない??」
「………。」
自分のやりたいことへの可能性を信じ続けて実った彼女はくるっとトキヤの方を向いて目を輝かせて笑い掛けるとなまえの気持ちが伝わってくるのかトキヤは黙って耳を傾けていた。
「あれ…?一ノ瀬くん??立ちながら寝てるの?」
「…そんなわけないでしょう。貴女じゃあるまいし」
「わ、ヒドイ言い方〜」
返事がないトキヤに近寄って目の前で手を振るなまえにトキヤは眉を潜めて冷たい一言を言い放つ。
トキヤの冷たい一言になまえはかくんと頭を下げては眉下げて笑った。
「歌手への夢は…諦めてしまったのですか?私は貴女ならなれると思いますよ」
「んー…諦めたとは違うかな。確かに歌うことも大好きだけど…夢が変わった、かな。うん。」
トキヤは彼女が先程した発言に対して疑問があったらしく、それについてなまえに問いかけると彼女はトキヤの問いかけについて自分の顎に指を置きながら考えて否定する。
考えをまとめながら話してみると自分の言ったことに納得したように頷く。
「夢が変わった…?」
「ん、変わった!こうやって曲を作り続けて歌い手さんを支えていきたいって言う夢になったの。それが出来て作曲家として歌い手さんを支えられるなんて嬉しくて嬉しくて…!!だから、毎回曲が出来上がるたびにこうなっちゃうんだ!!」
彼女の答えが更に疑問を呼んだのかトキヤは鸚鵡返しに更に疑問系で聞き返すと彼女は笑顔で断言した。
空を見上げて右手の人差し指でま空の星を一つずつ数えるように指差しながら、彼女は順序良く話を進める。
しかし、興奮してきたのだろう。
キラキラと目を輝かしてトキヤの目の前で両手を広げ、幸せを表現していた。
「意外とちゃんと考えているんですね…だからと言って、毎回こう酔っぱらうのはどうかと思いますよ?」
その姿を見たトキヤは呆気にとられたように少し目を見開いたが、嬉しそうな表情をする彼女に少し微笑む。
だがしかし、嬉しいからと言って酔っぱらうのはどうなのかとやはり腑に落ちないようだ。
やはり説教臭く言うところが彼らしい。
「だって、一ノ瀬くんって毎回曲作ってそれを歌ってくれる度私が思い描いていた音楽よりより良いものにしてくれるから、幸せだなぁって思っちゃうんだもん。だから、酔っぱらうのは一ノ瀬くんのせいだ〜。」
「私のせいですか…?」
説教臭いトキヤに頬を膨らましてむっとするなまえ。
酔っぱらってしまうのはトキヤのせいだというのは第三者が見てもおかしいと思うだろう。
なまえから言い訳が来ると思って他の言葉を用意していたトキヤだったが、意外な言葉にまた目を丸くさせていた。
「そーだよ?今はね、自分が歌手になるより君みたいな子に曲を提供し続けるのが夢!私は今欲張りになっちゃったからそんな夢を持っちゃったんだよ。」
「それでは…責任を持たないといけませんね。」
「ん??責任…?」
なまえは嬉しそうにトキヤに笑い掛けながら自分の“今”の夢を語り続ける。
トキヤは意を決したかのように優しく微笑み返しながら、言葉を返すと彼の言葉が不思議に思ったなまえは鸚鵡返しした。
「ずっと考えていたことがあります。みょうじさん。」
「う、は、はい…なんでしょう。」
トキヤは改まった物言いをしながら、なまえの目の前に立ち真っ直ぐ彼女を見つめるとなまえは緊張した顔をして少しどもりながら言葉を返した。
「私の専属作曲家になりませんか?」
「…へ?」
たった一言。
長いようで短いトキヤからの言葉。
これの意味を理解するのになまえは少し時間がかかったようで素っ頓狂な声を上げて首を傾げた。
「毎回想像を超える曲を提供して下さり、何よりも曲作りに妥協しない姿を見て貴女に私のパートナーになってほしいと思いました」
「わ、たしが…一ノ瀬くんの専属作曲、家…?」
トキヤはなまえにパートナーの誘いをしては彼女に説得するべく言葉を続けて述べていく。
なまえは混乱しているのかまだちゃんと理解していないのか。
トキヤの言い放った言葉を少しずつ受け入れながら呆けた顔をしながら彼に問いかけ返す。
「ええ……嫌ですか?」
「ううん!全然!むしろ…私でいいのかな??」
なまえの反応はトキヤが予想していた反応とは違ったようでだんだんトキヤも不安になったのか。
眉を下げて彼女に問いかけるとなまえはぶんぶんと首を振って問いかけられた言葉を否定する。
なまえは少し不安そうな顔をしてトキヤにまた問いかける。
「貴女じゃなければ嫌です」
「…ずるいな、その言い方」
トキヤは思ったことをきっぱり言ったのだろうがなまえにとっては最高の言葉を貰ったも同然だ。
彼のたった一言で彼女の不安を吹き飛ばしたようではっきり言ったトキヤの言葉になまえは少し頬を赤く染めた。
「それに…毎回曲が完成するたびに酔っぱらう姿を他の人も見ていると思うと…」
「へ…、なんで?」
トキヤは眉間に皺を寄せてぼそりと言葉を呟くとその言葉を聞き取ったなまえは不思議そうに彼に聞き返す。
「貴女は隙だらけなんですから、心配になります。男性アーティストといることもあると思うと…」
「いつもは…私、酔っぱらうほど飲んでないよ?」
「今、それ言ってもなんの説得力はありませんよ?」
聞きとられてしまったトキヤはなまえをちらっと見ながら少し棘のある物言いをするとなまえはきょとんとした顔しながら言葉を返すが、セット力がないという一言でバッサリ切られてしまった。
「…よ、喜んでみんなで完成打ち上げすることもあるけど、いつもお酒飲まないもん」
「…は?」
トキヤにバッサリ切られたことによって誤解を解かなければと思ったのかなまえは目を逸らしながら小さな声で呟いた。
それはトキヤの耳に届いてはいたが聞き違いかと思ったのか彼はなまえに聞き返す。
「………だけだもん、いつも」
「みょうじさん?」
「い、一ノ瀬くんの時だけだもん。…舞い上がってお酒飲んじゃうの」
「………。」
なまえは地面を見つめ表情を見せないようにして先程より小さな声で呟くとトキヤはなまえの表情を見ようと顔を覗き込みながら名前を呼ぶ。
目があってしまったなまえは少し照れていまい目を逸らしながらだが、お酒を飲む理由を彼に伝える。
「えっと、なんだろ…一ノ瀬くんなら大丈夫かな、っていうか…安心感?なんだろ…分からないけど、とにかくそうなの!」
「ずるいのはどちらでしょうね?私を虜にするあなたは……」
なまえの顔を見たまま彼女の言葉に固まっていたトキヤを見たなまえはその表情を見て不安になったのか次々と理由らしい理由をほろ酔いしている頭で考えて素直に彼に伝える。
そんな彼女を困ったような…でも、優しい笑みを浮かべながらトキヤは見つめていた。
「ふえ!?…そ、それってどういう…」
「さぁ、どういう意味でしょうね?先ほどの質問の答えを貰えれば教えしますよ」
なまえはトキヤの発言に目を見開いて驚いては言葉の意味を問いかけようとするが、彼によって誤魔化されてしまった。
「質問?」
「私の専属作曲家の件です」
質問なんかあっただろうかと不思議そうになまえは首を傾げているとトキヤは呆れた顔をして本題について語る。
「それはもちろん!喜んで!…で、どういう意味なの?」
「っ、……すぐ切り返してきますね、みょうじさん」
「気になるもん。教えてくれるんでしょ?」
なまえは嬉しそうに笑顔で専属作曲家になることを承諾すると先程の意味がとても気になるらしく話を切り返した。
トキヤは専属作曲家の承諾を得てほっとするとともに話を切り替えるなまえに対して困った顔をしていた。
なまえはもしかしてと期待しているのだろう。
気になってしかないとばかりにトキヤを見上げながら彼の言葉を待っていた。
「作曲家としても、一人の女性としても私は貴女の虜…ということです」
「っ、〜〜〜…」
トキヤは観念したように軽く息を吐いてはなまえの耳元へ口を寄せて彼女への想いを言葉にした。
なまえは急に耳元へ彼が口を寄せたことに驚き、また心地よい声が耳元でささやかれた言葉を聞いて頬を赤く染める。
「好きです。作曲家としても一人の女性としても私の傍にいてくれますか?」
「……………。」
トキヤは耳元から口を話すと至近距離で見つめ合いながら愛の告白をするとなまえの顔は恥ずかしさから俯くと遠慮がちにそっと彼に抱き付く。
「ちゃんと言ってくれませんか?」
「分かってるくせに…聞かないでよ…」
そんななまえの様子を見ては愛しそうに見つめては催促の言葉をトキヤは彼女に投げかける。
なまえは恥ずかしそうにトキヤの服を握るとぼそりと拗ねたように言葉を紡いだ。
「おや、…言ってくれなければ分かりませんよ?私も超人ではありませんから」
「バカ、意地悪…好きだよ。一ノ瀬くんの歌も貴方自身も…大好きです」
悪戯心が動いたのか。
トキヤは余裕そうな笑みを浮かべながらまたもやなまえに言葉の催促を促す。
なまえは悪態を付きながらも観念したのかトキヤを見つめて素直な気持ちを言葉にする。
「では、傍にいてくれますか?」
「うん…傍にいてあげる!」
ちゃんと彼女からの愛の言葉を聞けたことに満足げに微笑むトキヤは更になまえに問いかけると##NAME2##は幸せそうに微笑みながら言葉を返した。
二人はお互いに引き寄せられるように口付けをすると月に照らされた二人の影が一つになった。
酔っぱらっちゃうのは
―君のせいなんです。 ―