はだかエプロン☆




「姉上っ!只今、参r」
「去りなさい。」



どこか天然で突拍子もない事を考える、三姉弟の末っ子・テオドア。


ベルベットルームの案内人の一人であり、篠原夢衣をお客人とする者、なのだが…。



『〜〜〜…♪、うわぁああっ!!?』

「あっ、夢衣様…!丁度良かった。今、貴方に話したいと思っていた事が…っ。」

『どどどどっ、どしたのテオ…!!?何その格好!?』

「えぇ、ですから、この事でして…。」

『いやいやいや、ちょ…っ、待て待て待てや!!何があったよ!?何の罰ゲームだよ…!!?』



誰がどう考えても、今の光景に驚かない人はいないだろう。


何故ならば、あのイケメン・ハンサムなテオドアが…。


“裸にエプロン♪”な状態で居たからだっ!



「えっ、えと…。と、とりあえず、夢衣さん、落ち着いて下さい…っ。」

『ムリだろ…!?てか、何で裸エプロンなの!?いつもの服はどうしたよ!!』

「その事なのですが…。オホンッ。それでは、今から、先程までの姉上についての事を説明致しますね。」

『その前に何か着てくれ。』



さすがの夢衣も女の子…。


男性のほぼ全裸(エプロンで隠れてはいるが)を見るのは、刺激的かつ恥ずかしいので、自分の上着を渡し、半強制的に着用させた。



「えっと、ですね…。最近、姉上に呼ばれた時、とても急いで行くのですが…どうしても、2、3秒遅いと言われてしまうのです。私は、頑張って、己の出せる全速力を出して、急いで姉上の元へ駆けつけているつもりなのです。ですが…何故かいつも上手くいかず、遅くなってしまうのです…。」



目の前で普通通りに話すテオドアは、少ししょんぼりとして言うが…普通通りに話しかけられている相手の夢衣からしたら、どうしても彼の格好に目がいってしまい、気が気でない。



「もっと早く姉上の元へ着くにはどうしたら良いかと考えた結果、空気抵抗を減らせば良いのだと思いついたのですっ!」

『…うん。………で?』

「どのような服装になれば、いつもより空気抵抗を減らせるか…。色々と考えましたが、このエプロンを取ってしまったら、私のアイデンティティーが無くなってしまいますし、何より…姉上に怒られてしまう気がしたので。服を脱いだら質量的に軽くなるだろうと思い、エプロンだけを身に付ける事にしたのです。」

『……そう、そうか…。そうだったのね……。』



平気で語ったテオドアに頭痛を覚え、額に手を当てる夢衣。


心なしか、溜め息が漏れている。



『…テオ。』

「はい、何でしょう?」

『それで…たった今、その格好でエリザベスの元に行き、追い返されたと。そういう事か…?』

「そうなんですよぉ…。まさに、即答の返却です。」



「はぁ…。」と溜め息を吐くテオドアであるが、彼女としては、「むしろこっちが吐きたいところなんだけどな…。」と内心で独りごちた。



『あのな、テオ…。どう考えても、“ソレ”はマズイと思うぞ…?』


「ぇえっ!そうなんですか…!?」

『いや、どっからどー見てもそうだろぉ!?裸エプロンだよ…!?おにゃの子ならまだしも、男だよ…!!?』

「はっ、裸エp…ッ!?だ、駄目です!いけませんっ、夢衣さんがそのような言葉を口にしては…っ!」

『だったらそんな格好すんなよッッッ!!!!』



変なところでボケるテオドア。


これが素だから、尚更タチが悪い…。



『普通ならエプロンの方を脱ぐだろ!?走る時ヒラヒラ広がって邪魔になるし、どう考えてもズボンの方が走りやすいでしょ…!!』

「いえ…こちらの方が軽くて動きやs」

『目のやり場に困るでしょうがぁっ!!』



最終的には彼女が叱り付ける状態に…。



『此処は、男ならず、俺以外の女の子も居んだよ!しかも、テオの天然無自覚行動に免疫無し!!気を配りなさい…っ!!俺はまだ平気だけど、場合によっちゃぶっ飛ばされてるからな!?今の格好で会ってた相手が、エリザベスじゃなくて、マーガレットさんだったらどうすんの…!?殺されてるぞドアホッッッ!!!』

「あ、姉上に殺され……っ!!?す、すすすすみませんっっっ!!」

『ついでに言うけど…。その格好してる時点で、お前、男のプライド捨てちゃってるからな!?』

「ええっ!?わ、私はまだ捨てておりませんよ…!?」

『なら、今すぐソッコー着替える!!』

「はっ、はい…!!」

『一応言っとくが…俺もおにゃの子なんだから、目のやり場に困ってんだよ!!どこ見りゃ良いんだよ!?はよ着替えて来い…っ!!!』

「は…っ!も、申し訳ございませんっっっ!!夢衣様のお気持ちも知らず、こんな姿をお見せして…っ!!」

『良いから、早よ行けっっっ!!!!』

「はいぃぃぃぃ…っっっ!!」



全力で思い切り叫んだ彼女の顔は、既に真っ赤に染まっていて、漸く走って去って行ったテオドアを見送り(足元のみ見て)、肩に入っていた力を抜く。


彼が居なくなった途端、緊張していたのか、全身から変な汗がドッと出てきて、内心物凄く呆れていた。



『はぁ〜…、疲れたぁ………。』



その後、ちゃんといつもの格好である青いベルボーイ服に戻ったテオドアが、先程借りた上着を返しに来たという。


ちなみに、さらにその後日、今回の件が回り回って知れたのか。


例の“裸エプロン☆”を見せられたエリザベス本人とその姉マーガレットからフルボッコにされたらしい…。


ドン☆マイ



END

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