小ネタ帳

此処は、お話に昇華出来なかった小ネタや、これからお話に昇華するかもしれないネタ達を書き留めた、所謂ネタ置き場です。主に、管理人の覚え書き処。名前変換物は*で表記。鍵付きについてはインフォページ参照。


▽例え其れが狂うた事でも。

ヒルメス救済ネタからのヤンデレルート話。
IF的立ち位置での短編枠を書こうとしていたが、途中で書き切れぬようになり断念。
結果、倉庫化によって此方にアップ。
中途半端且つ突然終わる流れでも良しという方は、どうぞ。
↓以下、ストーリー開始。

焔の上がる王宮の一角に、立ち尽くす。
逡巡した後、彼を助ける事を決意した**は、近くにあった噴水の湧く場所まで駆けて行き、思い切りその中へ飛び込んだ。
全身ずぶ濡れになったのを確認すると、焔の勢いと熱さに恐怖して震える足を叱咤した。
己自身も犠牲にしかねない賭けに、彼女は運命を委ねたのだ。
心に喝を入れると、その辺に干されていた大きな布を拝借し、急いで水を染み込ませる。
次いで、大きめのバケツに水を汲み、それを抱え、濡れて重くなった布を頭に被って、紅いの焔の中へ突入した。
燃え盛る焔の中から、まだ幼き頃の彼を見付け、急いで救出する。
『もう大丈夫だからな…っ。』
酸素が薄い。
この部屋も直に完全に焔が覆うだろう。
天井や壁が焔に焼かれ、ギシギシと軋む。
熱で脆くなっているのだろう。
(崩れ落ちてくるその前に、早く此処から離れなくては…。)
自身が被っていたずぶ濡れの布で彼を包み、胸に抱いて最短距離の出口へと走り出す。
彼の呼吸は荒い…。
「……ッは………は、ぁ゙っ……熱、い………誰、か……………ッ。」
譫言のように漏れる彼の言葉が、途切れ途切れに聞こえた。
助けを求め叫び続けた上に、熱に喉を焼かれて、掠れた声しか出せないようだ。
それでも尚、今も必死で助けを乞うていた。
あれ程までに熱い熱気を帯びた空気を吸ったのだ。
恐らく、喉を焼いている筈だ。
肺もやられているかもしれない。
(早急に手当てしなければ…っ!)
自身も命の危険を冒してまで救出へ向かったせいか、足元が覚束ない。
時折転びそうになりながらも、転んだら終わりだと言い聞かせ、持てる限りの力を尽くして必死に走った。
一生に一度と無い全速力だ。
自身も喉を焼かぬように、浅い呼吸に留め、殆ど息を止めた状態で一気に駆け抜けた。
外の景色が見え、足が大地の草を踏んだ。
少しだけ離れたところで、力尽き、抱え込んでいた彼諸共倒れ込む。
いきなり外の冷たい空気が肺に流れ込み、思わず噎せ込む**。
何とか助かったと思うも、事は火急に及ぶ。
休んではいられないと、再度足に力を込め、立ち上がる。
火傷を負った彼の傷を少しでも冷やさなくては。
幸い、此処には誰も居ない。
先程の噴水の場所まで駆け行き、彼を抱えたまま、自身もまた濡れてしまう事などお構い無しに冷たい水の中に身を沈めた。
ゆっくりと包んでいた布を外してやり、自身に凭れ掛からせるようにして、負傷した箇所を冷やす。
幸いな事に、彼女は焔が上がってから早い段階で駆け付け、救出する事が出来た為、知り得る限りの彼の火傷痕よりも軽く済んだようだった。

2019/07/30(07:02)

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