「あなたが好きです。」

「……はい?」


今、彼はなんと言った?


「私とお付き合いして頂けませんか。」


___ことは数日前に遡る。

助けてもらったあの日から、お礼も兼ねて何度か彼と連絡を取ったりたまに2人で会ったり交流をしてきた。
そんなある日、彼から一件のメッセージが。

『今度の休みの日にお会い出来ませんか。』

彼からの連絡が嬉しくて、なんだか夢のようで。もちろんふたつ返事で了承した。
……浮き足立つのも仕方がない。何度か交流をしていくうちに、いつの間にか彼に惹かれて、ついには好きになってしまっていたのだから。

彼が私と連絡を取ってくれるのは、私にその気がないと思っているから。
だから私もこの恋心を隠していよう。だからお願い、あわよくば、なんて考えないから彼と仲良くさせてください。

『では、次の休みの日にいつもの場所で。』


___そして今日に至る。

いつものようにカフェでお茶をしながら他愛のない話をして、近くの公園まで散歩をした。なんだかカップルみたい、なんてお花畑の頭で考えていた。

そして冒頭に戻る。
彼は今、私に好きだと言わなかった…?

「あの、えっと…?」
「なんですか。」

いつもと変わらない表情。いつもと同じトーン。そう、彼の様子はいつもと変わらない。……もしかして、聞き間違え?いや、確かに彼は 好き というワードを発した。じゃあ何か、私の恋心がバレたのか。

軽いパニック状態に陥る私。
それを見て不思議そうな顔をする彼。

「あの、一織さん、」
「はい。」
「今、何とおっしゃいました…?」
「…聞いてなかったんですか?」
「いえ、ちょっと混乱していて…。」

まずい。彼の顔を見られない。目があったら思いが全部バレてしまうような気がして。

「左倉さん?」
「あの、ごめんなさい…。」
「……それは、先程の返事と受け取れば?」
「え!?だからあの、」

咄嗟に顔を向ける。彼と目が合う。
あ、ダメだ、零れる…と、思ったときにはもう遅くて。

「左倉さ、」
「一織さん、好きになってしまって、ごめんなさい…。」
「は?」
「私、一織さんが好きなんです。でも、一織さんはアイドルだし、私はただあの時助けてもらっただけの一般人で…。分をわきまえろって感じですよね…。」
「あの、」
「でもこうしてお話したりしていくうちに、厄介な気持ちが芽生えて、好きだなんて…。」
「左倉さん、」
「私と一織さんは釣り合わないですから!思い切り振ってください…!」
「ちょっと!なんでそうなるんですか!あなた本当に私の話聞いていなかったんですか!?」

彼の声にハッとする。私は今何を口走っていた?

「最初に言いましたよね。私はあなたが好きです、と。それが何であなたを振る話になっているんですか。」
「いや、えっと。」
「それよりあなた、私のことが好きだって言いましたよね。」
「は、はい…。」
「なら、問題ないでしょう。私と付き合ってください。」

2度目の彼からの申し出。
よく見ると少し頬が赤らんでいる。
…彼は私のことが好き?夢じゃなくて?

「い、一織さん…。」
「…何ですか。」
「私、ただの一般人で、」
「だから?」
「一織さんに釣り合うはずもなくて…」
「…あなたは私が好きなんじゃないですか?」
「好きです…。」
「なら、いいでしょう。」
「本当に私でいいんですか…?」
「あなたがいいから告白したんでしょう。左倉さん、返事を聞かせてください。」
「わ、私も好きです…。私で良ければお付き合いしてください…。」
「はい。これからよろしくお願いします。」

頭の中がごちゃごちゃだ。自分が何を言っていたのかほとんど覚えていない。でも、彼の見たことのない嬉しそうな顔だけはハッキリしていて。あぁ、恋焦がれていた彼と、和泉一織さんとお付き合い出来るんだなぁ、と思った。







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