小ネタ帳
此処は、お話に昇華出来なかった小ネタや、これからお話に昇華するかもしれないネタ達を書き留めた、所謂ネタ置き場です。主に、管理人の覚え書き処。名前変換物は*で表記。鍵付きについてはインフォページ参照。
▽猫の恩返し。
刀剣掌編で粟田口ネタ。確か一昨年くらいに思い付いて途中まで書き走ってたけど、到着点見失って詰んでたお話。
当時季節が夏だったのでちょっぴりホラー風味に仕上げる予定だった。
お蔵入りしそうだったから、この機会に供養しとく。
↓以下、本文(ちょっと長いので追記にて)。
【本文】
―或る夏の日の、梅雨時期の一コマであった。
日がな一日雨が降り、薄暗い空が広がっており、傘を差しながら濡れた道を歩いていた。
踏切の音がして、線路の内側と外側とを隔てる為に遮断機が降りて、立ち止まる。
カンカンと響き渡る警笛を聞きながら、目の前の線路の先の景色を見遣った。
すると、向かい側の遮断機の先に、此処い等では見掛けた憶えの無い色素の薄い少年が立っていた。
傘も差さずに佇む少年が、不意に此方を向いて小さく口許に笑みを浮かべた気がした。
一体、誰なのだろうか…。
見覚えが無いだけで、もしかしたら知り合ったかもしれない時の事を忘れてしまっただけなのかもしれない。
よくよく見て確認しようとしたところ、待っていた電車が凄い勢いで通り過ぎ駆け抜けていった。
再度向かい側の方を確認しようとするも、先程その場所に居たであろう少年の姿は既に在らず。
忽然と消えた存在に不可思議な感覚だけが残って、胸の内に蟠りを作った。
先の少年は一体何だったのだろうか…。
何かの啓示だったのか。
それとも、そもそもの彼の存在は、“この世に生を持ち生きる者”か、“既にこの世を去った死者”だったのか…。
腑に落ちない感情が渦巻いて、蟠りを作る謎を解明しようと、思い当たりそうな事情を身近な人間に問う事にした。
「―え……?此処最近の近年で、彼処の踏切で事故か何かが起こったりした事はないか…?」
『うん…。ちょっと気になる事があったから、何か其れらしき事を見聞きしたりしてないかなって思ってね。』
「うーん……彼処の踏切は、僕も何時も通勤する道の通りにあるからよく通ってはいるけども、特に其れと言った話は聞いていないな…。大通りに面した通りでもあるし、そういう事故が起きただとかの物騒な話が流れたら、此処に店を構えてる以上、嫌でも耳に入るだろうからね。」
手始めに、家の近所且つ件の踏切の通りを利用するという知り合いの花屋の店主に話を訊いてみた。
店主は、徐に問われた問いに対し特に疑問や怪訝な態度などは見せず、新しく仕入れたばかりの花の剪定を行いながらに思ったままを淡々と答えた。
パチリッ、長さを揃える為鋏で切られた太めの茎が作業台の上へと落ちる。
その流れを呆然と眺めながら、思考を問いを投げるに至った根底の出来事に傾けた。
「…何か気に病む事でもあったかい?」
『ううん。特にそういった事ではないから、大丈夫だよ。』
「そうか。まぁ、何か困った事があれは、何時でも来ると良い。歓迎しよう。」
『ありがとう。何かあれば、また来るね。』
「嗚呼…何時でもおいで。」
紫の髪の人の店を出て、次の候補を考え挙げてみる。
(…次は、あの人に訊いてみよう。)
とある知り合いの人物を思い浮かべつつ、混み入った狭き路地の小道へ入り、次に見当を付けた場所へと向かう。
お次に向かった先は、件の線路からは少し離れた場所にひっそりと在る小さな喫茶店を勤める知り合いの元だ。
「―おや、誰かと思えば…君か。いらっしゃい。ちょっとの間久しかったね…?元気にしてたかい?」
『こんにちは。ちょっとの間だけですけど、久し振りですよね。相変わらず私は元気ですよ。今日は、少し気になる事があったから…ちょっとだけお話を聞いてもらいたくて来ました。…あ、抹茶ラテを一杯。』
「おやおやおや…其れは其れは楽しみだね。今日は一体どんなお話を聞かせてくれるのかな…?…注文は何時も通りで構わないよね。」
緑の長く伸ばした髪を綺麗に一つに結った人は、意味深にも取れる言動と笑みを浮かべてカウンター内に引っ込んだ。
「では、今日はどんなお話を聞かせてくれるんだい…?」
カチャカチャと陶器等がぶつかる音が聞こえる。
『つい先日、雨の降る日に、この近くにある大きな通りに面した踏切で見たモノの事なんですけど…。』
「へぇ…其れは興味深い事だね…。続けて。」
『はい。…それで、電車が来るから踏切の手前で待ってた時の事なんです。線路の向こう…向かい側の遮断機の辺りに、見覚えの無い色素の薄い少年が立っていたんです。たぶん、逢った事も無いと思うんですけど…少年と此方の目が合った時、その少年……私の方を見て笑ったんです。笑ったって言うと解りづらいかな…小さく微笑んだ、って表現の方が合うような形だったと思います。気になって、もう一度少年の方を見ようとしたら電車が来て遮られて…再度確認しようとしたら、もう少年は居なくなっていたんです。ほんの一瞬の出来事だったと思います。……マスターさんは、如何思いますか?』
カチャリ、カウンターの上に湯気を立てた甘い薫りの放つカップがソーサーに添えられて置かれた。
注文した品が差し出された音と同時に、彼の蛇のように鋭く細められた瞳が此方を見る。
「恐らくだけど…十中八九、彼はこの世の者ではないだろうね。既にこの世を去った死者だろう。君か、又は誰かに何かしらの未練があって、まだ此方の世に思いを残して居座っている…というところじゃないかな?」
『…やっぱりですかぁ…。何となく、そんな気はしてたんですよね…。』
「君は、そういった類いの物を視てしまう性質を持っているからねぇ…仕方がない事だよ。“視えてしまう者には視えてしまう”現象は、どうにもしがたい事であるからね。だから、そういった類いの事象を相談出来る僕の処へ来たんだろう…?ハイ、お待ちどうさま。君がご注文の抹茶ラテだよ。」
『有難うございます。頂きます。』
甘くじんわり広がる抹茶の風味を口に含んで、一息吐く。
彼女の注文分を作るついでに自分の分も作ったのか、同じ物の入った容器を口に運ぶ彼。
マイペースでミステリアスな空気を纏う彼は、彼女の他に客が居なければ何時もそうしていたのである。
「…ところで、僕以外の人間にその話を話した人は居るかい…?」
『えっと…はっきりとは訊きませんでしたけど、“あの踏切近くで事故や何かは有りませんでしたか?”…と、通りの近くに在る花屋の主人には。』
「嗚呼…彼か。彼なら、そういった事を話しても大丈夫だろう。何せ、君のそのタチを知っている一人だからね。何かあろうとも、彼なら対処出来る人だし、問題は無いかな…?」
抹茶の薫りを楽しみながら、愉しそうにほくそ笑む彼はその鋭き目を細めた。
彼はそういった人だと理解している彼女は、特に触れる事もせず、静かに抹茶ラテを飲み干した。
『抹茶ラテ、ご馳走様でした。美味しかったです。また来ますね。』
「今度来る時は、抹茶ラテ以外も頼んでくれると嬉しいな。また何かあれば、ウチに相談しにお出でよ。愉しく御茶会をしながら話に興じよう。」
カランカラン、出口のチャイムの鐘が客人が去った事を鳴らした。
―また数日が経過した時の事だ。
或る雨上がりの日の夕方だった。
酔っ払いの柄の悪い大人の男の人が、道の端の電柱の付近で何かを蹴っていた。
その何かとは…まだ幼い小さな子猫だった。
堪らず怖じ気も構わず咎めの声を上げた。
『何やってるんですか…っ!?まだ幼い子猫相手に暴力なんて、酷いにも程があります!!動物愛護団体もしくは警察に訴えますよ…っ!』
怖じ気付きながらも果敢に懸命に抗議の声を上げたからか、又は年若い女にも関わらず明らかに自身より年嵩上の者と解ったからか。
男は盛大な舌打ちをかましながらも行為を止め、その場を立ち去って行った。
この後、子猫(五虎ちゃん)を助けた事で弟のお兄さんを名乗る明るい髪色の青年(いち兄)がお家まで訪ねてきてお礼を言いに来る。
そして、この一件より嫌がらせを受けていた事もきっかけに、彼が礼の代わりに貴方の身をお守り致しましょうと提案してくる。
で、彼女の知らないところで彼が弟を傷付けられた復讐も含めて彼女宅に質の悪い嫌がらせを吹っ掛けていた人物へ挨拶(物理的に殺意高めで)に行く。
それ以降ぱったりと嫌がらせは無くなり、平穏な日々に戻る彼女の生活。
その背景でこっそり彼女の生活を見守りつつもしっかりセコムする粟田口長兄。
全体的に何かふわっとした雰囲気物で纏める予定だったけど、結局頓挫したままこれ以上書けない気がしてこっちに上げた…というのが本音。
取り敢えず、このお話に出てくる粟田口兄弟等は皆"人為らざる者"という設定。
冒頭に出した薬研を全く活かし切れずに終わったけど、何かちょっと怖いなぁ〜って感じの雰囲気を醸し出したかっただけ(だった筈・うろ覚えの記憶)。
2020/04/25(09:23)
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