「朔さーん!」
「お、緑川くんだ。久しぶり」

入隊から1年と少しぐらいでA級に上がってきた緑川瞬くん。
生意気なところもあるけど、素直だし悪い子ではない。

「久しぶり!さっそくだけど、ランク戦しよ!」
「いいけど、どうせスコーピオンでしてって言うんでしょ?」
「勿論!!」
「スコーピオン嫌なんだけど」
「でも、朔さんが一番迅さんの戦い方に似てるんだもん!」
「それ、言われたくない言葉ランキング上位のヤツだから」

太刀川さんによく言われるから本当に嫌だ。

「でもさぁ朔さんスコーピオン使うために参考にしたの迅さんじゃん」
「うっ」

そう。
元々、私は射手(シューター)だけどスコーピオンも習得したいと思って使い始める前に参考にしたのが緑川くんの尊敬する玉狛支部の迅悠一である。
スコーピオン使いで有名な人は本部に風間さんがいたけど生憎、風間さんとは仕事中くらいしか話さない。
だから、穴が開くくらい迅さんと太刀川さんの動画を見た。
それからなんとなくでスコーピオンを使っていたら太刀川さんに見つかって、迅さんの代わりをさせられるようになった。
S級の迅さんはランク戦ができないから。
でも、アタッカー1位の奴と最近スコーピオンを使い始めたペーペーじゃまず勝負にならなかった。
が、太刀川さんはそれで飽きなかった。
俺好みの攻撃手(アタッカー)にするだの何だの言って、今も良くランク戦させられる。
その時にごっそり点数削られるから、私は太刀川さんのカモである。

「似てるとか言われても分かんないし、似せてるわけじゃないから過剰に反応されたくないんだよ」

陰で色々言われてるしな。
それに、似てると言われるせいで太刀川さんの相手をさせられるのは嫌だ。
迅さんがS級だからランク戦出られない代わりをさせられる奴の気持ちを考えてほしい。

「でも、俺は朔さん好きだよ?」
「緑川くんに他意はないのは分かってるよ」

仲いい人にいじられる程度はなんてこともない。
でも、他の人の言葉はナイフのように心に刺さる。
敵意があるかないかで、言葉は刃物に変わるから。

「まあ、そろそろ太刀川さんに負け過ぎてるし」
「げ、俺から搾り取るつもり?」
「世の中の食物連鎖ってやつよ、緑川くん」
「如月が中学生からカツアゲしてるぞ」
「諏訪さん人聞き悪いこと言わないでください。ただでさえ、私は女子隊員に嫌われてるんです!」
「ぶはっ、そうだな!」
「そこは、そうでもないだろとか言って誤魔化すところでは?」
「実際、ほとんどの女子隊員には遠巻きにされてるからな」
「那須隊のみんなとは話したりしますよ!」
「那須隊だけな」

腹がたったから、諏訪さんからも点数を取ったことは後悔してない。

「スコーピオンのスコア10000にやっとなったのに……太刀川さんが何回も勝負させるから」
「ヒエラルキーのトップ怖っ」
「でもあの人、戦闘能力にステータス振り過ぎてそれ以外のこと全くだから」
「あっ…(察し)」



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