模倣か、擬態か、或いはその何方共か
夜も深い深夜の頃だ。たぶん、時間的に言えば、丑三つ時の刻だろう。時計を確認してはいなかったので、当てずっぽうの感覚で推測した時間帯だが、恐らくはそう遠くもない回答となるだろう。
ふと目覚めた審神者は、徐ろに布団へと横たえていた身を起こした。そして、警戒した様子で枕元に安置していた眼鏡を掛けるなり、床の間の刀掛けに置いてあった刀を手に取った。
鯉口は切らず、一先ず布団から抜け出るなり警戒した姿勢は崩さず、執務室とを仕切る襖を隙間程のみ開き、其処へ鞘に納めたままの刀を挿し込み、隣室の執務室内の様子を窺う。何も無いと確認すると、用心するように襖へ背中を付けた状態で隙間程開けた先へ体を滑り込ませた。
執務室へ移動してからも、暫くクリアリングを気にした風に背中は襖へと付けられたままだ。刀を握っていない反対の片手で静かに開けた襖を閉め、緊張から浅くなりがちになる呼吸を意図的に深く意識し、覚悟を決めて一度瞑目したのちに廊下とを隔てる障子戸の方を見遣った。
すれば、何という事か。何者かの影が其処には在った。けれど、障子という仕切りが邪魔になって入って来れないらしい。真っ黒い影は、ゆらゆらとその身を揺らしながら、聞き覚えのある声を発した。
「――主人、俺だよ。居れてくれないか?」
まるで酩酊でもしているかのように右に左にふらりふらりと揺れる影は、存外はっきりとした口調で審神者の存在を呼ばう。けれども、審神者はその場から動かず、益々警戒心を露わにし、ぶわりと殺気すらその身から立ち上らせて障子戸の先を凝視した。
応えてくれる声が返ってこなかったからか、影はピタリ揺らぐのをやめて、障子戸へべたり手を付いて再び口を開く。
「――なあ、主人や。開けておくれ。俺だよ、主人の可愛い、アンタの愛刀だ。中へ居れておくれ。外は寒くて冷えるんだ。このままでは風邪を引いてしまうよ」
妙に甘さを含んだ声だった。尚も、審神者は無言を貫き通す。しかし、その手は確かに柄へと触れていて、今にも鯉口を切らんとする如き体勢で構えていた。
また少しの間が空き、期待する審神者からの返事が無い事を理解すると、影はガタガタと障子戸を揺らし始めて催促を強める。
「――なあ、主人よ。開けておくれ。俺の声が聞こえているだろう? 返事を返しておくれ。其処に居るのは分かっているんだ。さあ、一言“良いよ”と言っておくれよ。そしたら、愛しいアンタの側へ行ってやろう。だから、なあ。お願いだから、此処を開けて、中へ居れておくれ。外は寒くて仕方ないんだ。なあ、なあ、主人、なあ、なあ、なぁぁあ……っ」
不気味に間延びした声が、審神者の存在を呼ばう。けれど、審神者は決して口を開かなかった。代わりに、静かに鯉口を切り、鞘から抜いた刀身の切っ先へ懐から取り出した御札を突き刺す。そうして、簡易的法具を作り上げると、見開いた黒い目を金色に煌めかせながら瞳孔を縦に裂き、一度腰を落として刀を構えると、刺突する構えで一息に障子の向かい側を目指して突き刺した。障子の紙越しに突き出された刃は、切っ先に御札を刺したまま真っ黒い影へと刺さった。忽ち、障子戸を挟んだ外側で筆舌に尽くし難い、耳を劈くような耳障りな断末魔の声が寝起きの耳を衝いた。煩わしい事この上ない。
審神者は鋭く眇めた目で刀で突いた先を睨み、喉奥から絞り出したような低音で唸る。
「似ても似つかんレベルだな……。そんなレベルでよくもこの俺をだまくらかそうと考えたものだ。
いつの間にか聞こえなくなっていた声に、消えたか、もしくは死んだかと判断した審神者は、障子越しに突き出していた刀をそろり引き抜いた。そして、切っ先に突き刺した御札を見遣ると、白かった筈の紙面の肌が真っ黒に変色し切っているのを認める。素手で触る事は流石に憚られると考えた審神者は、仕事中に使う用で執務室に放置していた手袋を手に取るなり両手へ嵌めて、切っ先の御札を慎重な手付きで外した。刀その物は、この後すぐに手入れがてら浄化作業を行えば済むだろうか。咄嗟の判断で選び取った方法だったが、丸腰で無謀にも挑むよりは余っ程マシな判断だっただろう。
一先ず、抜き身のままであった刀を払ったのちに納刀し、危ないからと一旦鞘へと仕舞った。それから、手袋越しに触れる使用済みの御札の処理をしようと、明かりも付けぬままの室内をあっちへこっちへと移動しながら安全に保管出来るようにする。御札の正式な後処理については、夜が明けた朝にでも御神刀辺りへ相談してみよう。穴の空いてしまった障子の修理についても、同じく朝になってからだ。
念には念を入れて、一応の確認の為にと警戒を解かずのまま隙間程開いた障子の先を上下左右確認するも、何も居ないし何も無いようである。落ち着いて静かに障子を閉め、ホッと息を
粗方の後処理が終わるなり、閉め切っていた襖を先程よりも気持ち広めに開きながら寝室内へと体を滑り込ませ、自身の身体全てが室内へ入り切ると静かに開けた襖を閉めた。そのまま、布団を横切り、床の間の刀掛けにまで刀を戻そうとしていれば。もぞりと審神者の布団の中で安穏とした眠りに就いていた塊が身動ぎ、布団の中から少しだけ身を起こして審神者の背中へと声をかける者がひとり。
「ん゙ん゙……っ、こんな夜更けに何してたんだアンタ……?」
今の今まで何も気付かずに眠っていたのだろう、布団から出した顔は眠たげな様子で、寝る時に下ろした艷やかな長い髪が寝癖で
先程の警戒で少しばかり疲れたのだろう。無駄に張り詰め尖らせていた神経を緩め、甘えるように抱き込んだ彼の頭へと擦り寄る仕草を見せた。次いで、めいっぱいに息を吸い込み、彼の匂いで肺腑を満たした。猫吸いならぬ刀吸い……もしくは、孫六吸いか。猫吸いされる猫の気持ちを如実に理解した孫六は、寝起きながらもぞわりと据わりの悪い感覚を覚えて、その身を起こそうと審神者の腕を退ける。其れを大人しく受け入れ、男が布団から体を起こすのを見守ると、ゆっくりと焦点を合わせた。
「つい今しがたの事だったか……アンタの殺気を感じて、目が覚めた」
「すまん……起こすつもりはなかったんだが、起こしちまったか」
「用心棒としての警護がてらアンタと一緒に寝ているんだ、アンタが何かしらで起きれば
「何て言えば良いか分からんから、凄く個人的な感想から抱いた感覚で申す事を許して欲しいと前置きしておく……」
「あぁ……其れで? 何を斬ったって……?」
「えっと……端的に述べて、怪異の類かと……」
殺気を放つ程の警戒心を以て当たったからだろう。すっかり目が冴えてしまって、一種の興奮状態にすら陥っているのだろう審神者の両目は爛々と見開かれていて、何なら瞳孔もガッツリかっぴらかれている様子だった。まるで一つの戦闘でも終えたかのような居住まいに、孫六は寝起きさながらの顔を顰めて眉根を寄せる。
「主人一人だけで対処したのか……?」
「わざわざ寝ている君を起こすのも忍びないと思ってね。俺の方は、妙な気配が部屋に近付いて来ているのを察知して自然と目が覚めたんで、そのまま対応したに過ぎん」
「まるで獣みたいな察知能力だな……っ。五感が研ぎ澄まされているという意味では、ただの人間より余っ程審神者らしいと思うが……アンタの其れはただの人間にしては過ぎたものだろう? 何で俺を起こさなかった?」
「だって……君、俺の側だからかやたら安心し切った顔で寝てるんだもの……。そんな状態で気持ち良くスヤスヤ眠ってる君を変に起こすのも気が引けるだろう。推しの安眠は守る。其れが審神者である俺の使命でもある」
「アンタの抱く変な理屈はこの際どうでも良いんだよ……。怪異なんて化け物の類が何で本丸なんかで遭遇するのかは不明としてもだ。アンタ一人で対処するんじゃない。何か遭ってからじゃ遅いんだぞ? いい加減、その辺の自覚を改めてくれ……っ」
「へい……すんませんっした……」
しょも……っ、と明らかにしょげる様子を見せた審神者へ、一人で懸命に対処し切った事への賞賛として、孫六は彼女と額を突き合わせるような形を取って改めて口を開く。額を突き合わせるついでに、その後に邪魔になるであろう眼鏡はするりと自然な手付きで以て外され、枕元傍らへと安置された。
「一人で対処したのは悪かったが……殺気の質自体は悪くなかったぞ。標的を射抜かんと鋭く研ぎ澄まされた殺気は見事なものだった。いつか、手合せ願いたく思ったくらいに良い殺気だったよ。そんな殺気で全身を漲らせたアンタの姿を拝めなかった事は心惜しいが……まぁ、其れはまたの機会が訪れれば自ずと見る事が叶うだろう。今度は、その姿をこの目に焼き付けさせてくれよ……?」
「ふふっ……物好きな奴だね。俺の殺気を察して喜ぶだなんて、余っ程の奴じゃないか」
「そりゃあ、俺は主人に首ったけなんでね」
「おやまぁ。随分と嬉しい事を言ってくれる……っ」
クツリ、喉奥を鳴らして微笑を零した審神者の頭を掻き抱くように引き寄せてきた手に、素直に応じて受け入れれば、審神者の唇を男の乾いた薄い唇が掻っ攫った。そのまま、あわいを重ね合わせるように軽く啄んで、くちゅり、小さな水音を立てて息の継ぎ目を作る如く離される。その僅かな隙にゆるりと口を開いた審神者は、幾らか欲の照る浅葱の二ツ目を見つめ返して問うた。
「
「うん……? 別に、アンタに直接振るってもらえる分には気分が良いから、その点は全く気にしていないが……俺を振るうにはアンタの細腕は向かず重かったろう。手首を痛めたりなどはしていないな……?」
「うん、その点は大丈夫でした。振るったって言っても、一瞬の事だし。ぶっちゃけ、振り回したり薙ぎ払ったりというより、一点を狙い定めて突いただけだから……。刺突といった感じのがしっくり来るかね」
「ほぉん……? 俺の知らないところで何やら要らぬ知識を増やしたみたいだが、アンタは大人しく審神者として本丸の大将という枠に収まっているだけで良いんだぞ……? そういう手合いの事柄は俺達の専門だ。主人自らが赴くまでもないと覚えてくれ」
「でも、体が無意識に反応して動くんだから、そうも言ってられんのよなぁ……っ。元々、怪異とかの類は君よりも俺のがよく知っているし、対処法も知り得ているからなぁ……俺が対処した方が早い」
「其処を堪えて一度俺に任せるくらいの余裕を持ってくれと言っているんだよ。……ったく、用心棒を撒いてどうする? 一人で勝手な行動をするなとあれ程言い聞かせた筈なんだが……その点についてはまた後程。今回みたいな手合いの被害に遭った事は……?」
真面目な色を乗せて問われた言葉に、審神者はキュウ……ッ、と目を細めながら呟くように落とした。
「職業柄、あの手の手合いとは何かと渡り合うものだとして、怪異に対する備えは整えていたが……ぶっちゃけ、こんなにもはっきりとした形で目に視えて分かりやすいケースは初めてだな……。今まで意識しなかったからなのかもしれんが、どうもここ最近怪異やら何やらの妙な気配に敏感になってる気がする……。確信が持てないから、何とも言えんのだが……万屋街での襲撃以来、あらゆる感覚が鋭利になってる気がして否めん……っ。ただの杞憂に過ぎれば、其れで済むんだが……」
「……神気を用いての力の行使で、審神者としての真の能力が開花及び覚醒したのか…………何方にせよ、アンタには相応しくない力に変わりはないな。主人一人で全部片付けようとするところが、些か気に食わん」
「ぁ、んンむッ……、」
男が拗ねた風に半目に浅葱の目を据わらせるなり、言い訳がましく言葉を募ろうとした審神者を咎めるように口付けで唇を塞いだ。その後、少しばかり言葉を奪うみたいに深めの口付けを施して、審神者の余裕を奪っていく。そうして、カクリと力の抜けた審神者に満足して唇を解放すると、ふにゃりと顔を蕩けさせた審神者を布団へと組み敷いて攻守逆転を意識した男は愉悦に笑んだ。
「さっきの話に戻すが……アンタ、俺を振るいながら退治した怪異に向かって何言かを喋っていただろう? 何て言っていたんだ……?」
漆黒の髪が顔の周りへ落ちてきて、瞬く間に艷やかな黒髪のカーテンが出来上がった。手遊びにその一房を掬い取りながら、審神者は少しばかり落ち着いた呼吸で言葉を紡ぐ。
「君の姿を……声を真似て、“部屋に入れろ”と
「嘘だな。もっと違う事を言っていただろう? はっきりと全てが聞こえてきた訳ではないが、俺がどうのという事を言っていただろう……? 其れをもう一度言って欲しい」
「えぇ……? 大した事は何も言ってないと思うんだが……」
「俺がアンタの口から面と向かって直接聞きたいんだよ、主人」
先程耳にした声よりも、ずっとずぅっと甘やかな響きの含んだ其れは、審神者の脳髄を侵すような力を持っていた。どろりと内側をも侵蝕するその声に唆された訳ではないが、やけに立ってしまった神経を落ち着けるには丁度良い。フッ、と笑みを漏らして体の力を抜いた審神者は両の目を伏せて降参した。ゆるり、一度閉じた目蓋を開くと、黒き二ツ目に金色の煌めきをゆらゆらと散りばめさせながら告げる。
「――
「主人の物だとはっきり音に乗せて言ってもらえたんだ。此れ以上に嬉しい事は無かろうよ……?」
「ははっ……成程、そういう事だったか。漸く君の意図が読めたよ」
「アンタは大概鈍ちんだからなぁ……直接口で言わねば分かるまい?」
「確かに……察しが悪い俺的には、今みたくきちんと言葉にして言われて初めて意味が伝わったかな」
「なら、我が儘ついでにもう一つ乞うとするならば……あまり他の刀の力を行使しないでもらいたいねぇ。アンタを真に染めるは俺
「ぁ゙ー…………もしかして、無意識に使っちゃってたかな……。其れだけ本気で神経尖らせてた、って事の表れでもあるんだろうけど……っ。孫六さん的には気に食わなかったよな……すまん」
「要らぬ悋気を抱いた自覚はあるが、アンタの
「ぅ゙、ふ、ァ……ッ、」
がぶり、喉元へ喰らい付く勢いで噛み付かれ、思わず呻きが漏れ出たが、すぐにその声音に甘い音が交じるのを耳にした。そのまま、孫六は審神者の首元を舌で擽り、煽られた苛虐心に従って少しの独占欲を見せ、審神者の反らした真白の喉元へ赤い花を咲かせる。その痕をまた唇でなぞってしっかりと己の証を刻み付ける如く紋を浮かばせた。しかし、其れだけでは満足出来なかったのだろう、孫六は首元から顔を上げて告げる。
「此れだけじゃ足りないな……。もっと、俺色に染め上げたい」
「こんなにも分かりやすく見えやすい処に痕を付けておいて、まだ満足行かないと……?」
「足りないんだよ。こんな痕くらいで満足出来る程、俺の気持ちは器に収まっちゃいない。なあ、その瞳の色を染め変えても良いか? 俺の色で上書きしたいんだ。良いだろう? なあ」
先の怪異よりももっと甘く粘着質な響きを持った言葉が、審神者の脳髄を揺さ振る。此れに、一瞬だけ息を詰めてゾクリと沸き立つ感情に胸を震わせて抱いた感想を吐き出した。
「ッ――、全く飛んだ刀に惚れ込まれたもんだな……っ。こんなにも分かりやすく執着心を見せ付けて来るんだから…………一周回っていっそ愉快ですらある」
「今の返事は、俺の問へ肯定の意味で是と頷いたという風に解釈するが……良いんだな?」
「良いよ。君の好きなように染めてご覧」
「じゃあ、有難く」
審神者が彼の言葉に首肯を示した途端、男は審神者の口元を擽るように触れて下唇を開くようにクッ、と下へ力を入れる。
「俺の言う通りに口を開いて、舌を出してくれ」
「ん……」
「フッ……イイ子だ。従順な様が意地らしくて堪らないな……っ。そのまま、ゆっくりと俺の舌と絡めて行くから、息継ぎは鼻で意識して行うようにな」
言われた通りに赤い舌を突き出すように差し出せば、甘い果実でもしゃぶるように喰らい付いてきた男が唇を使いつつ食む。ゆっくりねっとりと交わされる舌を用いての口付けは、ただの口付けよりも一層淫靡で鎮まりかけていた興奮を昂らせるに十分な要素であった。
男の成す事に付いて行こうと、健気に男の舌へ己の舌を絡め付かせながら、必死に鼻での息継ぎを行う。其れでも慣れない内はまだまだ未熟で、満足の行く息継ぎが出来ないで居る。その内、はくはくと浅い呼吸しか出来ずに苦しげに男へと縋る。其れを愉悦に満ちた二ツ目で余す事無く見下ろし、更に追い詰めんとして唇同士を深く重ね合わせて息さえ奪わんと口付けた。
最後は仕上げに、唇を離してやってから、審神者の口内へとたっぷり移してやった神気混じりの唾液を飲み込むように指示した。
「一滴すら残さず全部飲み込めよ」
「ん゙ッ……」
ゴクン、審神者の喉仏が嚥下したのを確認して、男はうっそりと笑った。最早、雄として審神者へ欲情している事を隠しもしなかった。審神者も、素直に彼の言うままに従って口内に溜まっていた唾液全てを飲み込んだ。ぱちり、瞬きをした審神者の二ツ目に、浅葱色が混じり行くのを見届けて、より一層はっきり自分の色を移してやる為に、男は審神者の眉間の辺りへ意図して口付ける。すれば、じわりじわりと色を変えた審神者の瞳は、男の二ツ目と揃いの色へ染まった。その色を見て、漸く満足した男は、満足気に喉を鳴らして審神者の額へと擦り寄る。
「ははッ……! やはり、自分の色に染め上げるという行為は堪らなく気持ちが良いな……!」
「そりゃ良う御座んした。ところで……空気ぶち壊すような事を訊いて申し訳ないが、何処か体に不調や違和感を感じたりはするかい? 斬ったのは刀身その物であるとは言え、意識を繋ぐ人の身の方にも影響が出らんとも限らん。もし、僅かでも変な違和感や気持ち悪さ等を感じるようなら、今すぐ浄化作業も兼ねた手入れを行うが……」
「心配してくれるのは有難いが、今のところは何ともないからそう気にしなくとも大丈夫だぞ。さっきの事で本体と共有したのは飽く迄も斬ったという感覚のみで、其れ以外はただアンタの手に握られ振るわれたという事実を知るだけだ。心配には及ばないよ。
意地悪く笑った孫六が、組み敷く審神者の寝間着を乱し、その下に隠された白磁のような肌を露わにせんと曲線を帯びる体のラインをなぞった。其れに少しばかり戸惑いを覚えた審神者は、今以上の行為をまだ続ける気かと咎める風な視線を投げる。しかし、その視線を物ともせず、寧ろ焚き付けられたかのように笑みを深めた彼が漆黒の髪のカーテンで審神者の視界を覆いながら宣告した。
「――今宵は寝かさないから、そのつもりで」
「ぇ゙ッ……嘘でしょ……??」
「ふふっ、こんな事でつまらん嘘なぞ
その後、本番までは致さなかったものの、本当に朝方近く空が白み始める頃迄寝かせてもらえなかった審神者は、無意識にも力を行使した事も相俟ってすっかり寝不足の疲労困憊状態に陥るのだった。反対に、審神者へ好き放題施せた孫六は心無しかホクホクとした顔付きで上機嫌そうに鼻歌さえ口ずさんでいた。
尚、寝不足の疲労困憊状態ながらも、大事な事だからと自分が遣るべき仕事を忘れなかった審神者は、
▼以下、キスされた場所による意味を解説。
喉:喉へのキスは、首・首筋への意味と似ていて、支配欲など『欲求』の表れだそう。『離したくない』、『誰にも取られたくない』という心理が隠されているのでしょう。独占欲の強い人や、愛情深い人に多く見られる行為なのかもしれませんね。(※尚、作中においても全くその通りなテイストで表現致しました。独占欲もとい毒占欲、嫉妬剥き出しに迫られる事は、シチュエーションとしても大変美味しいものです。漏れ無く我々の業界ではご褒美ですね……!(hshs))
公開日:2023.12.11