一富士二鷹三茄子

それは、元旦を迎えての翌日の事であった。


『…ふわぁ〜ぁ、…うぅん…おはよぉ〜エラムぅ……。』
「おはようございます、ユニヴァナード様。よく眠れましたか?」
『ん〜………まだちょっと眠い……。』
「それは当然でしょうね。昨夜も、かなり遅くまで起きていらっしゃったようですから。」
『にゃは〜……っ。エラムたん、厳しい………。』


フラフラと目を擦りながら起きてきたのは、この一行の中で数少ない女性の一人であるユニヴァナードだった。

起きて真っ先に顔を合わせたのは、家事全般を卒なくこなす、ナルサスの侍童エラム。

何人かしか起きてきていない正月明けのこの時間に、彼は皆の為に腕を奮って料理を作っていたのである。


「今から、ユニヴァナード様の分のお雑煮を温めますが…お餅は幾ついりますか?」
『む…?んじゃぁ、一つ。後でもう一個別にお餅食べるから。二個目はね、磯辺にするのだ…!海苔と醤油でうまうま〜♪』
「畏まりました。磯辺はお雑煮の後ですね。では、出来上がるまで彼方でお待ちください。ナルサス様はまだ起きられておりませんが…ダリューン様やファランギース様なら、既に起きていらっしゃいますので。」
『おっ、ダリューンはもう起きてたのか。相変わらず早いねぇ…。』


仲間の早起きに感嘆しつつ、自分の行動を考え直すユニヴァナード。

一先ずは、エラム手作りの美味しいお節料理の残り物に舌鼓みを打ちながら、お雑煮が出来るのを待つ事にする。

炬燵のある暖かい部屋へ行けば、エラムの言っていた二人が仲良く談笑していた。


「おぉ、ユニヴァナード。起きられたか…。おはよう。」
『ファランギースにダリューン、おはよぉ〜…。』
「おはよう、ユニヴァナード。何だかまだ眠そうだな…?」
『う〜ん…昨日も遅くまで夜更かししちゃったんで…あはは…っ。』
「成程な。程々にしておけよ…?正月とはいえ、ずっと起きているのは身体に悪いからな。」


微笑を浮かべて、自分の隣に座るよう促すダリューン。

彼の柔らかい態度に、彼女も気を許しているので、「にゃはは…肝に銘じときまーすっ。」と軽く返した。

彼が自分の隣を空けてくれたので、誘われるがまま素直に疑いもせずに座る。

一瞬、ファランギースがちらりと視線を寄越してきたが、すぐに逸らされたので小首を傾げるだけに留まった。

炬燵に入るとぬくぬくと温もりが伝わってきて、次第に絆されていくユニヴァナード。

心地よい暖かさに、ふにゃんとした表情になるのだった。


『あ〜、おこた温〜い…。もうこっから動きたくない………。』
「随分と情けない事を言うのう…。」
『ん゙〜、だって朝起きたら寒かったんだもん…。』
「これでも今年の冬は暖かい方だぞ?」
『んなこた言ったって、寒いもんは寒いもん!…ファランギースは相変わらず露出してるけど…寒くないの?』
「そうじゃな。これくらいは慣れておるから、平気じゃのう。」


クスリ、と艶やかに笑む大人の女性らしい色気に充てられたユニヴァナードは、仄かに頬を染めた。

この人相手には、幾らやっても敵わなそうだ…。

他愛もない会話に花を咲かせていると、出来上がった彼女の分のお雑煮を持ってきたエラムが、ひょい、とテーブルの上に置いた。


「お待たせ致しました、ユニヴァナード様。お雑煮ですよ。」
『待ってました!エラムの手料理…!!』
「猫舌なユニヴァナード様に合わせて、少し温めの熱さに調整しておりますので…。冷めない内にお召し上がりくださいませ。」
『ぅわぁ〜い♪流石、エラム…!分かってるぅ!!ほんじゃま、いっただっきまぁーす!はむっ………ん〜っ!美味ひぃ〜♪』
「本当に美味しそうに食べるな、おぬしは…。」
「私にとっては、それが何よりの喜びですから。そう言って頂けて、とても嬉しいです!」


ほわほわと和みムードが広がっている中、寝起きで足元の覚束ないアルスラーンがやってきた。


「んぅ…皆起きるのが早いのだな……。おはよう…。」
「おはようございます、殿下…!よく眠れましたか?」
「おはようございます、殿下。さぁ、此方へどうぞ。」
「あ、殿下…!おはようございますっ。もう顔は洗われましたか?」
『…エラム、お母さんみたい。』
「ユニヴァナード様は黙っていてください…!」
「嗚呼…顔ならちゃんと洗ってきたから、心配ない。ありがとう、エラム。」
「いえ。殿下のお雑煮が出来るまで、暫し其方で寛いでいてください。」


先程の彼女と同じく、まだ眠たそうな少年は目を擦りながらも、エラムの問いかけに柔らかい態度で受け答えていた。

途中、彼女が茶々を入れたが、軽くいなされてしまった。

そうこうしていると、残りの面子も美味しそうな匂いに釣られて起きてきたようで…。

ギーヴやアルフリード、ナルサスが姿を見せた。


「おやおや…既に皆様起きていらっしゃるようで…。正月であるのに、お早い事ですなぁ〜…。あぁ、頭痛い……っ。昨日は少し飲み過ぎたか…………。」
「おはようございます、殿下!それに、ファランギースにユニヴァナードも、おはよう…っ!!」
「うむ、おはよう。」
『おはよう、アルフリード。今日も元気だねぇ〜…。』
「まさか、私が殿下より遅く起きる事になろうとは…。申し訳ございません。」
「あ、いや、別に構わぬ。こういう日ぐらい、皆ゆっくりと身を休めた方が良いのだ。…気にしないでくれ、ナルサス。」
「かたじけないお言葉、痛み入ります。」


ぞろぞろといつものメンバーが揃えば、一層賑やかになる部屋。

二日酔いのギーヴは、頭痛を催しているのか、いつもより幾分かテンションが低い。

アルフリードは相変わらず元気ハツラツで、見ているこっちまで元気になれそうなオーラである。

一方、寝ぼけ眼の策士ナルサスは、緩く纏めた髪に寝癖を付けたまま来たようだ。

ダリューンが即揶揄っていたが、面白いので放っておく事にしよう。

残りの皆が一斉に起きてきた為、皆の料理を用意するエラムはてんやわんやと慌ただしく動く。

アルフリードが手伝おうと口出そうものなら、即答で断っていた。


「ダリューン卿は、二日酔いになっておられぬようですな…。俺の記憶が確かなら…其方も大分飲まれていたようでしたが。」
「ん…?確かに、俺も昨夜はいつにも増して飲んだ方だが…。加減はしていたからな。だからであろう?」
「成程…。しかし、策士殿の方はそうでもなかったご様子で。」
『鍛練が足りないんじゃにゃいの〜?』
「これはこれは…手厳しいですなぁ、ユニヴァナード殿…?そう仰るのでしたら、今宵はお一つ付き合ってはくださいまs…、」
「それは俺が許す訳にはいかぬ。あと、不用意に彼女へと近寄るのは止めてもらおうか…?」
「おやぁ…?新年早々、惚気てらっしゃるので…?ダリューン卿も隅に置けませんなぁ。」
『何やら謎の火花が散って、空中で大拙戦しとる…。』


当該、本人の事なのだが…。

ユニヴァナードは至ってのほほんと構えているのだった。

さりげなさを装って彼女の隣をキープしようとすると、決まった事のように黒衣の騎士なる者がそれを阻んだ。

皆が揃ったところで、各自それぞれにお雑煮やお節の残り物を食べ始める。

賑やかな雰囲気と相成った時、「そういえば…。」とアルスラーンが口を開いた。


「なぁ、皆は初夢というものは見たか…?」
「初夢、ですか…?」
「あ〜…あの、元旦から次の日までの間に見る夢の事で…?」
「うむ…。皆がどんなものを見たのか、気になってしまってな!…良ければ、話してくれないか?私が見た夢も話すから!」
『良いですね、乗っちゃいましょう…♪』


アルスラーンの楽しげな空気を読み取り、直ぐ様盛り上げに参加する彼女。


「まずは、私から話そうかな…?えっと、私が見た初夢は…とても平凡で、和やかなものだったのだが……従兄弟殿が出てきたのだっ!」
『おぉっ!あのヒルメスが…。』
「して、その従兄弟殿とどんな事をしたかというと…。特に何も無いと言えば無かったのだ。ただ楽しく他愛もない会話をしていただけ、という風な夢だったのだが…あまり面白くも何ともない話であったかな?」
「いいえ、とても殿下らしゅうお話でした。」
「うんうんっ。あの銀仮面の奴と仲良く会話してるなんて、普通想像出来ませんし!」
「ああ、殿下…っ!なんと尊きお人なのか……っ!!」
「ダリューン…心の声がだだ漏れておるぞ…。」


アルスラーンの話した夢の内容に皆が癒されている中、約一名がその純粋さに打ちひしがれていた。

それに対して、彼女の傍らに座るナルサスが控えめに突っ込んだ。


「初夢か…。初夢と言ったら、アレだな…。」
「ん…?ナルサス、どうかしたの?」
「いや、初夢と言ったら、有名なものがあってな…。」
「有名なもの………?」
『あぁ…もしかして、“一富士二鷹三茄子”ってやつ?』
「おっ、ユニヴァナードは知っておったか。…流石だな!」
「…?それは一体何なのだ…?」
「殿下、“一富士二鷹三茄子”というのは…初夢で見ると縁起の良いとされているものの事です。
富士山や鷹、茄子が出てくると、昔から縁起が良いと言われているのですよ。」
「そうなのか…!初耳だ…っ。」


ナルサスの何気ない言葉に彼女が反応すると、アルスラーンは首を傾げて訊いてきた。

それに応じ、ダリューンが丁寧に説明する。


『縁起の良いものと言えば、他にもあって…白蛇が出てくるのも縁起が良いと言われてますよ!古来昔から、白いものは神聖なものであると言いますし、実際に白蛇の神様がいらっしゃると存じております。』
「へぇ…白蛇ですか…。」
「何だか勉強になるな…!」
「え〜…でも、蛇ってだけであまり良いようには思えないんだけど…。」


縁起の良いもの繋がりで、もう一例挙げてみる彼女。

少年少女達にとっては初耳だったらしく、ふむふむと頷き、耳を傾けた。

アルフリードは微妙な反応を返したが、まぁ当然な反応だろうと苦笑で返した。


「ちなみに…ユニヴァナードはどんな初夢を見たのだ?」
『え、私ですか…?』
「うむ…!おぬしがどんな夢を見たのか、とても興味があるのだ…っ!!」
「確かに、私も気になりますね。」
『え…。何?ギーヴまで…。私の夢なんて、大して面白くも何ともないと思うんだけど………。』
「それでも良いから、話してみてくれ!」
『はぁ…。殿下がそう仰るのなら……。』
「ありがとう、ユニヴァナード。」
「…殿下がいつになく積極的ですね…。」


ボソリと興味深げに呟いたエラムだったが、それを聞いていたのは一部の保護者組のみであった。


『え〜っと…覚えている限りでは、確か…最初に出てきたのは、告命天使(スルーシ)だったかな…?仲良く戯れてたら、空から告死天使(アズライール)が舞い降りてきて、兄弟仲良く戯れてるのを見て癒されてたような……。』
「おお…っ!二鷹で、縁起が良いのではないか?」
「動物大好きですもんね、ユニヴァナード様。」
「うん。何となく、ユニヴァナードっぽいよ!」


ぽつりぽつり思い出しながら話す彼女へ合いの手を入れるエラムとアルフリード。

仲が良いのか、悪いのか。

意見の合う時だけ、賛同する二人である。


『よく分かんないけど…何故かその後、黒影号(シャブランク)と仲良くお散歩したり、原っぱ駆けてる夢を見たよ。』
「そしてまさかの、ここで更なる動物登場…っ!!(爆笑)」
「何故、俺の馬…っ!?」
「よっぽど気に入っておるのじゃろうな…。」
「己の馬に先を越されたな、ダリューン?」


まさかの新たな動物要員追加で、床に引っくり返って爆笑する某楽士。

自分の馬に負けて悔しいダリューンは、若干複雑な面持ちだ。

ナルサスはすかさず突っ込みを入れるが、彼の美女は至って動じず、和やかにお茶を啜っていた。


『夢にまで見たのは…きっと、彼と仲良くなりたかったからかな?』
「でも言ってしまったら、正夢にならないのでは…。」
『あ…っ!』
「大丈夫だよ、ユニヴァナード。黒影号は既におぬしに心を許しておる。心配しなくて良いぞ…!」
『そうなの!?黒影号…!良かった!!黒影号って格好良いし、可愛いから、仲良くなりたかったんだ♪』
「アレの何処が可愛らし…あ、いえ、何でも無いです……。」


軽弾みな発言をしようとしたギーヴを、女性陣二人と侍童一人が睨み付けた。

ちょっと悔しげなダリューンだが、「まぁ、良いか。」と思ったところで。

彼女への好意に応えるように、外で待機するご本人様が「ブルルルン…ッ。」と嘶いた。


「…他の皆はどうだった?」
「私も、殿下と同じような、平凡な夢でしたよ。いつも通り、殿下やナルサス様、皆様と一緒に居て、平穏な日々を送っている…という内容の初夢でしたね。」
「私は…何だったっけなぁ…?なーんか見た筈だったんだけど……んーっ、忘れちゃったや…っ!」
『まぁ、夢ってそんなもんだよ!眠っている間、知らない内に見てて、起きたら忘れちゃってるのはさ。』


朗らかに笑い合う空気に、大人達は穏やかな気持ちになる。


「富士山に鷹か…。うむ、なかなか良い絵の対象になりそうだ…っ!」
『え。』


突然、何かに閃いたナルサスが、年始早々にあの飛んでもない絵の才能をお披露目する気らしい。

それを聞いた途端、彼の腕前をよく知る者達が揃って迷惑そうな微妙な表情を作った。

画家の魂が疼いたとか何とかと言い出し、早速正月にちなんだ絵を描き始めるナルサス。

富士山は写真を元に。

鷹はキシュワードに飼われる、告使天使と告命天使の二羽を元に。

茄子は、エラムが料理に使う為と買ってきていた物を使用。

流石のアルスラーンも冷や汗を垂らして成り行きを見守る。

二羽の兄弟鷹も、彼の絵があまりにも禍々しくて、モデルとなるのを嫌がっているようだ。


「おい、おぬし。新年早々、何をやらかすつもりだ……。またあのような訳も分からぬ絵を描くのか…?」
「新年始めだからこそ、描くんだろうが。“書き初め”というやつだぞ。」
「描く度生まれてくる、あの禍々しい酷い産物を目にする、此方の身にもなってみろ…!!存在だけで、縁起が悪いわ…っ!!」
「何だと貴様ぁ…ッ!?」
「まぁまぁ、一旦落ち着かれよ…。」


幼馴染みである同士であるが故か、遠慮無しに言葉をぶつければ、それ相応の態度が返ってくる。

今にも険悪ムードになりつつある二人の仲を持つギーヴ。

何気に苦労している楽士なのであった。

そうこうしていると、扉の向こうで何やら騒がしい物音が…。

と、思っている内に、勢い良く乱暴に開け放たれた扉(だったもの)が、彼の人の顔面へと直撃した。


「のわ…っ!?何故おぬしが此処n、ぎゃぶッッッ!?」


いきなり乱入してきた者に、顔を合わせて早々ぶっ倒されるギーヴ。

不憫だが、いつもの事なので放っておこう…。←


「な…っ、銀仮面!?何故、おぬしが此処に…!!」
「貴様等に用は無い…。俺は、新年明けて一番に、ただ我が妻となる者の顔を見に来ただけだ。おぉ…ラルよ、起きておったか。おぬしに逢いたかったぞ。」


先程ギーヴが言わんとしていた言葉を、ダリューンが代わりに述べる。

やって来た者は、彼の言わんとする事など一蹴し、ただ己の目的を果たすだけに集中した。

現れた途端、目的の彼女を視界に入れると、真っ先に其方へ向かい、彼女の頬に手を添えた。


『ッ………、むぐっ。』


一方、食事中にいきなり頬に手を添えられたユニヴァナード(ラル)は、一瞬だけ怪訝な顔付きになり、眉根を寄せた。

しかし、至って普通に食事を続けている。


『餅、食いづらいんだが…。』


彼女を求めてやってきた彼には見向きもせず、そんな感想を漏らすだけで終わる。

単に、今は食事に集中したいだけ、というのは分かるが。

最早、何処から突っ込んで良いのやら…。

その傍ら、威圧だけでヒルメスを牽制しようとするダリューン。

眼光だけで人を殺せそうな勢いである。


「新年早々、何用だ貴様…ッ。殿下に仇なす者は、即刻斬る…っ!!」
「ふん…っ。アンドラゴラスの小倅になど端から用は無いわ。俺は始めから、此奴だけにしか用は無い…。という訳だ。…少しの間、此奴は借りてくぞ。」
「はぁ…っ!?」


言い終わるが早く、丁度お雑煮を平らげた彼女を、まるで猫を抱き上げるが如く引き上げた。


『うみー。釣り上げられましたぁー。』


後ろから両脇を抱えられたユニヴァナードは、宛ら、身体がびよ〜んと伸ばされた猫のようだ。

というか、何故ゆえそこまでのんびりしていられるのか…。

今にも連れ去られそう(という名の拉致)になっているのに。

粗末な扱いを受けている彼女に憤慨したダリューンは、お得意の槍を構えて戦闘体勢に入った。


「貴様ぁ…ッッッ!!ユニヴァナードに対し、何という扱いをしておるのだ…!!今すぐその手を離せッ!!」
「今このまま離せば、此奴は地べたに激突する事となるが…良いのか?」


売り言葉に買い言葉。

敢えて挑発的発言をし、相手を見下す銀仮面卿ことヒルメス。

睨み合いが続く最中、彼女はずっと中途半端な体勢のまま、宙にぶら下げられている。


『………む〜、喧嘩するのは勝手だが…そろそろ降ろしてもらえませんかね…?流石にこのままはちとツライ……。脇の下の血、止まる…。』


ぷらーんぷらーんと足を揺らしながら訴えるユニヴァナード。

視線を向けたヒルメスが、言われた通りそっと地に降ろしてやった。

そして、何を言うかと思えば…。


「ラル…俺と共に来い。そして俺の妻となれ。」
『は………?』
「おぬしが望むなら、今すぐにでも式を挙げよう。位を欲するのならば、妃の位を授けてやるぞ。」
「銀仮面んんんん…ッッッ!!!!」
「どうする…?」
「い、従兄弟殿ぉーっ!?」


おい、どうした。何があった。

そんな風にしか思えぬ台詞が、彼の御仁の口からぽんぽんと出てきている。

ダリューンは怒りが頂点に達し、アルスラーンは急な展開にあたふたと慌てふためいていた。


『…どんなプロポーズの仕方だ?それ…。何処の乙女ゲー……?誰か、此奴の外れたネジ持ってきてくれるー?なるべく早急にー。』


華の女子ならときめくかと思いきや、まさかのダメ出しを食らわされる展開だと…?

一体、誰がそんな展開を望むのか…。

それは、“神のみぞ知る”ではなく、“神の味噌汁”となりそうだ。


ちゃんちゃん♪


「……あの、私の存在を忘れないで頂きたいのですが…っ!」
「出来たぞ…っ!今年最初の渾身の絵だッッッ!!」
「うわぁあああっ!!!?…う〜んっ。(パタリ)」
「殿下ぁあああーっ!!?お気を確かにぃぃぃーッッッ!!!!」
「何だそのおぞましい物は…っ!?即刻燃やせっ!!」
「火がお嫌いな筈のヒルメス王子が燃やせと…っ!?」
「…何か、私達途中から空気なんだけど…。」
「私も同じだから、心配せずとも良い。」
『テラワロスwww』
「さて、私は皆様が食べた後の食器を片付けますかね…。」


◇END
加筆修正日:2019.07.12
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