「あ、一織くん…!」
「れいさん!?」
彼と会う約束をしているときはこうして無断で彼のことを易まで迎えに来たりする。そのたびに驚きつつも喜んでくれることが嬉しくて、少しその行動を窘められてもやめることができない。例に漏れず今日もとても驚いているようで。
「まだ朝早いじゃないですか!一人じゃ危ないっていつも言っているでしょう?」
「え、へへ…だけど一織くんに早く会いたくて…。」
「なっ………、」
「だからごめんなさい、許してほしいです。」
「っ、そ、そんなふうに謝れば私が許して差し上げると思ったら大間違いですからね!」
「…え、許してくれない…?」
「許しますけど…………。」
相変わらず甘いなぁなんて思いながら彼のことをにこにこと見つめているとじとっとした視線を寄越される。
「?」
「…本当に心配しているんです。何かあってからでは遅いんですから。」
「何もないと思うけど…。」
「そういう慢心が万が一を招くんですよ。わかってますか。」
「は、はい…。」
「…ちゃんということ聞いて。いいですね?」
「はい…。」
そんなこんなで早朝の外出から始まり、なぜか暗くなってからの一人での外出控えるように言われる。以前から言われていたものの、そんなふうに真剣な目で言われたら頷くほかなかった。
「ここにいても仕方ないですし、そろそろ行きましょうか!」
「そうですね。って、あなた、」
「なに…っ、!」
「……手、冷たすぎませんか。いつから待っていたんですか。」
「わ、待ってください、そんなに握ったら一織くんの手も冷たくなっちゃいますよ!」
「そんなことはどうでもいいです!…赤くなっているじゃないですか。」
「あ、はは…。」
「あははじゃありませんよ!大体私が昨年お渡しした手袋は?」
「ご、ごめんなさい…。家を出るときに忘れてしまって…。」
「はぁ……相変わらずうっかりですね。」
彼はそんなに手が冷たいのなら体も冷えているでしょうし、余計早く暖かいところへ行ったほうがいいでしょう、と続けながら私の手を握ったまま歩き出す。彼の半歩後ろを歩きながら、自分のカバンの中身をちらと見る。
………ばれてない、よね?
「れいさん?どうかしましたか。」
「ううん、なんでもないですよ!一織くんの手が温かくてなんか心までぽかぽかします。」
「あ、あなたの手が冷たいからこうしてるだけです!」
「え、へへ…一織くんと手を繋げて嬉しいです。」
「恥ずかしくなるようなこと言わないでくれませんか!」
ちょっと照れている様子の彼の顔を見上げながら胸中で呟く。
………嘘ついてごめんね、一織くん。
そう呟きながらカバンの中からちらと見える昨年、彼からもらった手袋を見やった。
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