「…どこ行っちゃったの…。」
慣れない場所、見慣れない景色。
お友達に会いに都会に出てきた私は浮かれて大切な物を落としてしまった。
それに気づいてから真っ青になって必死に探す。失くしてからそう時間は経ってないはず…、と思い近くを捜索する。が、見つからない。
「……っ、」
大事な大事な物。
私が1番尊敬している方からの贈り物。いつだって持ち歩いて、いつだって大事にしていたのに…。そんな大切なものを失くした自分に心底腹が立つと同時に悲しくて泣きそうになる。
…自業自得なのに。
「……あの、」
「っ、はい…?」
突然、声をかけられそちらを向く。
するとそこには、どこか大人びているクールそうな男の人が。
「もしかして、こちらの落とし主ですか?」
そう問いかけてくる彼の手には私が探していた物が。
「っ、はい!何処かで落としてしまって…ずっと探していたんです!」
「良かった。ではこれを。」
「拾って頂きありがとうございます…!」
そうして目の前の男の人から私の探し物を受け取る。
あぁ、良かった…と心から安堵する。
「これからは気をつけてくださいね。」
「本当にありがとうございました…!あ、何かお礼を…!」
「お礼は結構です。困っている方の力になれて私も良かったです。それでは。」
そう言いその場を立ち去る彼。
ちゃんとお礼したかったな…、優しい人で良かったな…と独り言つ。
……あ、お名前…聞き忘れちゃった。
もう会うこともないのだろうな、と思いながらもなんだか心が温かくなる。それも、助けてくれたあの人のおかげ。
___これが、和泉一織さんとの初めての出会い。
…また別の日、用事があって同じ場所へ来たときのこと。
…失敗した。こんな時に、遠出をするんじゃなかった…。
朝起きたときから体に違和感はあった。でも気のせい…!と言い聞かせて1日過ごしていた。ところが用事が済んだ途端、糸が切れたように体調が悪くなる。
「っ、はぁ、」
立っていられず思わず路上に座り込む。変な汗も出てきた。取り敢えず汗だけでも拭こう…とハンカチを取り出し、そのまま蹲る。
どうやって帰ろう。焦りと不安にかられていると。
「大丈夫ですか?」
と、声をかけてくれる人が。
具合が悪く、声も出せずにいた私は顔を上げるのに精一杯。さっき取り出したハンカチを口元に当てながらゆっくり声のする方を向く。
「…あなた、この前の…。」
「…あ、」
声をかけてくれたのは、先日私の落とし物を拾ってくれた心優しい男の人だった。
「大丈夫ですか?立てますか?」
「っ、な、なんとか…。」
支えてもらいながらゆっくり立ち上がる。
そしてそのまま近くの座れる場所まで移動する。
「体調が悪くなったんですか?」
「はい…。朝から優れなかったんですけれど、どうしても外せない用事がありまして。」
「そうだったんですね。」
「…この前も今日も、助けて頂いてありがとうございます…。」
「いえ。」
「…一度しかお会いしていないのに…よく、私だって気づきましたね。」
そう。さっき彼は この前の… と言った。
一度しか会っていない私によく気がついたなぁ…と思う。
「…ハンカチ。」
「ハンカチ…?」
「この間、そのハンカチを探していたでしょう。それで思い出したんです。」
「あぁ…、これ…。」
「…いつも持ち歩いているんですか?」
「はい。このハンカチ、大事な人から頂いた大切なものなんです。」
「なるほど。それであんなに必死に探されていたんですね。」
ハンカチで気づいたのか。
すごい記憶力だなぁ…と、感心する。
座って少し話をしていると、体調も落ち着いて来たみたいだ。
「少しは良くなりましたか?」
「はい。歩くことは出来そうです。お時間取らせてしまってすみません。」
「いいえ。それなら良かったです。では送りますよ。」
「え!?それは悪いです…!大丈夫ですから…。」
「まだ顔色悪いじゃないですか。このまま放って帰るほうが後味が悪いんです。送らせてください。」
「じゃあ…お願いします。」
意思は曲げないからおとなしく従え、とでも言うような感じて告げられては受け入れるしかない。少々罪悪感はあるが、素直に従うことにする。
今日はこっちの友人宅に泊まることになっているので、行き先はそこだと告げる。
「すみません、ありがとうございます…。」
「いえ、人助けですから。」
出会って2回目の私にこんなに親切にしてくれるなんて、すごく優しい人なんだなと思ったし、すごく嬉しかった。
「ここですか?」
「はい。本当にありがとうございました。あの、今度こそお礼をさせてください。」
「お礼なんていいんですよ。」
「だめです!それじゃあ私の気が済みません…。」
「そこまで言うなら連絡先、交換しましょう。これ、私の連絡先です。体調が良くなって時間があるときに連絡ください。」
「ありがとうございます…!」
「どういたしまして。それではお大事に。」
彼と出会ったのは偶然でしかない。
それが2度もあるなんて…。と、不思議に感じた。彼に出会ったのはこのハンカチのお陰なのかな…と思いながら。
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