寒空に風 | |
『うひぃ〜っ!今日寒いね〜、ちょい寒いおぅ〜。』 「っスねー。秋真っ盛りってとこっスか…?もうすぐ冬も来るし、色々準備しなきゃっスね。」 秋も盛り時の季節。 空は高く蒼いが、吹き付けてくる風は冷たい。 ―お日様が恋しいぜ…。 朝と夜は、随分と冷え、毛布が手放せない。 むしろ、布団から出たくなくなりそうだ。 まぁ…、少し気が早いかもしれないが。 『あーっ!なんか寒い!ひやひやする…!』 「寒気でもするんスか?風邪引いてません?」 可愛い俺の嫁な後輩、巽完二が、自分より低い位置にある私の顔を心配そうに見てきた。 『正直言ったら、既に風邪っぴきネ!』 「…って、んなコト堂々と言われても、どうすりゃいいんスか…。」 あぁ…、人肌恋しい季節。 カップル共が街でひしめき、身を寄せあってイチャコラ…。 TPO弁えずになぁ、うざってぇよ、おい。 退けよ、邪魔だ、通せリア充。 爆発しろ、けっ。← 内心カップルに対して、辛辣な言葉を浴びせつつ、寒さに縮こまる。 『完二…。寒くないのか、お前?』 「え…別に…。夢衣先輩程じゃねぇっスから。」 『男の子は強しネ…あぅ。おにゃの子は弱いおぅ…。』 そんな感じで駄弁っていると、さすがに反応してか、鼻がむずむずしてきて…。 『へくちん…っ!』 「ぉわっ!何スか今のくしゃみ…。」 『…、っくち!うににぃ〜…変で悪かったなぁ…。』 思わず二回と連発してしまい、気まずげに顔を逸らした。 『そろそろマフラーとかしなきゃダメかな…?』 「そんなに寒いんスか?」 『ふん。』 「うん。」と言うつもりが、鼻声で詰まって変に発言してしまった。 「……先輩、可愛いっスね…。」 『どこが…!?』 鼻の赤くなってしまった顔ですんすんっとしながらの状況を、どう受け取ればそうなるんだ!? 少し照れたように目を逸らしながら言う完二は、見ててイジりたくなるところだが、今はよそう…。 「そんなに寒いなら、もっとひっつきゃ良いんじゃないスか?」 『へ……?ひっ、つく…?』 まさかの発言に内心焦る夢衣。 いや、こっちは嬉しいけどさ…うん。 君、男の子だけど…、そこんとこは良いのか? 男らしくも、自分の方から引き寄せた完二にどぎまぎしながらも、体温に触れて大人しくする。 ―しかし…、この状況は、どうにも…。 『…何か、恥ずいんだが。』 「先輩、顔赤いっすよ。」 『恥ずいからだよ…!お前こそ、赤くなってんじゃないか!』 「…ぅ…っ。だ、だって、先輩があまりにも寒そうだったから…。ここは、男らしく、何かやった方が良いと思って…っ。」 しどろもどろに答える完二と、ぴったりとくっついた状態な今。 ヘタしたら、心臓の音が聴こえそうだな…と、思ってしまった自分に、「あーぁ、やっぱおにゃの子思考だぁー…。」と嘆くのだった。 ―後日。 完二から、何やらプレゼントを渡された。 『ん…?マフラーだ。あれ…?コレ、長くね……?』 びろーん…っ、と両手で引っ張り出していると、完二が自らの手を伸ばし、私の持っている片端を掴んだ。 「その…この間の事とか、色々考えて…。俺とも巻けるように作ったんスけど……っ。」 照れくさそうにする完二をきょとん顔で見やった。 内心で、「何なんだ、コイツ…。可愛すぎか…っっっ!!」と悶えていたのは内緒である。 『手編みかぁ〜…。あったくて良いね!ありがとう完二っ!!』 「…っうす。」 完二の愛情込もったロングマフラーを二人で巻いて、これから来るであろう冬を乗り切ろうと思う。 完二可愛い…っ! END おまけ↓ 「結局はリア充じゃね…?」 「く…っ!完二の奴…!俺だって、夢衣と絡みたいのに……っっっ!!」 「先生ェ…、めっさ本音漏れてるクマァー…。」 二人と一匹(?)の男達は、寂しくも壁にへばり付いて、二人の様子を離れた所から眺めていたのだとさ。 終われ。 top |