久しぶりの一織くんとお家デートの日。のんびりと2人きりで過ごすこの時間がとても心地良い。近況を話したり、ぬいぐるみに癒されたり。こんな穏やかな時間がずっと続けばいいのにな、なんて。
「れいさん、少しいいですか?」
「はい、なんですか?」
「…ちょっと、」
常に的確で簡潔な話し方をする彼らしくない、少し濁された返答に首を傾げながらも続きを待つ。
「あなたに、お渡ししたいものがあるんです。」
「…?」
「…手、出してください。」
渡したいものとは一体なんだろうか。確かに記念日だったりはあったけれど、電話やラビチャの中で物のやり取りをするなどということは話していなかったような気がする。
そう考えつつ、言われたとおり素直に彼に手を差し出す。差し出した手を優しく握られ少し驚いていると、手の上に小さな箱を乗せられる。
「…これって…?」
「……あなたに、どうしても渡したくて。」
「…開けても?」
「はい。」
どうぞ、と許諾を頂き遠慮なく箱を開ける。
…すると、そこには。
「っ、え、なんで、」
「れいさん。」
「は、はい、」
「…真剣に、そう遠くないことと思って考えておいてください。そういう理由です。」
箱の中身はシルバーに彩られた指輪。
「でも、まって、前にも頂きましたよね、」
「前の物とは色も形も全く違うでしょう。」
「そうだけど、でも、」
「あれは私の、あなたへの独占欲とでも言いますか…。」
「独占欲…。」
「でも今お渡ししたものは私だけでなく、あなたにもいろいろと考えておいて欲しいという、そんな意味です。」
いろいろ考えておいて欲しいって、つまりはこの先、今以上に彼と距離が近づくことがあると期待してもいいのだろうか。高ぶる気持ちと期待している自分を実感していると、彼に優しく手を握られる。
「つけないんですか?」
「あっ、つけます…!」
「急に動かなくなったから驚きましたよ。」
「あはは…ちょっとびっくりしちゃって。…あ、可愛い…。」
「やっぱり。よくお似合いですよ。」
彼が選んでくれた物だから私に不釣り合いすぎる物ではないと思ってはいたけれど、それでもそう褒められると嬉しいもので。ついつい頬が緩んでしまう。
「れいさん。」
「はい?」
「……。」
名前を呼ばれ、改めて彼に向き直ると真剣な顔で見つめられる。近距離で見つめられて少しばかり照れてしまうが、そんなことを言えるような空気ではない。
彼が私を見つめるように、私も同じように視線を合わせて彼を見る。すると、程なくして意を決したような表情を浮かべた彼が口を開く。
「ずっと、一緒にいてください。」
「……え、」
「今はまだ、ここまでしか言えません…けど。この先、ずっと。私のそばにいてください。」
「…う、は…え?」
「そんな想いが…それ、今あなたがつけてくださっている指輪に込められています。」
想像を遥かに超えることを告げられて正直理解も頭も何もかもが追いついていない。ただわかるのは、彼が発した言葉に対して己の心臓が大きく音を立てて鳴っているということくらい。
「…ずっと、一緒…?」
「はい。ずっと、一緒に。」
「わたしで、いいんですか、」
「あなたがいいからそう言っているんですけれど…。」
「っ、…そんなの、こっちからお願いしたいくらい、」
「…というと?」
「…ずっと、おそばにいさせてください…。」
「…はい、もちろん。」
なかなか見せてくれない優しい顔でそう告げられたものだから、ついに思考が追いつかなくなってしまいつい目の前の彼の胸に倒れ込む。そんな私を受け止め、背中を撫でてくれる彼に対して何度目かわからないときめきをおぼえる。
「どうしたんですか。」
「ちょっと、いっぱいいっぱいで、」
「…こうしていたら落ち着きますか?」
「あっ、えっはい、んん…ど、どうでしょう…?」
どちらなのか全く理解出来ない私の返答にどっちですかと笑いながら突っ込む彼。
その声も、私を抱きしめる腕も何もかもが優しくて、不確定な "ずっと" を自分でも気が付かないうちに強く望んでしまっていた。