辻ちゃんは女の子が苦手だ。
今では普通に話せる同じ隊の氷見さんとも、最初は全然話せなかった。
何故女の子が苦手かというのは、私はよく知らない。

「なんで、私は大丈夫なの?」
「俺好みの女王様だったから」
「ですよねー」

辻ちゃんは女の子が苦手で、しかもドMという変態さんだった。

「あ、そのゴミを見る目最高」

と、恍惚の表情で見つめてくる辻ちゃん。

「そういう言い方やめろ」

辻ちゃんがドMなのは私しか知らない。
というか、恋人がドMって相談できないでしょ。
告白された時はドMなんて知らなかった。
辻ちゃんが女の子が苦手なのは知ってたけど。
なんで女の子が苦手なのに私と付き合おうと思ったのかが不思議だった。
理由がまさかこんなことだとは思わなかったけど。

「辻ちゃん、足に顔をスリスリしないで」
「えっ」
「この前、足びちょびちょになるまで舐められたのまだ怒ってるんだけど」
「俺の誠意が足りないから……すまない」

違いますけど!!?
というか、普通の恋人は恋人の足を舐めたりしないよ。

「辻ちゃん、犬飼先輩とかにバレてないの」
「なにが?」

お前がドMだってことだよ!!

「俺と真愛が付き合ったときは隊の全員で祝福された」
「すごく隊員に心配されてたんだね」

辻ちゃんが女の子苦手なのは周知の事実だからかな。
そういえば、氷見さんに「辻くんをよろしくお願いします」と強く握手されたな。

「ていうか、女の子の何が苦手なの?」
「ワガママだし、強かだし、なんかこう……キョリの縮め方が強引」
「辻ちゃんの好きなタイプじゃん?」
「全然違う。あ、そのまま俺のこと蹴ってください」
「え、ヤダ」

普通に気持ち悪い。
否定されたのが嬉しかったのか、興奮している辻ちゃん。
息荒いけど、ほぼ無表情っていうのが怖い。

「辻ちゃん、私ドM嫌いなの」
「そ、それ……なんのご褒美?」

喜ばれてる、だと?

「辻ちゃんは救いようのないドMだね」
「褒め言葉だな」

たぶん何言っても喜ばれるから、もう深く考えないことにする。

「その目最高。まさか……放置プレイ?」
「違いますけど」

辻ちゃんが喜んでるならもういいか。



お題配布元.確かに恋だった
『恋人がドMなんですがどうしたらいいですか?5題』



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