「木虎ちゃん久しぶり!」
「朔さんお久しぶりです」

やっぱり今をときめく嵐山隊のエースは違うなあ。
キリリとしてるけど、可愛い。
テレビに出てるからか、やっぱりお肌とかも綺麗だし。
しっかりしてるんだよな、木虎ちゃんって。
これで本当にまだ中学生なのか。
米屋の方がちゃらんぽらんな感じだ。

「木虎ちゃん何飲む?」
「そんな……悪いです」
「後輩は大人しく先輩に奢られとくもんだよ。自分に後輩ができた時に奢ってやるためにね」
「えっと、じゃあ紅茶をお願いします」
「オッケー」

私、木虎ちゃんと同い年の時はミルクティーしか飲めなかったな。
子供舌だから!

「やっぱり嵐山隊忙しい?」
「大変ですけど、朔さんみたいに不定期に出動するわけではないので」
「そっかー。でも、私たちが近界民を相手にしてる間、木虎ちゃんたちは人の相手もしなくちゃいけないわけじゃん?」
「それは、そうですね」
「近界民には笑顔なんて見せなくていいけど、人には見せないといけない。ずっと笑顔でいるのって大変だと思うんだ。だから、嵐山隊はすごいと思うよ」
「……ありがとうございます」

と、顔を綻ばせる木虎ちゃん。
可愛いな。

「そういえば朔さんは嵐山さんのファンですよね」

突然、後輩に暴露された事実。

「うっ……それとこれとは関係ないね」
「でも、嵐山さんのこと好きですよね?」
「ただのファンです」
「本当ですか?」
「うん。そもそも話したことないから」
「同じボーダー隊員なのに!?」

と、驚かれた。

「私が他の隊と連携して防衛任務に行くことは知ってるよね」
「はい」
「嵐山隊とはなんやかんやで組んだことないし、嵐山さん単体でいることってないじゃん?」
「それも、そうですね……でも話したことないって」
「すれ違ったことくらいしかない」

あの時、嵐山さんからめっちゃいい匂いした。
変態ではないからね。
断じて。

「あ、でも嵐山さんの妹さんと弟さんとは知り合いだよ」
「えっ!?」
「嵐山さんの誕生日プレゼント一緒に作った」
「逆になんで会わないんですか……?」
「なんでだろうね?」

私が神様に嫌われてんじゃね?

「そもそも、好きすぎて何話したらいいか分からないから話しかけられないよ」
「重症ですね」
「だって、悪くない?ただでさえテレビに出て、プライベートなんかない感じなのにボーダーでもそんなミーハーがいるとか」
「C級隊員なんてみんなそんな感じでしょう」
「あっ…(察し)」

嵐山隊ってC級隊員の最初の訓練のときになんか色々する役目があったんだっけ。
大変だな、この子たちも。

「そういえば木虎ちゃんこの前新型のトリオン兵倒したんだって?」
「イルガーのことですか?」
「あー、確かそんな名前だったかな」
「あれは……私一人の力ではありませんから」
「ん?」
「誰かに川に引っ張られたんです。イルガーごと」
「で、その誰かって?」
「分かりません……」
「でも、近くに他の隊員がいたわけじゃないって感じなんだ」
「他に誰もいなかったですし。あ、でもC級隊員ならいました」
「C級隊員?」
「問題を起こしたC級隊員を本部に送る途中だったんです」
「なるほど。でも、C級隊員は何も出来なくない?」
「ええ。ソイツは近隣の人の避難誘導をしてましたから」
「なんか怖いね。ホラーじゃん」

誰だろうね。
木虎ちゃんを助けてくれたのは。
その人に会ったらお礼したいな。
木虎ちゃんを助けてくれてありがとうって。

「じゃ、そろそろ私も帰ろうかな」
「もう帰っちゃうんですか?」
「早く帰らないと、太刀川さんに捕まるから」
「毎度大変ですね」
「ボコボコにするためだけに呼ぶから本当に迷惑なんだよね」

案の定、家に帰ったら太刀川さんから電話があった。
やっぱり早めに帰っといて正解だった。



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