Breath(吐息)
奇術師は、黙っていてもイケメンだ。
何をしなくても様になる。
例え、素の姿でなく、いつものメイク姿であっても、それは変わらない。
「―はぁ……。」
何もする事が無いのか、暇を持て余した彼が、溜め息を吐いた。
無表情で何処かを見つめる彼は、それだけで絵になって格好良い。
変態という名の性癖が無ければ、完璧なんだろうにな…。
そういう私も、何もする事が無く、手持ち無沙汰だ。
『…ヒソカ。』
「ん?何だい…?」
何をするでもなく、ただ呼びかけてみた。
すると、すぐに此方を振り向いたヒソカは、笑みを浮かべる。
別に、何でもないように装わなくたって、気にしないけど。
それが、彼のポリシーなんだろう…。
『…別に、何でもない。ただ呼んでみただけ。』
「…?」
そう言えば、彼はキョトンとした表情を浮かべ、瞬きした。
そして、次には擽ったそうな笑みを浮かべる。
「全くキミは…可愛い事してくれるじゃない。」
クスリッ、と笑んだ後に、自身の膝の上をポンポンと叩き、「こっちにおいで。」とのジェスチャーを送ってきた。
恐らく、其処に座れという事なのだろう。
しょうがないな…。
そう思いながら、腰を上げ、素直に彼の膝の上に腰掛けた。
すると、直ぐ様後ろから抱きしめてきた彼が、息を吐き出すと共に言葉を零した。
「嗚呼…やっぱりキミと居ると落ち着くなぁ〜…。」
『ヒソカは、抱き付くの好きだね…。』
「だって、その方が相手の体温を感じられて良いだろ…?」
『そういうもんかな…。』
「そういうものだよ、シャルロット。」
『今は“仕事中”じゃないから、そっちの名前で呼ばないで。』
「ああ、ごめんね?今は、“リア”だったね。」
わざとらしい間違いに、軽く指摘すれば、愉しそうに微笑む。
「ん〜…良い匂い…っ。本当、キミの匂いは、いつでも良い匂いだね。」
『変態…。暇人か。』
「そういうキミも、暇人だろ…?」
抱き付いたまま、私の肩口に顔を埋めた彼が、ポツリと囁いた。
今日もヒソカは、無駄に格好良い。
そして、私を誘惑するのだ。
執筆日:2016.09.23