目覚めた。

ただ普通に、いつも通りに。

そう、いつも通りに。

「・・・え、」

仰向けに寝ていた私が目を開けた先に写る天井は、見たことのない天井だった。

「お目覚めになられましたか・・・?」

「・・・、」

「私めのことはご存知で?」

「え、や、あの、え、ちょっと、あの、」

「・・・・・・成功、しました・・・!」

「はっ?」

見知らぬ天井を見て、ここはどこだと思いのままにぐるりと見回せば、目の前にいたのは子狐。

でも狐にしては動物園で見たことのある狐とはどことなく違って、何というか生きてます!という感じよりもぬいぐるみのような、作られてる見た目。
顔には模様のようなものもあるし、狐を模した良く出来た作り物だと思ったのも束の間で、あろうことかこの子狐、喋ったのである。
ふわりと動く尻尾も機械的ではない、自然の動きでぬいぐるみなんかじゃない、生きてる、本物だと理解したが──喋ったのである。

「き、つねって・・・話、話すの?」

「は、私めは名をこんのすけと申します、管狐でございますれば!人の言葉を操るのは当然のことです!」

尻尾をパタパタと動かすあたり、本当に生き物なのだと受け入れざるを得ないのだが、如何せんそんな生き物いてたまるかと思ってしまう。
しかもベラベラと流暢に興奮気味に話すのだから余計に。
何なんだ、化かされているのか、夢なのかと思考が飛びそうになる、が。

「っ・・・成功しました、良かった・・・・・・」

「えっあのっ、」

何が成功したのかは分からないものの、こんのすけと名乗った狐は突然泣き始めた。
それこそ、人間のように涙をポロポロ零しながら。
言葉を話す動物は勿論のこと、こんな風に涙を流す動物も初めて目の当たりにしたものだから、どう対応していいのやら皆目見当が付くはずもない。

けれど、私がここはどこなのか、何故ここにいるのかと色々と聞きたいことが山ほどあるというのに、こんのすけはグズグズと『これで刀剣たちも救われるでしょう』なんて嗚咽混じりに泣き崩れてしまったのだった。