やばい。
これはやばい。

「辻くん、一緒に遊ぼうよ」
「あ、私カフェ行きたい!」
「いいね、それ」

何も良くない。
俺の意見を聞けよ。
と考えていても、目も合わせられないくらい女子が苦手で、何も言えない。
俺は自分で言うのもなんだが、容姿がけっこう整っているらしい。
自然と女子が寄ってくるのだが、嬉しくない。
そもそも、グイグイ来る女子が苦手なんだ。

「ねぇ辻くん」

と、腕に絡みついてくる女子。
香水の人工的な甘い匂いが香ってくる。
体が固まって、絡みついた腕を振り払うことも出来ない。

「辻くん先生が呼んでるよ!」

と言って、無理やり俺に絡みついた女子を引き離して、手を引いて走り出した。
コイツ確か、同じクラスのなんていったかな。
あー。
名前覚えてない。
助けてくれたとはいえ、コイツも女子。
手を引いて助けてくれたことは感謝しているが、全く何もできない。

「ここまで来たらもう大丈夫でしょ」

ふーっと安堵の息を吐く目の前の女子。
パッと手を離してこちらを向いてきた。

「分かってると思うけど、さっきの嘘なんだ。困ってるように見えたから」
「そ、そうなんだ……」
「辻くん女子苦手だから、私が助けるのもどうかなって思ったんだけど」
「!」

気付いてたのか。

「無口かと思ったら男子とは普通に話してるし、たぶんそうなんだろうなって思って」
「笑わないのか?」
「別に。私が犬が苦手なのと変わらないと思うよ」

俺が女子苦手なのは犬が苦手なのと変わらない?

「変わった感性だな」
「よく言われる」

と言って笑い出す目の前の女子。
変な奴。

「君、名前は?」
「あ、まさかの名前覚えられてない」

それがまたツボに入ったのか、クスクス笑われる。

「佐藤真愛。同じクラスだから覚えてくれると嬉しいな」

佐藤真愛。
たぶん、もう忘れない。
今でも佐藤の目を見て話せないけど、コイツとなら話せるようになる気がする。

「友達になってくれないか」
「あはは、同じクラスなのに変な感じだね」

それもそうだ。
同じクラスなのに今更友達になろうだなんて。

「でも面白い」

と言ってにっこり笑う佐藤。

「ねえ、恋ってどうやって書くか知ってる?」
「は?」
「下に心を書いて恋だよ。つまり、恋は下心なんだよ」

だから何だって言うんだ。

「あとは自分で考えて」
「は!?」
「だってその方が面白くない?」

何も面白くない!!






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