「あら、朔じゃない」
「加古さんこんにちは」
「ねぇ、もう決心ついた?」
「何をですか?」

分かっているけど、あえてはぐらかす。
けど、それも加古さんにバレてるだろう。

「うちの隊にくることよ」
「何回言われてもそれはできません。第一、私と加古さんはポジション被ってますから、攻撃手(アタッカー)か狙撃手(スナイパー)の方がいいんじゃないですか?」
「うふふ。私、才能あるKのイニシャル持ってる人を見ると勧誘したくなっちゃうの。それに戦い方なら入ってから考えればいいじゃない。私とポジションが被ってても問題ないわ」

人が一生懸命考えた言い訳をいとも簡単に論破してしまう。

「そうですかねえ」
「そうよ。だから、うちにしときなさい」
「しときなさいって……他に私を勧誘する人なんか」
「あら、冬島隊も朔ならほしいって言ってたわ」
「あそこに行ったら私、確実に前線行きですよね」

冬島さんはトラッパーだし、当真さんは狙撃手(スナイパー)だし。

「なら、やっぱりうちの隊がピッタリよ。うちにはもう攻撃手(アタッカー)はいるから」
「双葉ちゃんですよね」
「そうよ。あの子は間違いなく天才だわ」
「そうですね」

緑川くんと同い年なのが嘘なくらい落ち着いた子だし、何より加古さんのビックリ炒飯を普通に完食するらしい。
すごい逸材である。

「あと、二宮くんがあなたを欲しいって言ってたけど」
「え、あそこに私いらないですよ」

それこそ、邪魔するだけだと思うけど。

「朔はリアルタイムでバイパーの弾道引くことも出来るから、きっと狙撃手(スナイパー)にも向いてるって言ってたわ」
「あ、私やったこともないポジションでスカウトされるんですか」

なんて横暴な人なんだ。
いったい、どんな二宮さんなんだ?

「だって仕方ないじゃない。元々二宮隊だった人が狙撃手(スナイパー)だったんだから」

知ってる。
たぶん、加古さんよりももっと。
二宮隊にいた鳩原未来さんっていう人を知ってる。
狙撃手(スナイパー)だけど、人が撃てないことで有名だった。
でも、誰よりも狙撃が上手くて、相手の武器に当てることが出来る人だった。
けど、ある時から未来さんはボーダーから除名された。
当時、A級だった二宮隊はB級に降格。
ボーダー内で私が1番未来さんと仲良かったと思っている。
未来さんは、私にも何も告げずにどこかに行ってしまった。
未来さんが色々考えていたのにそれに私は気づけなかった。

「二宮くんは貴方と一緒に待ちたいんじゃないかしら」
「私と?」
「朔だってあの子が生きてるって信じてるんでしょ?」
「勿論です」
「そのために、貴方はすることがあるんじゃない?」
「だから……どこかの隊に入れ、と」
「勿論、それもあるけど。もしどこかの隊に所属しないといけないなら、うちは大歓迎よ」

にこりと笑って言う加古さん。

「前の遠征メンバーには選ばれなかったけど、次は本気で狙いにいくわ。そのためにも、貴方の力が必要なの」

背中がぞくぞくした。
こんな才能ある美人にここまで言われることなんてない。
私にはもったいない話だ。

「少し、考えさせてください」
「ええ、待ってるわ。今回は手応えがあったことだし」

私はいったいどうすればいい。
ねえ、未来さん。
教えてよ。



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