「チキチキ、任務要請が来たら即終了!クリスマスパーティを始めまーす」

と、米屋がいつものテンションで言うと

「いぇーい」
「ふぅー」

と、各々なにか言ったり手を叩いたり、盛り上がった。
そう、今日はクリスマスイブ。
ボーダーは今日も今日とて休みはなく、いつでも出動できるようにトリガー持参で、しかも本部の一室でクリスマスパーティを開催している。

「え、今回の幹事三輪隊なの?」
「みたいだな。そういえば、米屋がすっげえ張り切ってた」
「だから奈良坂と古寺は飾り付けとかしてたのかな……三輪は?」
「アイツはツリーの飾り付け担当らしい」
「な、なるほど……」

お菓子が妙にたけ〇この里推しなのは、奈良坂のせいだな。

「俺きのこ派なんだけど……っ!?」

とぼやいた奴の顔スレスレに弾が飛んできた。
絶対奈良坂だ。
あそこまで正確な射撃で、なおかつ里の者は奈良坂しかいない。
というか、なんで奈良坂はトリオン体なんだ。

「みなさーん、早速ですが!企画その1のゲーム大会しまーす」
「優勝者はなんと!商品券が貰えます!!」

商品券(笑)
優勝したら生活費の足しにでもしようかな。

「なお、このゲームは主に朔ちゃんには少し有利になっておりますので朔ちゃんは参加出来ません!」
「なんで!?」

勝手に除外されてる!!

「題して!『教えて!ボーダーのあれこれ』です!」
「この問題はボーダーに入隊した皆さんなら常識であろうことの二択クイズを出します。正解だと思うならなら赤、間違っていると思うなら青のスペースに移動してください」
「なるほど、二択では外さないという超絶勘が鋭い如月さんには問題にすらならないからですね!」

と、古寺が一言付け加える。
私に有利にしたことで、私を除外にした米屋を私は許さないぞ。

「第1問!」

と米屋が言うと、クイズ番組のような音が流れる。

「如月朔は二宮匡貴が苦手である。正解だと思うなら赤、間違っていると思うなら青に行ってくださーい」

公開処刑じゃねーか!!!

「さーて、みんな移動したかな?じゃあ、正解は朔ちゃんの口からお願いしまーす」
「せ、正解は……赤です」

ほら見ろ。如月は二宮こと苦手だってこの前言ってた!と更に爆弾を投下してくる諏訪さん。
それ、内緒のやつです。
あ、二宮さんは青にいたのか。
なんかごめん。
犬飼さんは赤のスペースで爆笑している。
やっぱり性格悪いな、あの人。

「第2問!太刀川さんがレポートを溜め込むのは皆さんも知っているかと思いますが、太刀川さんはパソコンの使い方がイマイチ分かっていない。それでは移動開始してください!」

やっぱり、赤が多い。
というか、みんな赤じゃね?

「正解は赤でーす。これはサービス問題ですね!!」
「当たり前です。ここにいるのは太刀川さんと交流のある人も沢山いますから」

なんやかんやしてると、第9問までやって残っているのは風間さん、菊地原、出水、諏訪さんだ。

「第10問!太刀川隊の隊長である太刀川慶はA級隊員の如月朔を口説いたことがある。それでは残った皆さん、移動開始してください!」
「は!?」

ちょっと待て。
なんだその問題。

「もう移動はありませんね?この時点より後で移動するのはやめてくださーい。赤には風間さん、諏訪さん、出水。青には菊地原だけなのでこの問題で菊地原が正解すると菊地原の優勝です。じゃあ正解を朔ちゃんからどぞ」
「あの……口説くとか、どの意味かは分かりませんが一般的な意味でなら間違ってます」
「ということで正解は青でした!!優勝は菊地原!」
「太刀川が如月を口説いてない……だと?」
「嘘だ……あんな見た目なのに」
「如月のケツ追っかけてるくせに……」
「納得いってない人もいると思うので、本人に話を聞きましょう!実際のところどうなんですか?太刀川さん」
「口説くというか、うちの隊に引き抜こうとしたことはあるな。というか、本気でコイツを口説いたら忍田さんに殺される」

と、太刀川さんが震えながら言う。

「らしいです!赤スペース行った人たちは深読みし過ぎたのか!さて、優勝者の菊地原には副賞の商品券を贈呈しまーす」

古寺が菊地原に商品券の入った紙の袋を渡すと、みんなが拍手をする。
菊地原はうるせえっていう顔してるな、あれは。

『ゲート発生』
「じゃ、今日俺らだから行ってくるわ」

と、太刀川さんは言い残して走っていった。
さすが戦闘狂。

「太刀川隊が任務で退出しましたがプレゼント交換しまーす」
「任務要請がきたら即終了とはなんだったのか」
「雰囲気!」

どうやら太刀川隊だけでどうにかなるみたいなので、みんなそのままパーティを続けることになった。

「プレゼントは皆さんが持ち寄った物に番号をつけてくじ引きで引いたものが貰えるというスタイルです」
「音楽を鳴らしてプレゼントを回すとどれが誰のか分かりますからね!」

と、米屋がドヤ顔しながら言う。

「じゃあ、順番に引いていきましょう!」

レディファーストだなんだと米屋が言い、トップバッターは加古隊の双葉ちゃん。

「2番です」
「2番はこれ!香川のうどん……?あ、これ太刀川さんからだ」

心底いらねぇって顔してるな。
私もうどんはいらないな。

「次は木虎どうぞ」
「……10番」
「おっと、これは女子力高いプレゼントだ!」
「ハンドクリーム、ですか?」
「あ、木虎ちゃんに当たったんだ。それ、私が選んだの」
「朔さんが!?」
「男の人に当たったらどうしようかと思ったけど、なんとなく大丈夫な気がしてたから。まさか木虎ちゃんが当てると思わなかったなぁ」

万人受けするプレゼントを考えるのが面倒くさくてサイドエフェクト使ったのは、木虎ちゃんには言わないでおこう。
女の子っていう確信があったから有名なところのハンドクリームにしたのは那須隊や加古隊のみんなやオペレーターの子が当たっても使いやすいと思ったからだ。

「女子最後は朔ちゃんだな」
「うーっす」

玲ちゃんはくまちゃんの、くまちゃんは玲のプレゼントが当たったから本当にプレゼント交換って感じでほのぼのしました。
茜ちゃんは笹森くんのマフラーが当たった。
白の誰でも使えそうな感じで好印象でした。
笹森くんの好感度が私の中で急上昇中ですわ。
加古さんは二宮さんからの高そうなボールペンだった。
二宮さんからと聞いた瞬間、いらねぇという雰囲気が露骨に出ていた。
可哀想な二宮さん。
いったい二宮さんが何をしたというのか。
柚宇ちゃん以外のオペレーター勢は基本変なものは当たっていなかったと思う。
あ、でもおサノちゃんが風間さんの握力グリップが当たってたか。
出来ればゴミにはならない系のがいいな、という願いを込めて箱の中に手を突っ込む。
これだ!と思ったのを引く。

「お、12番はーっとなんだこれ」
「映画のペアチケット?」
「あ、それ俺だ」
「荒船さんの?」
「それ今話題の映画なんだけど、誰かと見に行ってこいよ」
「荒船さんが言うならハズレではなさそうです」

よかった。
変なやつじゃなくて!!
私が引いてから続々と男子が引いていったが、時枝くんが加古さんのアロマディフューザーを引いたり、諏訪さんが奈良坂のたけのこの里づくしを引いたりなど、バラエティに富んでいた。

「嵐山さんはこれですね。出水のダサTシャツです」

千発百中の文字が書かれたTシャツ。
絶対いらないものなのに嵐山さんは寝間着にする!とどこか嬉しそうだった。
イケメンずるいな。
その後に引いた新之助に当たったのが茜ちゃんの入浴剤セットで、新之助が固まったのが最高に面白かった。

「そろそろ、お開きにするか」
「中学生もいますしね」
「成人組は飲み直そうぜ」

今思ったけど、ここに集まった奴らってクリスマスイブに予定ない奴ら=恋人いないってことでいいんだよな?
……そう考えると寂しいクリスマスだな。

(たけのこの里余ってるから奈良坂持って帰っていいぞ)
(奈良坂の死んだ魚の目がキラキラして見えるぞ)
(たけのこの里パワーすげぇ)




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