うたた寝
ふと、ソファーの前を通り過ぎようとして、ゴンがそこでうたた寝してしまっているのに気付いた。
十二歳という幼さに加え、まだまだ子供な寝顔にあどけなさを感じ、つい笑みが零れてしまった。
含み笑いを隠しつつ、何となく寝顔を眺めていた。
最初こそ、「このまま何も掛けないままでは風邪を引いてしまうかな…?」などと考え、一度は部屋に置いてあるブランケットを取りに行こうかと思った。
しかし、眺めている内に、好奇心と悪戯心が疼き出し、起こさないようにそっと近寄る。
静かに寝息を立てる彼の顔に近付き、触れる程度の口付けを落とした。
そっと顔を離してから、次第に恥ずかしさと何かイケナイ事をした罪悪感が湧き、彼とは反対側の肘掛けに頭を項垂れた。
―年下を、しかも寝込みを襲うみたいな事しちゃったよ…。
やらかしてから、悶々と考え出すリア。
そこへ目を覚ましたゴンが声をかけた。
「あれ…俺、寝ちゃってた?」
寝惚け眼を擦りながら、身を起こすゴン。
一瞬、「もしかして起こしちゃった…!?」と焦った彼女は身を固まらせたが…どうやら、そうではないらしい。
取り敢えず、何事も無かったかのように装うリア。
寝起きのゴンは、きょとんとした様子でそれを見やる。
『ぐっすり寝てたねぇ。』
「うん。ご飯食べた後、眠くなっちゃって。俺、どのくらい寝てた…?」
『私が見てた限りでは、三十分は軽く寝てたんじゃない?ゴンが、いつから寝てたか見てないから、正確なのは分かんないけど…。』
「う〜ん…。確か、眠くなってきた時に見た時間が十四時くらいだったから…一時間くらいかな?結構寝ちゃってたんだなぁ〜。」
『まぁ、ゴンはまだまだ育ち盛りだから、どんだけ寝てても良いんじゃない?寝る子は育つって言うし。』
まだ半分寝惚けているのか、ぼんやりしている彼が可愛くて、クスクスと笑うリア。
何で笑っているのかが分からない彼は、小首を傾げて疑問符を浮かべる。
「リア…?」
『ん?』
「どうかしたの…?」
『うんにゃ…?どうもしないよ。』
「そう。」
ぱちくりと瞬きをする様子は、本当に可愛い。
純粋無垢な彼は、無自覚に可愛いから困る。
「あ…っ。」
『ん?どうしたの…?』
「窓の方に何か飛んでったように見えて…。」
『え…?』
ふいに窓の方を指差され、そちらを振り向いたリア。
しかし、何も無いようだ。
今度は彼女が首を傾げ、「何も無いけど…。」と伝えようと再び正面を向いた時だった。
まるで、その瞬間を狙ってたかのように、先程寝込みにこっそりしたキスのお返しをされた。
「えへへ…っ。ごめん、実はさっき、起きてたんだ。何かこっそりやってたみたいだったから、俺も黙ってたんだけど…。俺、自然の中で育ったから、気配だけで分かっちゃうんだよね。」
『……………。』
まさかのカミングアウト。
実は、彼女が側に来た最初から起きていたのだと言う…。
野性児だから、気配に敏感なのだ。
そして、「あっ。」と他所を指して気を逸らしておいて、再び正面を向いた時を狙ってお返しのキス。
無邪気ながらの完全なる策士だ。
―きっとこれも、彼の中ではコミュニケーションの内の一つなんだろうなー…。
なんて考えていたら、そんな心の内を読まれたかのように鋭い感性で返したゴン。
「俺、こういう事するのリアだけだよ…?口と口同士でキスしたのだって初めてだし…。それに、俺…リアの事好きだから…っ!」
「えへへ…っ。」とはにかんで笑うこれは、天然だ。
本当、あざと過ぎる子だ…。
『…何この子、マジ怖い。』
「え…っ。」
『でも好きだから、許せちゃう自分が嫌…っ!』
天然であざとい彼は、今日も私を翻弄する。
執筆日:2016.09.18