任務が終わって、基地の外に出ると外は生憎の雨。
任務の時に降り出したけど、トリオン体だったから関係なかった。
でも、今はトリオン体じゃないからなあ。
傘がないのはけっこうやばい。

「びしょ濡れで帰って風邪引くのも嫌だな」

天気予報を見なかった自分が悪いんだけど。
風邪引いて風間さんに知られたら絶対に説教される。
それだけは避けたい。
あ、本部の購買に傘売ってないかなあ。

「ごめんね、突然の雨だったから売り切れちゃったよ」
「そうですか……ありがとうございます」

うう。
ツイてない。

「どうしよう……」

もういっそのこと本部に泊まるか？
加古隊の部屋にでも泊まらせてくれないだろうか。

「真愛？」
「あ、出水いいところに」

もう、太刀川隊でもいいや。

「なんだよ」
「今日太刀川隊の部屋に泊まらせて！」
「は？」
「傘忘れたから……」
「俺、傘あるから送ってやるよ」
「マジ？」
「こんなので嘘ついてどうするんだよ」
「出水ありがとー！」
「おー。感謝しろー？」

うわ、これお礼のが高くつきそう。

「すげー降ってるな」
「止む気配ないよね」

これ、明日になるまで止まないやつだよ絶対。

「よっしゃ、じゃあ帰んぞ」
「うん。って出水の傘ちっさ」
「うるせぇ」

送ってもらう手前言っちゃいけないと思ったけど。
２人で折りたたみ傘は無理でしょ。

「お前がくっつけばいいんだよ」
「う、うん……？」

それでも限度があるんじゃないのか？

「あ、そうだ。明日の課題写させてくれたら、これはチャラにするわ」
「げ、明日の課題って古典じゃん」
「頼んだぜ。俺、明日当たるんだよなー」
「仕方ないなあ」

課題で済ましてくれるなら安いもんだ。
もっとこう、焼肉奢れ的なこと言われるかと思ってたから。
この前なんか海老フライ自費で作らされたし。

「あ、ここのコロッケ美味しいらしいね」

もう閉まっているお肉屋さんを指さすと出水は

「俺もう食べたぜ」

と、ドヤ顔。
さすがコロッケ好き。
早いな。

「太刀川さんが奢ってくれた」
「太刀川さんが？」

珍しいこともあるんだなあ。

「レポートの手伝いした礼にな」
「さすが太刀川さんブレない……」

優しさとかではなかった。

「また今度食いに来ようぜ」
「米屋も一緒に？」
「あーうん、そうだな……」

なんで急に口篭る？

「あ、私の家ここだから」
「そ、そうか。じゃあな」
「待って出水。家からタオル取ってくる」
「は？」
「だって出水の肩濡れてるじゃん」

私と反対の肩だけびしょ濡れだ。

「拭いてどうにかなるわけじゃないけど……って出水？」
「俺は、お前が濡れないようにと思ってだな……」
「ん？ありがとう出水」
「はぁ……意味分かってないな」
「うん？えっと……意味？」
「もういいよ。早くタオルくれよ」
「あ、ちょっと待ってて！」

出水の肩が濡れてることに他の意味ってなんだろう。
また今度教えてくれるかな？




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