「げ、二宮さん」
「人の顔を見てそれは失礼じゃないのか」
「会いたくなかった」
「俺は会いたかったぞ」
「……」

真顔で冗談とかキツい。

「……冗談だ」
「知ってますけど」
「お前ノリ悪いな」
「二宮さんに言われたくないですぅ」

ノリとか大嫌いな顔してるくせに。
もうこの際、犬飼さんでもいいから二宮さん引き取ってほしい。

「二宮さーんランク戦しましょー」
「出水か」
「出水は神かなんだったのか?」
「おい」

うっ。
二宮さんの睨み鋭い。

「あ、朔もいるじゃん。ランク戦しよーぜ」
「二宮さんとしてきなよ。私は忙しい」
「今日はどこと任務?」
「今日は三輪隊」
「……会話できるか?」
「三輪との中継に米屋入れるから大丈夫」
「やっぱ挟むのか」
「その代わりに奈良坂とかと仲良くなってくるわ」
「それ、三輪の次ぐらいに難易度高い奴だろ」
「大丈夫、アイテム持ってきた」
「アイテム?」
「てれてれってて〜、たけ〇この里〜」

奈良坂が里の者という情報は米屋から聞いた!
懐柔策だ。
これをエサに仲良くなってもらう。

「きのこ頭のくせにw」
「ブフッ……」
「二宮さんが笑ってる……明日槍でも降るかな」
「お前の中の俺はどうなってるんだ」
「非道で冷血な鉄仮面?」
「言えてるw」

出水爆笑し過ぎ。
二宮さんに悪い……ぶふっ……!!

「でも、待機してる間2人の模擬戦見とくよ」
「マジで?」
「マジで」
「じゃーやる気出さねーとな!!」
「元からやる気満々だったろ」
「それな」

二宮さんのアステロイドってなんか変な形で割れるんだよな。
三角みたいな……?
普通にすごいよね。
私四角にしか割れないもん。
どういう原理なんだろ。

「凸凹師弟対決だね」
「凸凹?」
「二宮さんが年上なのに弟子なところかな」
「あー。なるほど、それで凸凹」
「師匠として、いいとこ見せないとね」
「ハードル上げてくるな……」
「出水なら出来るよー」
「柚宇さんみたく言って!」
「い、出水頑張れ〜」
「下手くそかよ」
「無茶振りしといてその態度はやめてよ」

静かに私はでかいモニターの前にでもいることにしよう。

「おー、弾バカ二宮さんと試合すんの?」
「そうだよ」
「師弟対決じゃん。面白そうだし、俺も見とこ〜」
「じゃあ、隣においでよ」
「やったー」
「そんな棒読みで言われても」
「あ、朔さーん!」
「緑川くんも出水と二宮さんの試合見る?」
「見る!」
「隣くる?」
「朔さんの膝に座る!」
「おいおい、ソイツ一応中学生だぞ……?」
「可愛い子は愛でる」
「あー俺朔さんにはかっこいいって言われたいー」
「まだまだだねー」
「くそー」
「親子みたいだしいいのか……?」
「あ、始まるよ」

ギャラリー増えたな。
諏訪さんたちも見に来てるし。

「てか、師弟対決っていうよりトリオンお化け対トリオンお化けって感じだな!」
「よねやん先輩ウマい」
「バイパーをリアルタイムで弾道設定出来るの出水と那須さんぐらいだよね」
「それを言うなら朔ちゃんもだろ?」
「自分で言うの恥ずかしい」
「朔ちゃんが変なところで大和撫子感出してきた」
「おい」
「でも、二宮さんだって個人総合2位だし、シューターなら1位でしょ?」

と緑川くんが言う。
そうなんだよなぁ。
実力で言うと二宮さんが飛び抜けてる。

「二宮さんと出水のどっちにかける?」
「え、サイドエフェクト使うけどいい?」
「げ、ズルいだろそれ!」
「俺は朔さんとチームだから」
「緑川お前更にズルいだろ!」

まあ、でも今回はたぶん。

「私は出水にかけようかな」
「え、二宮さんじゃねーの?」
「そりゃあ、戦績で言えば二宮さんだけど、今回はなんか出水がやってくれる気がする」
「サイドエフェクト持ちの朔ちゃんに言われたらなんか説得力ある……」
「じゃあ、俺も出水さんにかけます」
「あ、菊地原1人?」
「なんですか。俺が1人でいたらいけないんですか?」
「そこまでは言ってない……」

ここまでは3-3で同点……あ、出水がとった。

「やばい、やばい……これ出水勝つんじゃねーの!?」
「さすが如月先輩。米屋先輩は如月先輩に勝負を挑む姿勢は凄いと思いますよ」
「それ、褒めてんの?」
「さあ?」

お、また出水がとった。

「これ、まじでやばい」
「次出水がとったら勝ちだね」
「あ」

《出水、緊急脱出(ベイルアウト)》

「あちゃー。ラスト1戦までもつれ込んだか」
「本当に出水さん勝てるの?」
「菊地原、かけといてそれはねーだろ……」
「勝てる勝てる。次は出水が勝つよ」

嘘だろみたいな顔で見てくる米屋。
負けたらお前のせいだからな的な目で見てくる菊地原。
ハラハラしながら試合を見ている緑川くん。

「あ、変化炸裂弾(トマホーク)」
「うわ、弾バカ本気じゃん」
「アステロイドぶっぱなしすぎでしょ」
「まあ、出水は合成弾2秒で作れるからね」
「怪物かよ……」
「そこは天才って言ってあげなよ」

《二宮、緊急脱出(ベイルアウト)》

「ほらね」
「うわー!!負けた!!」
「お前また如月に勝負挑んだのかよ」
「あ、諏訪さんだ」

煙草を口に咥えてニタニタ笑う諏訪さん。
この人も少し性格悪いよな。

「負ける勝負でも男は挑みたくなるんだよ!!」
「ギャンブルにハマりそうな人が言いそうだな、それ」
「ってことで、よねやん先輩!」
「「ジュース奢ってください」」
「げ、お前らちゃっかりしてんなー」
「よねやん先輩の負けですから!」
「くっそー!!」

任務前に思わぬ出費の米屋。
そういえば。
こんなこと、この前もあったな。
米屋は少し学んだ方がいいと思う。



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