「朔ちゃん教えて!!」
「うるせぇ、ちょっと待て」
「先生が贔屓するのはどうかと思う!!」
「贔屓じゃねーから、順番だから」

今日は私の家で米屋と出水と課題をすることになった。
授業を任務で抜けることの多い私たちは、課題提出で出席点分をもらっている。
私は終わったし、出水も7割近く終わってるけど、米屋は3割も手をつけてない。
明後日提出だぞ、これ。

「秀次にバレたら殺される!!」

と言うものだから、とりあえずうちの家で米屋のための勉強会を開くことになった。
幸い、課題を出されたのは日本史と古典だけだ。

「高師直なんて知らねえ!!」
「室町時代に足利尊氏の執事してた人」
「執事!!知らねえ!!」
「覚えろとしか言いようがない」
「なー、観応の擾乱って何?」
「足利尊氏と弟の足利直義の対立から起こった争乱だね」
「ほー、なるほど」

これ、今日中に終わるのだろうか。

「朔ちゃんお腹すいたよ……お腹が空いて力が出ない……」
「さっきからペンを全く動かしてない奴が何を言っているんだ?」
「やめて!米屋のHPはもうゼロよ!!」
「遊んでんならお前の分のメシ抜きな」
「あっそれは無理!!」

まあ、でもそろそろご飯だな。

「俺ちょっとお花摘みに行っていい?」
「男のくせにそうやって言う奴初めて見た」
「ドン引き……」
「もー、便所に行ってきます!!」
「女の子がいるんだぞ」
「じゃあ、どーしろってんだ!?」

プリプリ怒りながらトイレに向かう米屋。

「そういや、朔ってここ1人で住んでんの?」
「そうだけど。なんで?」
「いや、一人暮らしの割に歯ブラシが2個あったから気になって」
「それ、忍田さんの」
「本部長の!?」
「たまに休みのとき、うちに泊まるよ」
「マジかよ……」
「太刀川さんもよく来るから歯ブラシ置こうとしたけど置かせなかった」
「なんで?」
「あの人、絶対入り浸るから」
「あっ…(察し)」

そもそも、太刀川さんは生活能力がないちゃらんぽらんだ。
家事は基本出来ないから、そのとき付き合ってる女の人か私頼みだ。

「私、太刀川さんの元カノと鉢合わせしたことあるよ」
「え、なにそれ」

とトイレから戻ってきた米屋は興味津々だ。

「聞きたい?」
「聞きたい!!」
「じゃあ、話してあげる」

忍田さんから太刀川さんと連絡が取れないとか言っていたからまたいつもの逃亡かなとか思って太刀川さんの自宅に行った私。
インターホンを押すと出てきたのは見知らぬ女性。
だけならいいのだが、この女性めっちゃ服が乱れているのである。
ナニをしてたんでしょうね!(意味深)

「アンタ誰」

女と見るや敵だと思っているのか、態度がものすごく悪い。

「お兄ちゃんいますか?」

この時の私ファインプレーである。
太刀川さんのことをお兄ちゃんだなんて言いたくもないけど、致し方なし。
とりあえず、太刀川さんぶん殴りたかった。

「え、慶くんの妹?」

敵じゃないと思ったのか、コロリと態度を変える女。

「慶くん、妹来てるよ」
「……は?……げっ」
「お兄ちゃん、忍田さんが連絡取れないって怒ってたよ。じゃあね」

と言って、買ってきた大根を太刀川さんの顔にぶつけて帰った。
下はかろうじてスウェットを履いていたが、上半身裸で出てきたのに腹がたった。
まあ、彼女と太刀川さんの格好を見れば昨日の夜はお楽しみでしたね、としか言いようがない。
人が心配してるときに、自分はしっぽりしてたってわけですよ。

「それから、太刀川さんは絶対に自分の家に私を呼ばない。むしろ、太刀川さんが私のところに来るようになったとさ」
「あはは!朔ちゃんも災難だな」
「でも、あそこで妹って言ってなかったら、あの日が私の命日だった気がする」
「ヤバいな」
「だって、めっちゃ怖い女の人だったもん」
「相手も太刀川さんとられないように必死だったんじゃね?」
「……あんな男のどこがいいんだ?」
「戦闘以外はクソだけど、世間で言うエリート街道まっしぐらだから?」
「……金か」
「金だな」

ご飯を食べた後、米屋は寝ずに課題を仕上げた。
みんな布団とかに入るのが面倒で雑魚寝したのに気づいたのは起きた時だった。

(出水は目をつぶってれば超絶イケメンに見える)
(朔ちゃんひでぇ!!)
(米屋はカチューシャしてないと普通にイケメン)
(ありがとー!)
(でも性格はちょっと……)



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