変わり者


ヒソカは、本当に変わり者だ。

物好きだし、付き纏うし、ストーカーはしてくるし。

奴は、異世界からトリップしてきた異世界の住人。

所謂、“逆トリ”というヤツである。

一見、ただのイケてる変質者と思われがちだが…奴は、単なる頭のイカれた狂った殺人鬼なのだ。

おまけに、道化師(ピエロ)だし、変態ときた。

ある日、突然、私の目の前に現れ倒れたから、仕方なしに拾って手当てしてみたら…懐かれてしまった。

それ以降、何故か、彼からしたら異世界の住人である私に付き纏うようになったのである。

ただそれだけなら、まだマシだったのかもしれない…。


「ねぇ、リア…?」
『…何。』
「ちょっとはボクに構ってくれないカナ…?」
『断る。つか、寄るな。うざい。』


擦り寄るように無断で抱き付いてきたかと思えば、腰に腕を回すわ、耳元で囁くわ…かなりめんどい。

そう、コイツは、放っておけば過剰なまでのスキンシップを謀ろうとしてくるのだった。


「ん〜、連れないなァ…。ボク達の仲だろう?」
『どんな仲だよ。アンタとは何もしてないぞ。』
「んも〜。直接言わせる気かい…?リアったら、ウブなんだから。」
『言わせるも何も、特に何もしてねぇよ。』
「フフフ…ッ、照れちゃって。あぁ、可愛い♪」
『うざい。死ねっ。』


口を開けば、碌な言葉が飛んでこないから、度を過ぎる前にいつもの如くぶん殴っておく。

だが、この変態はサドかと思いきや、かなりのマゾ野郎で悦んでいる。


「ああっ、イイね…!もっとだよ、リア…ッ!!」
『マジキメェから止めてくんないかな…?吐くよ?』
「うーん…それは、ちょっと服が汚れちゃうから困るなァ…。」
『だったら、この腕退けろよ。』
「やだ。この温もりが丁度良いんだ。」
『アンタ、殺人鬼だろ…。』
「でも、そんなボクを知ってて、家にまで連れ帰って手当てしてくれたのは、キミだろう…?」


彼が言う通り、私は知ってて、摩訶不思議な現実離れした現実を受け入れ、家へと招き入れた。

その後、ちゃんと追い出したんだけど…よく分からない内に気に入られてしまったようで、現在に至る。


『まぁ…確かに、私はアンタを拾いましたが。その後、即捨てた筈なんだが…?』
「うん。確実に、家の外にポイされたネ。」
『うん。そうなんです。なのに、何故お前はまだウチに居座ってるんだ?ぁ゙あ゙…?』
「コワイコワイ。口調が素に戻ってるよ?リア。」
『誰のせいだ、誰の。』
「ボクのせいだよね。」
『分かってんだったら、さっさとこの状況どうにかしなさい…っ!』
「ハグしたら駄目なのかい…?」


ソファーに腰掛けて、のんびり読書でも勤しもうとしていたら、これだ。

横に滑り込んできたらきたで、勝手に抱き付いてきた。

そして、話している間に身体の位置を変えられて、彼の胸を背に後ろから抱き込まれているのだった。

距離が異常に近いせいで、彼の香水の匂いや彼自身の匂いが鼻について、変な気分になる。

顰めっ面で愚痴を漏らしていると、彼の赤い髪が頬に当たってむず痒くなった。


「抱き心地が良いんだ。」
『サイズが小っさいって言いてぇんだろ。』
「丁度良いサイズなんだよ♪だって、ホラ。ボクの腕の中にすっぽりじゃないか。」
『……どうでも良いが、近い。』
「照れるなよ、本当は嬉しい癖に…っ。」
『さっきから擽ったいんだよ!あと、さりげなく匂いを嗅ぐな!変態…っ!!』
「ククク…ッ、素直じゃないネ。」


くんくん、と犬みたいに人の匂いを嗅いでいたピエロに肘打ちを食らわすも、大して効いていないのは目に見えて分かる。

それでも、攻撃の手を止めようとしない私を見ると、至極嬉しそうに笑み、私の手首を封じた。


「本当は嫌じゃ無いんだろう…?完全に拒まないから。ボクの声、好きなんだろ?前、落ち着くって言ってたもんね。」
『うん。声フェチなのは認める。…が、お前のボイスで落ち着く事は一切無い。』
「ンフッ♪セクシーボイスってやつだからかい?嬉しいなァ、キミにそんな風に思ってもらえてるだなんて。」
『まぁ、筋肉は凄いもんな。完璧な身体付きしてるし。』
「ボディーまで褒めてくれるんだ。もしかして惚れたかい?」
『バランスの取れた体躯と素顔のイケメン差は褒めてやる。』
「う〜ん…キミって意外と面食い…?」
『イル兄やクロロもイケメンな部類だよね。一部、残念な中身してるけど。』
「ねぇ、ボクと二人っきりなのに、他の男の名前出すなよ。」


ふてくされた彼は少し低めの声でそう言うと、私の身体を反転させ向かい合わせに座らせた。

そして、顎を掴むと、徐に上向かせ、獲物を見つめる目で此方を見た。


「キミはボクのだ。他の奴にはやらない。」
『何時、私がお前の所有物になったんだ…。』
「キミが、あの日ボクを拾ってくれた日からだよ、リア。」


まるで、独占欲の強い子供のように擦り寄る彼は、大概変わり者だ。

じゃれるような啄む程度の軽い口付けを施されると、私は黙って事の成り行きを見守る。

ただし、調子に乗らせるとタダじゃ済まないので、ある程度許したら制裁を加えておく。


『こらっ。何処に手ェ突っ込んで触ってんだ。』
「キミのズボンの中、細い腰。」
『今すぐ止めねぇとぶっ殺すよ?』
「おぉ、コワイコワイ…。」


執筆日:2016.08.10