小ネタ帳

此処は、お話に昇華出来なかった小ネタや、これからお話に昇華するかもしれないネタ達を書き留めた、所謂ネタ置き場です。主に、管理人の覚え書き処。名前変換物は*で表記。鍵付きについてはインフォページ参照。


▽獸の号哭を語る。

没ネタ、審神者中編で書く予定でメモってた残骸。
せっかくだから、供養がてら公開。
ほぼ会話文。
時系列は、姉審神者宅長谷部と悶着あってちょっと経った頃設定。
嫌われ要素有りの話だったので、念の為追記に折り込んだ。
苦手な人は読まない事推奨。
↓以下、追記より本文(無駄に長い)。


【本文】

「主と初めて逢い見えた時、思ったんだよ…。嗚呼、此奴は世の中の汚い部分を見た奴なんだと。」
「どういう事なんだよ…?」
「初めて主と目を合わせた時、彼奴の眼は澱み切ってた。何もかも諦めたような、生きる事すら疲れたような、そんな仄暗い眼をしてたんだよ。そう…正に死んだ魚の目みたいに濁った眼を、な。」

淡々と語る和泉守は、目線を膝上に置いた掌へ落とす。
その隣で、初めて彼女の“ハジメ”を聞くここ最近来たばかりの新しい刀達が興味深げに耳を傾ける。

「俺は一番最初の刀だったから、直接本人から聞いたけど…審神者始めたばかりの頃はね、主色々と荒んでたんだって。少し前に、何もかも厭になるような精神ズタボロになるような事があって、心身共に身体壊しちゃったって。其れで、暫くの間夜もまともに眠れなくなるくらい魘され続けて、遂には夜が怖くなって昼夜逆さの生活に変わっちゃったってさ。審神者への適性は元々あったんだろうね、審神者になる数ヶ月の前くらいに“変なもの”が見えるようになったりしたんだとか…。で、色んなもの抱えたまま、縋る想いでこの世界に足を踏み入れたんだって。」
「嗚呼…そういや、僕も一度聞いた事があるよ。今も少しあるらしんだけど、人の事を信じられなくなってた時は、見も知らない他人という存在が恐く見えちゃうんだって。人の目がある事自体が恐怖の対象になっちゃうとか…。でも、僕達刀からしてみたら、同じ人間なのにそう思っちゃう事があるんだなって考えちゃうなぁ〜。何か、言葉は悪いけど、滑稽じゃない…?」
「まぁ、確かにあまり言ってはならない言葉だとは思うが…然り、だね。彼女は、主は…今も何処か恐れを抱いているみたいなようだから。」
「俺達の主は、気丈に振る舞っているように見えて、実のところは酷く臆病なんだよ。不安に思う事が過去に幾つも至るから、よく先へ進む時に迷いが生じている。」
「ワタシ達が来た頃は、少し振り切ったように思えたのですが…?」
「村正殿がいうとうり、わたしたちはあまりそういうところをみたことがないが…。」
「おんし等が来た頃には、主も少し立ち直っちょったきの。見た事が無いんは、仕方ないろう。最も、表には見せんようにしちょった、っちゅーのが正しいんじゃろうがな。」
「そん頃の主を言い表すなら、傷を負った獸ってのが適当だな。自らを傷付けるような輩が現れるなら、鋭い目付きで睨み付けてひたすら威嚇してる、ってな…。敵に怯えて仕舞うべき爪を仕舞いきれなくなって、傷付けたくないのに牙を向けて…そして、荒々しい風を巻き起こして、此方へ干渉してくるのを防ぐ…みたいなか?」
「おぉ…っ、正国が真面目に見える…!」
「おい、そりゃどういう意味だ。俺は基本何時も真面目だろうが。」

真剣に話に混ざっていたら、横合いから茶化しの槍を入れられ、眉間の皺を刻む同田貫。

「あ、でも、そういう主…演練や会議の時とかに見た事あるなぁ…。本当俺が顕現した最初の頃だけど。誰も知らない奴ばっかで不安なのもあって、恐かったんだろうな。周りの人間皆敵みたいな眼して見てたぜ?今はそんな事ないし、全然そんな素振りも見せないけどさ。」
「たぶん、其れは場の空気に慣れたってだけだろ?」
「んー、たぶんそんなところだと思う。俺的な予測だけどな。」

すっかり人間らしさに慣れた槍は、からからと乾いた笑みを浮かべる。
その向かいで、無表情で話を聞いていた三日月がポツリ、呟いた。
其れは、物悲しそうに、嘆くがように…。

「余程、辛い目に遭ったのだろうな…。時に虚ろな昏き眼を浮かべて空を見つめておるのは、その時の記憶でも思い出しているのか…後悔でもしているのか。しかし、まぁ…人の命とは短きものだ。その短い間に幾多数多の事を学び、喜び、時に悔やみ、迷い、哀しむのだろう。其れが、人の世というものか…いやはや、なんとも儚きものだろうな…。其れ故に、愛しいと思うこの気持ちは、刀として、“物として”、間違っておるのだろうか…?」

きらり、青き眸に弧を浮かべて三日月は問う。

「いや…其れも、また、間違ってはいないと、僕は思うよ…?人というのは、とても面白く滑稽なものだとも思うけれど…其れと同時に、酷く愛しくも思えるから。だから、人の側に在るという事はやめられないんだよねぇ…。だって、所詮、僕達は“物”に過ぎないから。人が居なきゃ、僕達は存在出来ない。こうして、人の身を得て顕現する事も出来ないしね?」

猫の目のように細めた目を器用に笑わせる源氏の兄刀。
隣では、弟刀がうんうんと深く頷いている。

「全く…爺共は回りくどい言い方ばっかで話にならねぇな…っ。要は、どう足掻いても、俺達は主という人間を愛しく思うし、大切にしなきゃならねぇって話だ…!」
「おまん…最終的に、この話まとめんのが面倒になったにゃあ?」
「うるせぇ。とにかく、今の俺達が為すべき事は、不安になりがちで揺らぐ主を支えるってこった!つまり、主を傷付けるような輩が現れねぇように確り目凝らしとけって話だ。逆に、億が一にも、アンタ等の方でウチの主の事を傷付ける、若しくは下げるような事言うような奴が居たら容赦はしねぇし、加減もしねぇからなって事だからな?山姥切。」

今の話を輪の隅の方で聞いていた、彼女の姉本丸の山姥切に向けて告げる。
真っ直ぐと彼を見遣る蒼き視線は、威圧感すら感じるものだった。
彼の山姥切は、其の視線に、少しだけ畏怖のようなものを感じ、片腕を擦った。

「まぁ…どういう意味で言ってるかは、解ってるだろうがよ。」
「あ、嗚呼…ウチのへし切長谷部には、よく言い聞かせておく…。」
「おう。きっちりキツゥーくよく言い聞かせておけ。アンタんとこの長谷部は、未だウチの主に突っかかってくる事があっからな。忠告も含めて伝えておいてくれ。アンタもアンタの処の事があるから、気にしてる余裕も無いかもしれねぇけどな。まぁ、ちょっとだけウチの事の方も気にかけてやってくれや。“どちらの主も”、繊細なところがあるってのは変わんねぇと思うからよ。」
「胸に留めておく…。忠告、確と受け取ったぞ。後は、本人が聞き入れるか否かだ…。其れは、俺の問題ではないから、其れ以上の事は出来ないぞ?」
「話通しといてくれるだけでもありがてぇから、其処んとこに関しては別に構わねぇよ。アンタもアンタの事があるだろうからな。」

静かに幕を閉じた話は、閉めていた部屋の戸を開ける。

「話、付き合ってくれてありがとさん。」
「いや…少し、勉強になった…。ウチの主の事についても、もう少し見ていて遣らねばならないと参考になったしな。此方こそ、礼を言う。」
「お互い、此れからも交流する事があるだろうからな。当然のこったよ。」
「また、色々と話を聞かせてくれると、俺達としても助かる。」
「嗚呼、またウチに用があって来た時にでも語り合おうや。」
「それでは…失礼する。邪魔したな。」
「おう。またな。」

静静と去っていく彼の背を見送って、小さく手を振る。

「話は終わったの…?兼さん。」
「嗚呼…。」
「良かったの…?主さん本人の許可も取らないで話して。」
「良いんだよ。彼奴自身も、もうある程度ケジメ付けてんだろ…。だったら、また“倒れねぇように”支えてやるだけだろ?」
「うん…そうだね、兼さん。」

遠くで、和泉守を呼ぶ声がする。
今や柔らかくなった、棘の外れた声音で。

2019/09/27(20:16)

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