「朔さんこっち」
「痛い痛い」

甘えるのはいいけど、腕を引っ張る強さはもっと弱くていいんだよ、と月彦に常に言っているものの月彦は引っ張る強さを変えようとしないのはどうしてだ。

「膝貸して」
「はいはい。今日は甘えたい気分なのか?」
「今日はね」

月彦こと天羽月彦は上層部から素行不良とか言われてる。
が、基本的に私に直接的な害はないからオールオッケーである。
まあ、害があるからといって月彦と関わらないかと言われるとそんなことはないけど。

「月彦の髪傷んでる」

撫でていると前触った時より月彦の髪の質が悪いことに気づいた。

「朔さんが洗ってくれればいい」
「高校生にもなって人にやってもらおうとしない」

と言って月彦の額にデコピンをかます。

「痛っ……」
「てか、月彦はもっと他の子ともこうやって話したらいいのに」
「?」

あ、分かってないって顔。

「私以外にも友達作りなさい」
「嫌だ」
「きっぱりと拒否するな」
「だって朔さんしかこうやってしてくれないでしょ」
「そりゃあ、16歳の男の子を膝枕する子はそうそういないだろ」
「そういう意味じゃない」
「?」

じゃあ、どういう意味だってばよ。

「今はこのままでいいよ」

と、月彦は言うけど。
本当にいいんだろうか。
彼は今の地位に就いて孤独じゃないだろうか。
私はそれが心配なんだ。

「すぅ……すぅ……」

規則正しい呼吸の音が聞こえてきて、月彦が寝たんだなと思う。

「私がいなくなったら月彦どうすんの?」

いなくなるつもりは毛頭ないが、もしいなくなったらどうするんだろう。
でも、月彦ならどうにかするかな?
太刀川さんじゃあるまいし。
むしろ太刀川さんのが心配だと思うのは私だけか?
あの人の日常生活が心配だ。

「……ん」
「月彦起きた?」
「……起きた」

ゴシゴシと目を擦る月彦。

「よく寝てたよ」
「安心してたから……たくさん眠れた」

でも、今はこの笑顔が見れたらいいかな。

「月彦ジュース買いに行こう」
「じゃあ、朔さんにジュース買ったげる」
「え、マジ?」
「ホント」
「やった。ココア飲みたい」
「いいよ」




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