小ネタ帳

此処は、お話に昇華出来なかった小ネタや、これからお話に昇華するかもしれないネタ達を書き留めた、所謂ネタ置き場です。主に、管理人の覚え書き処。名前変換物は*で表記。鍵付きについてはインフォページ参照。


▽美を極めた男が言う事。

完全オリジナルの一次創作ネタ。美しいものをこよなく愛する男が主人公のお話です。ヒロインは、何でかいつの間にかに彼の彼女というポジションに収まっていた感じの女性……という設定です。当作品は、そんなヒロイン視点から見た男のお話となっております。
▼以下、追記より本文なる。


【追記】

 彼は美しいものが大好きだけれど、其れには様々な意味が含まれる。
 彼の言う“美しい”には、沢山の意味があるのだ。
 例えば、外見がとてつもなく美しい絶世の美女たる女が目の前を闊歩していたとする。だが、其れを見て、彼はきっとこう感想を述べるであろう。
「幾ら見た目を美しく見せようとも、中身が伴っていなければ決して美しくなどないし、美しいとは思えない。僕は、真の美を持つものこそ美しいと思うんだ。よって、あの女は美しくない。僕の好みともかけ離れている。却下だ」
 尊大な態度で以て言う彼を、他人は“何様だ”と蔑み軽蔑するだろう。けれど、彼の言う言葉には確固たる意味があったのだ。決して上辺だけで語っている訳では無い。
 何故ならば、彼には真なる美とそうでないものを見抜く心眼とも言える目があったから。要は、鋭い洞察力と目利きの力があったのである。

 彼は或る時、私に対し言った。
「見返りを求めて相手を選び、損得勘定だけで事を判断するのは美しくない。全く以て美しくない事だ。僕がこの世で最も大嫌いとする事だ。そんな人間の言う事など、一ミリたりとも君が気にする事ではないよ」
 其れは、仕事に対する愚痴というか、同じ職場で働く先輩についての悩みを打ち明けた時の返答であった。
 彼は、人間として、本当に素晴らしい人間だと言えよう。
 私は、そんな立派な人間の彼女という立場に収まっている事が、ほとほと不思議で疑問でならない。どうして彼は、私なんぞという平凡も平凡の何処にでも居るような平民の人間を側に置くのか。
 前に一度だけ、訊いた事がある。そしたらば、彼はこう言ってきたのだ。
「君は、今まで付き合ってきた女の中でもピカイチに美しい心を持っている…! 内なる輝きというのは、そこはかとなく美しい響きを持つだろう? 僕は、そういった類の全ても含めて美しいと思うんだ! そう……君は例えて、磨けば光るダイヤや、加工する前の原石のような美しさをしている。“何処にでも居る平凡も良いところの飾りっ気の無い女の、何処にそんな魅力がある”と……? 分かってないなぁ〜……だからこそ君は美しいのだよ? 幾ら美しく着飾ろうと、君の魅力が損なわれていては意味が無い。けれど、君は自身の魅力を理解し、有りの儘を曝け出す……。これ以上に美しい事は無いだろう…?」
 時々、彼の考える基準とやらが分からない。けれども、今のところ彼との関係は一切崩れる事も無く好調なのである。

2022/04/06(15:47)

←prev | next→
top