ドンッ

「わっ」
「オネーサン大丈夫?」
「だ、大丈夫……」

わ、この子白髪だ。
珍しい。
しかも目が風間さんみたいに真っ赤。
アルビノってやつかな。
こんな小さな子に支えてもらうのは高校生として恥ずかしいんだけど。
この子、小さいのに力持ちだな。

「おーい、遊真!」
「あ、オサムが呼んでる。じゃーね、オネーサン」
「う、うん。ありがとう……」

声がした方向に走って行ってしまった男の子。
そういえば中学生の制服着てたけど。
にしてはやっぱり小さかったな。

「風間さんみたいなタイプなのかな」
「何失礼なこと言ってるんですか」
「あ、菊地原だ」
「如月先輩がこんなところにいるって珍しいですね」
「そうなんだけどさ、今日この近くに移動販売のクレープ屋さんが来てるんだって」
「奢ってください」
「え……?」
「なんですか」
「いやいや、菊地原から誘われるなんて思ってなかったから。嬉しいなあ、と」
「気持ち悪……ほら、早く行きますよ」

気持ち悪いと言われても菊地原はツンデレだと思えば腹はたたない。
むしろ、可愛いとさえ思えてくる。

「クレープ屋はーっと。あ、ここだ」

うわぁ。
クレープ生地の甘い香りがする。
うん。
ここは絶対美味しい。

「菊地原、ここ人たくさんいるけど大丈夫?」
「大丈夫です」
「無理だったらベンチに座ってていいからね」
「分かりました」

クレープ屋の前には少し人だかりができていたが、店員さんがうまく捌いているのか、案外早く順番が回ってきた。

「菊地原なにがいい?」
「いちごバナナカスタードがいいです」
「じゃあ、それといちご生クリームください」
「お2人は恋人ですか?」
「は?」

恋人?

「今、カップルで来店されるとクレープが半額になるんですよ」

カップルって言うと安くなるけど、嘘はなあ。
菊地原がいい気しないかもしれないし。
どうしようかなー。と考えながら菊地原の方をを見ると菊地原はしれっと

「そうですけど」

と答えてくれた。

「では、お会計変わりまして420円になります」

得したからいいのか……?

少し待ってクレープを手渡しされた後、人がいなさそうなベンチで菊地原の隣に座ってクレープを食べる。
うっ、気まずい。

「そんなに俺と恋人に見られたのが嫌ですか」
「いやいや、そういうことじゃなくて」
「じゃあなんですか」
「ありがとう。私が多くお金払わないでいいように嘘ついてくれたんだよね」
「……今はそれでいいです」

菊地原は可愛い。
後輩として、まあ生意気だけどそれが菊地原だし。
事実をスパッと言うから、何言われても納得しちゃうし。

「!!」
「菊地原、どうしたの」
「ゲートが」

菊地原が見ている方にゲートが出現した。
なんで警戒区域外にゲートが……?

「菊地原いける?」
「如月先輩こそ大丈夫ですか?」
「菊地原となら余裕だね」

ゲートから出てきたのもバムスターとかだし。
菊地原と一緒なら楽勝でしょ。

「援護するから頼んだよ」
「言われなくても」
「「トリガー起動(オン)」」

「皆さん、私たちはボーダー隊員です!慌てずに近くのシェルターに逃げて下さい!」

逃げ惑う人。
まさか、警戒区域外でゲートが出るとは誰も思ってないから混乱している人もいるけど。
比較的、避難はスムーズに進んでいる。

「あっ!!」
「奈々!」
「ママーッ!!」

バムスターが転んだ小さな子供を見て、そちらに行こうとする。
子供は転けて泣いてるし、トリオン兵に見られているからか足がすくんでいる。

「スコーピオン使うしかないか」

射手(シューター)用のトリガーって外れると被害余計増える気がするから、警戒区域外で使いたくないんだよね。
スコーピオン入っててよかった。

「いいから、あのバムスター止めますよ」
「了解」

その後、的確に菊地原がバムスターの核を破壊する。
さすが風間隊。

「この調子でサクサク倒していくよ!」
「アステロイドだと周りへの被害に気をつけてくださいね」
「だから、今日はスコーピオンです!」

あと、メテオラなんか問題外だ。

「あと一体!」
「分かってます」
「任せたよ菊地原」
「人使い荒いなあ、もう」

うん。さすが菊地原。
最後もきちんと敵の弱点狙ってる。
それから、すぐにレスキュー隊員が来て誰も怪我がなかったことを教えてくれた。

「ボーダーのお兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ん?」
「ありがとう!」
「この子を助けていただいて本当にありがとうございました!!」
「どういたしまして。もう絶対にお母さんの手離しちゃダメだよ」

と、女の子の頭を撫でる。

「うん!!お兄ちゃんもありがとう!」
「……どういたしまして」

菊地原はツンデレだなあ。
感謝は素直に受け取っておけばいいのに。

「疲れた」
「非番なのにねぇ」
「ホントそうですよ……なんで非番に近界民と戦わなきゃいけないんですか」

本当になんでだろう?



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