主は実家から帰ってくるといつも香のような匂いを付けて帰ってきた。

 僕は、その匂いの正体を知っている。
恐らく、仏様に捧げるお線香の匂いだ。
嘗てお坊さんだった人の元に居たから覚えている。
 誰ぞ近親の者を亡くしているんだろう。

 主からお線香の香りがする。
まるで、尾を引くみたいに纏わり付いて。


執筆日:2021.11.18

【後書き】
当作品は、前作となる『刀に不似合いな嫉妬』と繋がったお話となっております。
つまり、二作品を合わせて一つの物語という訳ですね。
冒頭の一文は、同田貫ver.の物とほんの一部変えてお送りしました。
受け取り方・捉え方によってこういうのは変わるもんだよなぁ〜、という思い付きからのバージョン違い、またの言い方を視点違いなお話でした。
同田貫の方では、(自覚無しの)恋情を挟んだ上での流れを組みましたので、お小夜の方ではまた違った感じにしたいと思い、当作品の流れとなりました。
お話の真実は、後者であるお小夜の方が正しいです(つまりNO恋人というオチ)。
要は、実家に帰ったらいつも線香焚くからその匂いが移ってただけ、という事だったのです。
お線香を焚くのは、お墓や仏壇の仏様に対する供養の為の行為…そこから着想し、お線香の匂いがする=亡くなった人を弔い供養しているのだという考えに至った、そんな感じの流れです。
故のタイトルですね。
誰か身内の者が亡くなっていない限り、仏壇ともお線香の匂いとも縁は無いでしょうから。
このお話でのお小夜ならこう感じるかな、として書きました。
同田貫ver.と併せて楽しんで頂ければ幸いなり。
後書きを締め括るにあたりまして、素敵な企画を用意してくださった朝谷様には大変感謝致します。
この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。
この度は、素晴らしき企画にて私の稚作な作品を並べてくださり、誠に有難うございました。