「話がこんがらがってて分からなかった」
「もう一回説明するぞ?」
「あ、ありがとう忍田さん」
「可愛い姪のためだ。気にしなくていい」

大人の余裕、恰好いい。

「玉狛に黒トリガー持ちの近界民にいるのは大丈夫だな」
「うん」
「城戸さんはそいつの持っている黒トリガーを狙っている」
「そこまでは大丈夫」
「今日で遠征部隊が帰ってくるから、遠征部隊に黒トリガーの奪取させるつもりらしい」
「それ、誰から聞いたの?」
「迅だよ」

サイドエフェクトで見えたんだ。

「流石迅さん。で、私は何するの?」
「迅の加勢に嵐山隊を送るつもりだ」
「で、私はそれについていけばいいの?」
「そうだ」
「了解です」

要するに、迅さんの味方すればいいってことか。
あー、これ太刀川さんの敵になるってことだな。
ま、いっか。

「くれぐれも気をつけろよ」
「大丈夫だよ」

なんて言ってたけど。
私、嵐山隊と一緒なの!?
ダメだ。
緊張する。
私は嵐山さんのファンなのに。

緊張して話せないよ、絶対。
というか、話すの初めてじゃん。
無理無理、絶対なんにもないところで転ぶ。

「これなら敵の方がやりやすい……?」

いや、敵でも嵐山さんに引いてくれって言われたら大人しく撤退する自信がある。
無理だな。

「嵐山隊の嵐山准だ。よろしくな!」

爽やかイケメンつらい。

「時枝充です」
「如月朔です。よろしくお願いします」
「朔さん?」
「あ、木虎ちゃんだ」
「木虎とは知り合いだったのか?」
「朔さんには普段から仲良くしてもらってます」
「木虎ちゃん……!」

木虎ちゃんいなかったら大概女子1人だし。
玲ちゃんとかくまちゃんとは本部であんまり会わないんだよなぁ。

「さ、佐鳥もいますよー」
「お、佐鳥だ」
「気づいてたけどシカトしてたのバレてますよ!」
「そんなつもり無かった。ごめん」
「もー!朔さんが謝ったら許しちゃうじゃないですか」
「チョロイな、佐鳥」
「ひどい!」

佐鳥は良いいじられ役です。

「じゃ、早速だが玉狛支部に急ごう!もう、太刀川さんたちは出発したらしい」
「は、はい!!」

緊張しすぎて使い物にならなかったら、どうしよう。

「嵐山隊現着した!忍田本部長の命により玉狛支部に加勢する!」
「嵐山……?」
「嵐山隊……!?」

三輪たちすごく驚いてるな。
まあ、忍田さん派閥が玉狛支部に加勢するってことは城戸さん派とは敵ってことだから。
この加勢には大きな意味がある。

「すみません、私もいます」
「如月!?」
「如月がなんで!?」
「私が誰の姪か、知らないわけじゃないでしょう太刀川さん」
「……忍田さんか」

ニヤリと笑う太刀川さん。
犯罪者っぽい顔は止めなさいと言ってるのに。

「遅くなったな、迅」
「いいタイミングだ、嵐山。助かるぜ」
「三雲くんの隊のためだと聞いたからな。彼には大きな恩がある!」

え、私知らない!
何その子。
すっごく気になるんですけど!

「木虎もメガネくんのために?」
「命令だからです」
「……朔はなんで来たんだ?」

ですよね!

「忍田さんに頼まれたからだよ!!」
「そっか。嵐山たちがいれば、はっきり言ってこっちが勝つよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

未来が見えるサイドエフェクトを持ってる迅さんがこう言うんだ。
もう、こっちの勝ちじゃん。
でも、それで引くような人たちじゃないんだよな。

「俺だって別に本部と喧嘩したいわけじゃない。引いてくれると嬉しいんだけど……太刀川さん」
「なるほど。未来視のサイドエフェクトか。ここまで本気のお前は久々に見るな。面白い。お前の予知を覆したくなった」

と言って太刀川さんが弧月を抜く。

「やれやれ、そう言うだろうなと思ってたよ」

迅さんも黒トリガーを抜く。
まあ、こうなるわな。
私と嵐山さんたちは迅さんのサポートかな。
真面目にやりますか。
でも、迅さん鬼強いから私の出番はなさそう。

「次はこっちを分断しに来そうだな」
「その場合はどうする?」
「別に問題ないよ。何人か嵐山たちに担当してもらえるだけでもかなり楽になる。風間さんがそっち行ってくれると嬉しいんだけど、こっち来るだろうな」
「うちの隊を足止めする役ならたぶん三輪隊ですね。三輪先輩の鉛弾(レッド・バレット)がある」
「どうせなら分断されたように見せかけてこっちの陣に誘い込んだ方が良くないですか?」
「そうだな。賢と連携して迎え撃とう!」
「迅さん、私どっち?」
「嵐山と一緒だ」
「……はーい」

まあ、知ってたけど!!

「お、来たな」

げ、出水こっちにいるじゃん。

「上手いことやれよ、嵐山」
「そっちもな、迅」

頑張らないとな、私も。

「行くぞ!」

三輪隊に出水いるだけでも本当に面倒くさい。
嵐山さんがなんやかんや言ってるけど、三輪が聞くわけないし。
私なら嵐山さんの言うことなら簡単に聞くだろうな。
チョロい奴だって?
知ってる。

「出水先輩、攻撃体勢に入った」

佐鳥に内線で言う木虎ちゃん。

「ちょっと待って!」
「えっ?」

あ、遅かったか。
攻撃に見せてフルガードって性格悪すぎ。

「なーんちゃって。佐鳥見っけ」

あちゃー。
スナイパーの場所割れちゃった。
木虎ちゃんがフォローに行ったけど、相手は米屋か。
まあ、狭いところなら木虎ちゃん有利かな。
佐鳥は無事に逃げて欲しいところだ。

「朔が敵か……やりにくいことこの上ないな」
「私も出水が敵は嫌だよ」

出水、性格悪いし。

「嵐山さんたちは普段通りお願いします。合わせます」
「任せたぞ!」
「はい」

いい感じの均衡状態だったけど、やっぱり三輪の鉛弾(レッド・バレット)がな。
シールド意味無いし。
嵐山さんの片足が使い物にならなくなった。

「まあでも、関係なさそう」

時枝くんとの絶妙なコンビプレーで出水のトリオンをかなり削ったはずだ。
と、思ったら上から木虎ちゃんが降ってきた。

「アステロイド!」

出水のアステロイドはただのシールドでの防御だけじゃ無理があるけど。

「でも時枝くんが間に合うな。出水は余所見厳禁ってね」

大量のアステロイドを出水に向かって撃つ。

「チッ……さすがスーパーサブ」

サブ言うなし。
不意打ちの割には防いでるよね。
でも、けっこうトリオン削れたかな。

「あ、時枝くんの頭に当たった……!?」

ここまで正確な射撃。
当真さんだな。
時枝くんが木虎ちゃんを引っ張らなかったら木虎ちゃんもやられてたな。
イケメンかよ……!

「すみません、嵐山先輩。詰めを誤りました」

木虎ちゃんも嵐山さんも片足使えない状態。
それに、このまま時間が経てば木虎ちゃんがトリオン垂れ流しで緊急脱出(ベイルアウト)するだろう。
それまでに片付けないと。

「反省は後だ!」
「木虎ちゃん、まずは今は目の前の敵をどうにかするよ」
「はい!」

2人とも足使えないもんな。
いづれ追いつかれる。
木虎ちゃんの提案で狭い道に入ったはいいけど、相手はさっきの連携を警戒して入ってこない。

「朔さんはどう思いますか?」
「そうだな……三輪なら迅さんの方に行くと見せかけて私たちをおびき出すと思うよ」

出水ならこの辺更地にしようっていうと思うだろうけど。

「なんでそう思うんだ?」
「朔さんのサイドエフェクトです」
「如月のサイドエフェクト?」
「私、凄く勘が良いんです」
「……なるほど。理解した」
「でも、まずはレーダーの精度あげて2人の位置を確認してください」
「そうだな」

うん。
やっぱり、2人は迅さんのいる方向に向かってる。
当真さんはバックワーム着てるから何処にいるか分からないけど。

「3人には働いてもらうぞ」
「「はい!」」

木虎ちゃんは当真さん。
佐鳥が私と嵐山さんの援護射撃ってわけか。
スナイパーに退場してもらったほうが好都合だし。
私は時枝くんポジションってところかな。
時枝くんみたいには動けないけどね!!

「メテオラ!!」
「くっ……!」

めっちゃ爆発させるな、出水くん。

「出水、私がこっちにいるの忘れてない?」
「げっ……!」

バイパーは殆どシールドで防がれてしまったが、まあ上々だ。
三輪に詰め寄られる嵐山さん。
嵐山さん嘘下手くそ過ぎる。

「はっ!?」
「当真さん……!?」

誰か緊急脱出(ベイルアウト)したみたいだ。
出水たちの反応から見るに当真さんか。

「木虎ちゃんがやったみたいですね」
「みたいだな」

満面の笑みの嵐山さん。
どうだ、うちの隊員はすごいだろう!という顔だ。

「こっちの作戦は私と嵐山さんが囮になって木虎ちゃんが奇襲する。どう?三輪の推測通りだね」
「くそっ!!」

三輪と出水が攻撃してこようとしたが、腕を撃ち落とされた。

「佐鳥ナイス!」
「やった!朔さんに褒められた!」

銃二個持ちってやばいな。
まあ、その代わりバックワーム使えないし外すと最悪だけど。

「朔が入ってたとはいえ、5位のチームに一杯食わされたな」
「木虎ちゃんの癇に障るように言うのやめなよ」
「はいはい、気をつけますよ。つかズルいんだよ。朔がそっちつくとか」
「?」
「俺たちの手札全部見えてて勝負してるようなもんだもんなあ」
「えっと、つまりどういうことだ?」

嵐山さんたちは訳が分からないという顔をしている。
仕方ないか。
嵐山さんたちと組んだのは初めてだし。

「私は隊には属さずに他の隊に混ざって防衛任務に行くんです。嵐山隊とは組んだことありませんでしたし知らなくて当然です」
「俺たちの攻撃全部知ってて敵につくんだもんな。そら、負けるわ」
「でも、出水にも私の攻撃、防がれちゃったし」
「これでも1位のチームのメンバーですから」

ニヤリと出水が笑う。
今の笑い方、太刀川さんソックリだった。

「まあ、忍田さんの命令だから」
「朔が忍田さんの姪なのが敗因だと思う」
「最強の叔父さんで、ごめんね」

優しくて誰よりもかっこいい自慢の叔父さんだ。
誰にも文句は言わせねーからな!!

(あ、太刀川さんと風間さんがお星様に)
(朔さん、その言い方はちょっと)
(いやぁ、いい人でしたよ)
(それでも続けるか)



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