
花蜜drop
ラルが暇でやる事なく飴玉を舐めていると、ヒルメスが部屋に入ってくる。「何を食べているのだ?」
『ん〜?飴玉〜。暇だし、何か甘い物食べたくなったから。』
「ふぅん…。」
『ヒルメスもいる?お疲れの様だし…っ。飴玉舐めると疲れ軽くなるよ〜。』
「…戴こう。」
ほい、と袋から出してやると、要らぬと手で制される。
『え?今いるって…。』
「そっちではなく、おぬしのが欲しい。」
『は…?』
仮面を付けたままで表情は見えないが、何だか妖しい雰囲気を纏うヒルメス。
現に、唇は妖艶に弧を描いている。
『どういう意味…、んむぅ…っ!?』
「ふ…っ。」
至極愉しそうに鼻で笑うヒルメス。
『…ふむぅ…っ!…ヒル、メ…っ、んぅ…っ。』
「良い顔だな…。そそられるぞ。」
角度を変えながら何度も唇を啄み、口付けるヒルメス。
絡み合う舌は厭らしく唾液を絡ませた。
互いの舌の温度で溶けた飴玉の甘い唾液が、ラルの口端を伝う。
最後に触れるだけの口付けをちゅっ、とわざと音を立てて離した。
ラルはすっかり息が上がり、肩で荒く呼吸していた。
顔は苦し気に歪めており、恥ずかしさと怒りの入り混じった感情で低く唸った。
そんな表情が堪らなく嬉しいのか、深い口付けでずれた仮面にも気付かないまま、彼女の身体に覆い被さる。
「俺に全てを捧げよ、ラル…。」
『…私が、その意に逆らったら…どうする?』
「無理矢理にでも従わせれば良い事…。」
『じゃあ…、素直に従った場合は…?』
「…その時は迎え入れるのみ。」
『ふぅん…?』
「して、おぬしの答えや如何に…?」
暫し沈黙が流れた。
ゆっくりと息を吸ったラルは、答えを紡ぐべくして、口を開く。
『では、答えて差し上げましょう…。』
「うむ、申してみよ。」
わざと慇懃な口調で話す彼女のノリに乗ってやりながら、解答を待つ。
また少し間が空いた。
『答えは…―その“どちらでもない”、だ。』
彼女はヒルメスの耳元に唇を寄せ、わざと煽るように吐息混じりで囁いた。
気分を昂らせていたヒルメスは、それを敏感に受け取り、甘い誘いに熱で身を震わせた。
クス…ッ、と色っぽく艶のある笑みを浮かべるラルは、実に意地らしく、小悪魔だった。
蠱惑的笑みを浮かべたラルを、鳩が豆鉄砲でも食らったかのように目を丸くさせ見て、驚くヒルメス。
するりと頬を撫でられた彼は、ビクリと肩を揺らす。
―こんなラルを…俺は知らない…っ。
思考の奥で告げられる警告音に、しかし、しなやかに伸ばされた白く細い腕にヒルメスは捕らわれてしまい、本能に抗えず、触れられている頬の手に自身のものを重ねる。
『―いつまでも、私を見くびってもらっちゃ困るわよ…?』
珍しく女口調で喋る彼女は、艶美に着飾った魅惑の悪女のようだった。
まるで仔猫でも飼い慣らすが如く、彼の身体をツツツゥー…ッ、と撫で上げた。
上まで上がってくる熱情に、ヒルメスの下半身は打ち上がった。
もう一度クスリッ、と笑うと、密着させていた身を離し、行為を辞める。
そして、一言…。
『おーわりっ。』
と言ったのだった。
そして、いつも通りの彼女に戻ると、悪戯な笑みを浮かべて。
『どう…?私から攻められた気分は。いつもの仕返しのつもりだったけど…興奮した?それとも萎えちゃったかな…?』
窓際に凭れ掛かり、唇に自身の指を持っていって食む姿は、何とも甘く誘うものである。
意地悪に笑む姿は、正しく、Sだ。
先程まで翻弄されていた相手とは思えない光景であった。
執筆日:2018.03.25
加筆修正日:2019.07.07
加筆修正日:2019.07.07