天気の良い日には

(……良いお天気)


 女性は縁側の縁に座り、日の光を浴びて日向ぼっこをしていた。
 心地よい日の陽射しに彼女は太陽に向かって顔を向けては目を瞑っている。


(……ゆっくりと誰かがこちらに近付いてる……きっと、)


 彼女は遠くから段々近づいて来る砂利が擦れる音に耳を傾けては近付いている人物に想像がついているのか彼女は口角を上げた。


「……なまえ」
「………牛鬼様、こんにちは」


 近づいてくるそれの音を聞いていた彼女の耳に彼女の名前を呼ぶ男性の声が響く。

 なまえと呼ばれた女性はゆっくり目を開けては声のする方へ顔を向けて微笑みながら自身を呼んだ男性へ返事をした。


「やはり、此処に居たのか…」
「ふふ、はい……私のお気に入りの場所ですから」


 牛鬼着物の裾に両手を入れながらなまえの傍へと近寄っては言葉を掛ける。

 彼女は彼を見上げて嬉しそうに微笑みながら彼の言葉に言葉を返した。


「元気そうだな」
「ふふ、お陰様で…だから、そんなに様子を見に来なくても大丈夫ですよ?」


 牛鬼は彼女の隣に腰を掛けて彼女の顔をじっと見つめると彼女は口元に手を近付けて微笑みながら彼へ言葉を返す。


「……それは分かっている」
「……?」


 牛鬼は彼女の言葉にふっと笑っては目を閉じて言葉を紡ぐとそれの意図を理解しかねるなまえは首を傾げて彼の顔をじっと見つめた。


「分かっているが、私の目でちゃんとお前の安否を確かめたいのだ」
「……ふふ、わざわざ仕事増やすんですね」


 牛鬼はそっと目を開けて彼女の持つ疑問に答えるように言葉を放つと彼女は彼の意図を理解してはまた綺麗に微笑む。


「仕事では無い」
「……牛鬼さん?」


 彼女の言葉に牛鬼は眉間に皺を寄せて否定すると予想外の言葉だったのか彼女はきょとんとした顔をして彼へ問い掛けた。


「お前の顔を見るのは私の憩いだ」
「っ、………ズルい…」


 ちらっと彼女へ視線を向けては目を瞑って先程の言葉の続きを紡ぐと美琴にとって予想外の言葉だったのか彼女は少し頬を赤くさせて言葉に詰まってはぽつりと小さな声で言葉を零す。


「なんだ?」
「…いーえ、何でもありません」
「……ふっ」


 牛鬼は彼女の小さな呟きが聞き取れなかったのか目をそっと開けて彼女へ首を傾げて問い掛ける。

 彼女は聞き取れていない彼に少し不満そうな顔をして諦めたように言葉を返すと彼は彼女の態度に思わず笑みを零した。


「…何か面白いことでもありましたか?」
「いや……」


 笑う彼に疑問を持ったなまえは眉を下げて牛鬼に問い掛けるが彼は明確な言葉の回答はない。

しかし、彼の横顔には柔らかい表情が伺えた。


「……?あ、今お茶入れますね」
「よい…」


 彼女は彼の言葉に更に不思議そうに見つめては思い出したかのようにお茶の準備をしようと縁側から腰を上げて立ち上がるが牛鬼に左手首をパシッと掴まれて動きを制しされる。


「え、いいんですか?」
「……今は私の傍に居てくれぬか?」


 彼の言葉に少し驚きながら首を傾げて問い掛ける彼女に彼は答えずに逆に問い掛け返した。


「……何かありました?」
「強いて言えば…お前との時間を少しでも長く楽しみたいのだ」
「………わかり 、…ました」


 彼女は彼の言葉が意外に感じたのか牛鬼をじっと見つめる。
 彼女もまた彼の言葉に答えずに更に問い掛けると彼は彼女を見上げて彼女の待つ答えを口に出した。

 その答えが彼女にとって予想外のものだったのか少し頬を赤くさせては途切れ途切れになりながら、言葉を返して牛鬼の隣へと座り直す。


「……良い天気だな」
「………ふふ、」


 牛鬼は掴んでいた美琴の手首を離しては自身の着物の裾に両腕を入れて青い空をゆっくり泳ぐ雲を見ながら柔らかく笑って言葉を紡ぐとその言葉に彼女は自身の口元に手を添えて微笑んだ。


「……。」
「本当に良いお天気ですね」
「……ああ」


 急に笑い出す彼女に牛鬼は黙ったまま不思議そうに見つめていると彼女は彼の肩に頭を預けながら空を見ながら彼の言葉に同意する。

 彼は肩に預けられた重みと温度に柔らかい笑みを浮かべて短く言葉を返してはまた空を見上げた。



天気の良い日には

―この縁側で貴方を待っています―


Request
ALICE+