嫉妬心に歪んだ愛情

※恋人となった以降設定、兵士達の立てる勝手な噂から勘違いを起こしたヒルメスが嫉妬するお話です。


 自分よりアルスラーンの小倅を選ぶだけでなく、それに仕えるあの目障りな黒衣の騎士であるダリューンと恋仲になりつつあると聞いては、腹が立って怒りが収まらなかった。
 今すぐにでも掻き抱き、己のものであるという印を刻み付けてやりたいと業を煮やす。
 復讐に燃え、生涯の殆どを憎しみに捕らわれたヒルメスは、狂ったようにラルを追い詰めたかと思うと、壁に縫い付け、両手を左手だけで押さえ付け封じた。次いで、利き手で顎を強い力で上向きにし、自分の目を見るように仕向ける。
 すると、何をされるのか分からず恐怖に怯えた瞳が、彼の双眸に映り込んだ。
「ラル……っ、おぬしは俺だけを見ていれば良いのだ。俺だけを……、他の者を映す事などは許さぬッ……! おぬしは、俺のものなのだ!! 俺だけを見よ、ラル……ッ!!」
 今までずっと抑え込んできた感情を吐き出すと、噛み付くようにして彼女の唇に自身のそれを押し当てた。漸く辿り着いた甘い蜜に気分を昂らせたヒルメスは、制しようとする彼女の訴えを拒み、夢中で貪り付く。
 呼吸がままならず、酸素が足らなくなってクラクラしてきたラルは、段々と意識を遠退かせた。全く抵抗の無くなった様子を見兼ねて、漸く唇を離したヒルメス。どうやら、腰を支えてやっていなければ崩れ落ちていたであろう程、初めての深過ぎる口付けに酔ってしまった模様であった。そんな彼女を見て、満足げにニヤリと妖しく笑うヒルメス。口許は、今までに無いくらいに愉悦に弧を描いていた。
 くったりとした彼女を抱え、自身の寝室へと運び込んだ彼。壊れ物でも扱うようにゆっくりと彼女を寝台に寝かせてやる。乗せられた寝台がギシリッ、と音を軋ませた。
 ラルの意識は、先程の口付けを引き摺って、まだ朦朧としているようだった。その様子に、彼は嬉しそうに胸を高鳴らせた。
 柔らかに広がる白い肌に手を這わせ、愛しげに上下に滑らせる。誰も触れた事の無い、侵されてはいない深いところに触れ、ヒルメスは熱い息を吐き出した。
 柔らかく太い女性らしい太股に手を這わせると、誘われるように口付ける。内を開き、通常の正常な意識であったなら恥ずかしいと拒絶される行為を、この場でやってのけるヒルメス。己のものである証と見せ付けに赤い痕を付け、印とした。
 次いで、首元を覆う布を払い去り、胸元を開いてやると、まだ穢れを知らない白く純粋な肌が晒け出された。堪らず、その白い肌に吸い付くと、赤い痕を幾つも付けるのだった。


 ――暫くした後に見遣れば、彼女は既に気を失っていた。
 途端に、今日はやり過ぎたか……と、行為を止めた。元々最後まで致す気は無かったが、今まで散々抑え付けて来た理性が爆発し、歯止めが効かなくなってしまっての事であった。
 よくよく眺めてみれば、随分とやらかしたものだった。赤く付けられた痕は、あらゆる箇所に付けられ、付けた相手がどれだけ飢えていたのかが窺える。流石に自分でもやり過ぎたな……と、額に手を当て自嘲するヒルメス。
 愛しげに、その幾つかをなぞり、彼女からの愛を求めた。


 ――翌日、一人目を覚ました彼女は、顔を洗う為に向かった鏡台の前で目眩を起こす事になる。
 身に付けていた衣服は取り払われ、いつの間にか着せられていたのは彼の夜着。大きくその身を隠していたが、下半身は隠し切れておらず、脚が剥き出しの状態になっていた。しかも、かなり雑に着せられたのか、着衣は乱れており、その隙間からは、彼が付けたと思われる赤い印が幾つも見え隠れしていた。それを目の当たりにし、真っ赤に染まらせた顔は、熱で暑くなるくらいに火照ってしまうのだった。
 けれども、気恥ずかしく思うのと同時に、何処か嬉しくも思うラルなのであった。


初出日:2020.06.28
再掲載日:2023.04.02
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