没落寸前

若く歳近なザンデは、ラルの気紛れなおちょくりに翻弄されるも、気付けば惹かれており、密かに想いを寄せるまでになっていた。


(嗚呼…ちょっとばかりでも良いから、ラル様とお近付きになりたい………っ!)


そんな想いを抱くようになっていたザンデの様子に気付いたヒルメスは、後ろからボソリとドスの効いた低音ボイスで唸るように獣染みた声で言った。


「貴様…、俺のラルを好いたりするなよ……?ラルは俺だけのものだ。間違っても、阿奴に手を出そうなどと思うな。然もなくば、この首が胴体と斬り離される事になるぞ。…分かったな?」


そう言って、冷たく鋭い剣の切っ先をザンデの首筋に突き付ける。

その表情は実に恐ろしく、外野で離れた所から様子を眺めていたサームでさえ背筋を凍らせていた。

当の本人は恐ろし過ぎて声も出ず、悲鳴を上げて泣いてしまいそうになるのを必死に堪え、ただただ首を縦に振るのが精一杯であった。

サームは、そんなザンデを見遣り、内心可哀想に思いながらも今は黙って見る事しか出来ずに、そっと心の中で合掌し、御愁傷様と告げて、その場を見なかった事にしたのだった。

哀れ、ザンデ。

不憫たる運命よ…。


執筆日:2018.03.25
加筆修正日:2019.07.09
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