「新之助、二宮さんから隊服のこと聞いたことある?」
「俺もよく知らない」

なんでわざわざ動きにくいスーツなんだろ。
いや、まあ似合ってんだけどさ。
素朴な疑問だ。

「朔はなんで短パンやめたんだ?」
「げっ新之助、昔のやつ見たな」
「見た」
「17にもなって短パンはキツいもんがあるでしょ」

中学生だから許されてたデザインも、高校生ならアウトだからな。

「太刀川隊のロングコートはどうなんだ?」
「中二病患ってんじゃない?」
「なるほど」

忍田さんの換装がロングコートだからってのもありそうだけど。

「男子には那須隊の隊服が評判いいんだっけ」
「そうみたいだな」
「そんな人事みたいに」
「人事だろ。そんなので騒いでるの出水と米屋くらいだ」

マジレスされた。
いや、むしろ女は胸じゃないと間接的に言われて喜ぶべきなのか!?

「朔の服は……黒いな」
「新之助に言われたくないけどね」

二宮隊のこと陰で「三羽烏」って呼んでっから。
二宮さんにバレたら殴られるやつだ。

「なんで黒なんだ?」
「知りたい?」

貼り付けたような笑みを浮かべて新之助を見た。
興味半分で聞かせる話じゃないから。
アンタの覚悟が知りたい。

「……知りたい」

と、新之助がしっかりと私の目を見て言うから。
言ってもいいかな、なんて思った。

「私にとって隊服は喪服だから」
「喪服?」
「知ってるでしょ。私の隊、私以外みんな死んじゃったって」

あーちゃんも、郁弥もはるちゃんも。
みんな死んじゃった。

「喪に服すっていうより、みんなが忘れても私だけは忘れないようにするためなんだけどね」
「忘れないため……」
「まあ、そんな事言ったら二宮隊も喪服っぽいよね」
「……まぁな」

少し引きつったように笑う新之助には悪い事をしたなと思う。

「気持ちの整理ついたらデザイン変えてみようかな。何色が似合いそう?」
「白」
「なんで?」
「どんな色でも白を混ぜると優しい色に変えることができるだろ。朔みたいだな、と思って」
「なにそれ。そんなこと初めて言われた」
「でも、似合うと思う」
「今度、遊びに行くとき白のワンピースでも着てこようか?」
「是非そうしてくれ」
「お、おう」

そんな食い気味に言わなくても。

(てか、遊びに行くってどこ行く?)
(出水たち誘ってカラオケとか)
(出水と米屋がマイク離してくれないけどいい?)
(マジか)



ALICE+