今日の私のペット1

一人暮らしの社会人ラルの元で飼われる事になった、とある道端に捨てられていた噛み癖のあるツンデレにゃんこ。

名をヒルメスと言う。

この猫、事ある毎に噛み付く猫であった。

最初は慣れずに警戒心剥き出しで引っ掻き回し、噛み付きまくった。

触られるのを嫌がり、しょっちゅう噛み付くのだ。

素直にご主人様に甘える事が出来ずに噛み付くヒルメスは、知らず知らずの内に落ち込んでいた。

しかし、そんな彼でも、彼女は優しく怖がらせないように声をかけ続けた。

噛まれても、引っ掻かれてもめげずに。


『こら…っ!めっ!』
『あいた…っ!痛たたたっ!?い゙、痛いぞヒルメス…!!大人しくしなさい!!』


しかし、最後には必ず。


『もう、おいたして…っ。可愛い奴だな〜っ!』


と口にするのだった。

次第に心開いていくヒルメスは、ある日、本当の姿…人の姿に変化して現れる。


「…嗚呼、漸くだ…っ。漸く、この姿に成れた…っ!」


人の姿になれた歓喜に胸を震わせるも束の間に、彼は傍らで眠りに就いている女へとその手を伸ばした。


「ラル…お主が目覚めた時が、お主の運命の時よ。ずっと、待ち侘びていたのだ。離す気など微塵の程も無いわ。」


クツリ、と口許に微笑を浮かべながら、するりと眠る女の頬を撫でるのだった。


―翌日…。

朝起きたら、見知らぬ男性に組み敷かれてました。


(だ、誰だ!?この人…っ!!?)


突然の事に、ラルは身を固くする。

男性は何故か自身を知っているようで、首筋に顔を埋めてきた。


『はぅ…っ!?』


男性は、耳の奥に響く低音ボイスで、笑った。

クツクツと喉の奥で笑う彼は、とても魅力的に見え、不意に胸がドクンッと高鳴る。

彼は、首筋に顔を埋めたまま、甘えるように擦り寄った。


『へぁ!?』


上擦った変な声が出て、慌てて彼を引き剥がそうと肩に力を込める。

だが、びくともせず、擽ったさに思わず小さな声を上げれば、愉快そうに笑みを浮かべた。

何も発せず動けないでいると、彼はそのまま彼女の首筋に口付け、あろう事か噛み付いたのだった。

甘噛みである。


『いっ!?…ッぁ…!』


すると、噛み付かれたところから甘い痺れが身体中に走り、意図せぬ反応をしてしまう。

その後も、幾つか同じような強さで噛まれ、至るところに噛み痕が付けられた。

覚えのある噛まれ方に、ついにラルは…。


『…もしかして、お前…ヒルメスか?』

と言った。

つい口を突いて出た言葉だったのだが、彼には違ったようで。

分かってもらえて嬉しかったのか、肯定の意を示し、彼女の頬に唇を寄せた。


『え…………本当に、ヒルメスなんだ…?』
「おぬしなら理解してくれると思っておったぞ…。噛み方で分かるとは、流石だな。」
『…そりゃ、まぁ…あんだけ毎日甘噛み食らってたら、嫌でも覚えるよね…。』
「ふ…っ、直接身体に教え込んだ甲斐があったというものだな。」
『は?』
「…漸く本性を晒せたのだ。今まで抑えてきたものを発散させてもらうとするか。」
『え…?や、あの…ま、待ってください…っ!心の準備とかいうものが全く出来てないっつーか、そもそも何でヒルメス人間になったらそんな押せ押せなの…ッ!?』
「おぬしが誘うような真似をしておったからであろう…?先程も俺を煽るような甘い声を出しておったではないか。今更やめろとは、それこそ無情というものではないのか?」


妖しく口端を吊り上げるヒルメスは、妖艶な雰囲気を醸し出しながら、じわりじわりと彼女に攻め寄る。

逃げようにも、既に上を取られているし、寝起きで此処は布団の上だ。

ただの猫だと思っていたら、まさかの結果が待っていたのである。


「俺に抱かれ、番となれ…ラル。」
『つが…っ!?な…、ちょっ!ヒルメス、待って……っ!!』
「存分に優しくしてやるから、安心するが良い…。まぁ、初めこそ痛みがあるだろうが…直に好くなる。…大人しく、俺と繋がれ。」


拒否されようがされまいが、お構いなしとばかりに彼女へ覆い被さったヒルメス。

暗転する視界に、恥ずかしげに顔を赤く染めるラル。

そんな初々しい反応を見せた彼女に気を良くしたヒルメスは、柔らかな唇を甘噛みするように噛み付いた。

啄む如く食むと、細腰を優しく抱き、甘美な世界へと誘っていったのである。


執筆日:2019.07.29
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