「烏丸くんこれ多く作りすぎちゃったから食べて!」
「ありがとう」
自分がモテていることに無自覚。
さらに自分のことに無頓着。
なのにアイツがモテるのはおかしい。
「また貰ったの?」
「うん。でも、作りすぎたっていう割に綺麗にラッピングしてるなって思って」
「なんでだろうね」
答えなんか言ってやるもんか。
あの子の言葉はただの建前だっつーの。
烏丸が遠慮すると思って「余った」なんて言ってるんだよ。
それぐらい自分で気づけ。
「あ、分かった。誰かに渡そうとしたけど、その子に振られたから仕方なくとか」
勝手に振られたことにしてやるなよ。
あの子は絶賛アピール中だわ。
「京介がそう思うならそうなんじゃない?」
驚くというより、もう呆れてるよ。
「これ食う?」
「京介に、って貰ったのに私が食べちゃダメでしょ」
「いつも食べ物は半分こ、だろ?」
美味しいときはな!!
でもまあ、あの子確か調理部だったし、食べれないことはないだろう。
「あ、いける」
「普通に美味しい」
次々に頬張っていく京介。
全然半分こじゃないね!?
「はっ……今日の昼ごはんなかったから無心に食べてた」
「おい」
なんで今日のご飯ないんだよ。
「お昼ご飯ないなら私のあげるから食べる?」
「いいのか?」
「私用だから少ないけどね」
「そんなの気にしてない。真愛は何食べるんだ?」
「購買でなんか買ってくるわ。待ってて」
あんなキラキラした目で見られたら、そりゃあ餌付けしたくなるわな。
少しだけ他の女子の気持ちがわかった気がする。
「お、新作のサンドイッチ」
「あー!!それ俺が取ろうとした!!」
「出水先輩。こういうのは早い者勝ちです」
「くっそ。本部で会ったら覚えてろ。こういうのは年功序列なんだってことを教えてやる!」
「はいはい」
「年下にすげなくあしらわれる弾バカ」
「うるせー!」
「あ、米屋先輩こんにちは」
「よっ。あ、今日弁当忘れてきたの?」
「違います。京介が弁当持ってきてないって言うから私の弁当あげたんです」
「へえ……」
「別に他意はありませんから!」
「そういうところが怪しいんだよなあ」
「出水先輩煩い」
「おま、後輩のくせに生意気だな……生意気なのはこの口か?」
と、出水先輩に顎を掴まれる。
「出水先輩にだけです」
「えっ」
「京介が粗雑に扱ってもいいって言ったんで」
「京介の野郎……次会ったら蜂の巣にしてやる」
「もう私行きますね。京介待たせてるんで」
「あ、おい!」
はあ。
めんどくさい人に絡まれた。
「ねぇ、なんで佐藤さんのお弁当食べてるの?」
「今日お昼ご飯なくて」
「え!?言ってくれたら私のあげたのに」
げ。
タイミング悪い。
「私ならこんなお弁当よりもっとバランスいいお弁当作れるよ」
は?
それ、うちのお母さんが作ったやつだから。
しかも今日は私の好きな小松菜のお浸しが入ってる。
「だから?」
「明日から私が烏丸くんのお弁当作ってくるよ!」
殴りたい。
人のお弁当馬鹿にしやがって。
「別にいい」
「へ?」
「人の母親が作った弁当を馬鹿にする子に作ってもらわなくていい」
「なっ……!!」
りんごみたいに顔を真っ赤する女の子。
烏丸はあんまり人を怒らすこと言わないから、なんか意外だ。
あ、小南先輩はからかってるって言った方がいいんだけど。
「いるんだろ、真愛」
「気付いてたの?」
「なんとなく」
なんだ。
気付いてたのか。
「別にあんな言い方しなくても良かったんじゃないの」
「腹がたった。後悔はしてない」
「だからって……」
「真愛のお母さんのご飯がバカにされたんだ。俺の中ではレイジさんと同格の神みたいな存在なのに」
真顔でコイツは何を言ってるんだろう?
「あと、地味に真愛が馬鹿にされてた気がするし」
超がつくほどの鈍感男が、そんなことに気づいた……だと?
「好きな人が馬鹿にされてたら怒るのは普通だろ」
「は?」
イミワカンナイ。
「おっと。口が滑った」
「い、いつもの冗談でしょ」
「じゃないって言ったらどうする?」
神様。
突然フラグ建てるのはやめてください。
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