「改めて、一織くんお誕生日おめでとう…!」
「ありがとうございます。」
「泣かないとか言ってめちゃくちゃに泣いてしまいましたけど!もう泣きませんので!」
「ははっ、はい。」
いつも以上に優しくて穏やかな一織くんにとっても嬉しい気持ちになる。この穏やかな空気浸っていたい気もするけれど、やっぱりお誕生日だからお祝いもしたくて。
「まずはこれです…!」
「箱…ケーキですか?」
「はい!」
「…え、私の顔…?すごいですね…。」
私が作ったのではないけれど、そう言ってもらえてますます気分が浮上する。そのケーキを興味深そうにじっと見つめる一織くん。
「何の材料を使っているんだろう…。」
「あ、やっぱり気になるのはそこなんですね。」
「はい。」
「ご実家が洋菓子屋さんですもんね。」
「そうですね…。でも、あなたのお父さんも似たようなお仕事されてるじゃないですか。」
「確かに。父も同じこと言いそうです。」
一織くんとの共通点のお話を出来ていることにもついつい嬉しくなってしまう。この先も共通点が増えるといいな、なんて全く関係のないことを考えてしまう。
「どこから食べたらいいんだろう…。」
「やっぱりそうですよね…。あ、先にプレゼントをお渡ししてもいいですか?」
「そうですね、お願いします。」
改めて向き合って座り、横に置いてあったプレゼントを手に取り目の前の一織くんに渡す。
「一織くん、どうぞ…!」
「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「はい…!」
喜んでもらえるかな、喜んだ顔を見られるかな、なんてそわそわしてしまう。ずっとずっと考えて、自分なりに一織くんに渡したいプレゼントを選んだつもりだから、尚更反応が気になってしまって。
「…マグカップと…イニシャル入りのハンカチ…ですか?」
「はい…!この間、新しいマグが欲しいって仰ってましたから…。ハンカチなら普段使いも出来るしいいかなって…。あと、ハンカチに小さくネコの刺繍も入っているんですよ。」
ほらここ、と指差すと本当だ、とそのネコをひと撫でする一織くん。
「…その、なるべく普段使える物にしたんですけど…。」
どう、でしょうか…と問いかける台詞は徐々に尻窄みになっていく。あまりよく反応がわからなくて失敗だったかな、と少し思う。
「…ありがとうございます、とても嬉しいです。」
「っ、ほ、ほんと…?」
「はい。このデザイン、どちらも私の好みです。それに、前に私が言ったことまで覚えていてくれて、それを選んでくれて。すごく嬉しいですよ。」
そう言い、優しく微笑みながらお礼を告げられじんわりと感動してしまう。良かった、喜んでもらえた。
「…えへへ、喜んでもらえて嬉しいです…。」
「あなたが考えて選んでくださったプレゼントでしたら、何だって喜んで受け取りますよ。」
「…そ、そう…?」
「はい。そうです。」
でも、私もそうかもしれない。彼が私を想って選んでくれた物ならきっと何だって嬉しいし、どんな物だってそれはたからものになる。
「あ、まだ終わってないですよ…!」
「え?まだ何かあるんですか?」
「はい。形に残るもの、ではないんですけど…。」
そう告げる私に不思議そうな顔をしながらも、きちんと向き合って聞こうとしてくれる。
誕生日という特別な日に、伝えたいことがあって。
「…一織くん、お誕生日おめでとう。」
「はい。ありがとうございます。」
「ちょっと長くなるかもしれないけど、聞いてもらえますか…?」
「もちろん。いくらでも聞きますよ。」
話したいことは決まっている…けれど。多すぎて纏まりきらないかもしれないし、ごちゃごちゃしてしまうかもしれない。それでも、どうしても彼に伝えなければいけなくて。
「…えっと、いつも沢山ありがとうございます。」
「いいえ、こちらこそ。」
「この1年、一織くんに沢山お世話になったなって。」
「はい。」
「距離も遠いし、忙しいしで会える頻度は少なくても、その分沢山ラビチャやお電話してくださって。すっごく嬉しかったです。」
「はい。」
「…私、すぐ泣いちゃうし、落ち込むけど…その度にいつも優しく大丈夫ですよって言ってくれたり…。」
一織くんとのこの1年を振り返ると本当に沢山のことがあった。私と一織くんが今みたいにあまり気兼ねなくお話出来るようになったのも、去年のお誕生日からで。色々思い出すとやっぱり込み上げて来るものもあって。
「いっぱい、いっぱい助けてもらいました。」
「…はい。」
「一織くん、いつもありがとう。だいすきです。」
「っ、」
「一緒にいられると嬉しくて、お話出来るだけで嬉しくて…。こんなの、一織くんが初めてです。」
「…っ、れいさん、」
「え、へへ、一織くんだいすき…。生まれてきてくれてありがとう…。」
普段は照れるし恥ずかしくて言えないし、現に今だって恥ずかしさはあるけれど。今、どうしても伝えたかった。
「…一織くん…?」
目線を少し反らしたまま何も発さない一織くん。何かを返してほしいわけではないが、流石に無反応は少し寂しいというか。…あれ、
「…ちょっと、うるっとしてる?」
「……やかましいです。」
「…え、」
泣いているわけではないけれど、そんなような様子の一織くんを見ていたら。
「…ちょっと?また泣いているんですか。」
「…だ、だって…。」
「今日はたくさん泣きますね。」
「っ、ご、ごめんなさい…。」
「謝らなくてもいいですよ。今日はそれ以上にたくさん笑顔を見せてくださったでしょう?」
あなたを見てたら涙なんて引っ込んでしまいましたよ、と言いながら私を優しく抱きしめる一織くん。同じようにその体に腕を回して抱き着く。
「…ありがとうれい。あなたの気持ち、伝わりましたよ。」
「…ほんと、ですか…?」
「はい。いつも伝わっていますけど…、直接言葉で伝えて頂けるのはやっぱり直に伝わりますし、嬉しかったです。」
そう言ってもらえて、やっぱり照れたけれどきちんと伝えて良かったと思う。というより、あまり自分の感情を話すのが得意でない彼が応えるように話してくれるのが何よりも嬉しかった。
いつにも増して愛おしく思い、抱き着きながら再度伝える。
「一織くん、だいすきです…。ずっと一緒にいてくださいね…。」
「もちろん。…あなたも、ずっとそばにいてください。」