主は現世から帰ってくるといつも香のような匂いを付けて帰ってきた。

 誰か好き人でも出来たのか、其れ以外では全くそんな匂いをさせない主が。
現世に帰っていた時だけ香のような匂いを纏わせてくる。
 俺は其れが非道く不愉快で堪らず、歯軋りを立てる程に疎ましい。

 嗚呼、実に煩わしい感情だ。


執筆日:2021.11.18

【後書き】
いつもはしない筈の匂いが、ある一定の限定下のみするとしたら、鼻が良さそうな彼は敏感に捉えそうだなぁと思いまして。もし自覚無しの“たぬ→さに”状態の時だったならばどうするのか…を前提に踏まえた作品として仕上げました。たぶんじゃなくとも嫉妬しそう(個人談)。
恋愛感情無しにしても、恐らく彼は知らない(奴の)匂いが主に付いていたら指摘してきそうです。
他者に対して完全無関心タイプの個体でない限りは反応してきそう。
ちなみに、冒頭の一文を思い付いた切っ掛けは、仏間に飾ってある仏壇にお参りする為、お線香を上げた時の事でした。
そうでなくとも、毎日お仏壇にお線香を上げるので、仏間にはお線香の匂いが染み付いてますし、匂いの強い物を使用したらば家で過ごしている内に自然と移ってしまうものですよね。
たぶん、ウチの家は、世間一般で言うところの“お爺ちゃん/お婆ちゃん家の匂い”がしそうです。
(住んでる人間からすると意識しなくなるので分からなくなるやつ。)
家族の誰かで煙草を吸っている人が居ると、その家の人から煙草の匂いがする…みたいなのと似た感じの現象ですね。
実は、次作のお話『嗚呼、なんて哀しき匂いだ』と繋がったお話として作りましたので、宜しければ小夜ver.と併せて楽しんで頂ければ幸いなり。
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださった朝谷様には大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。