『愛される範囲での魅力的な悪さ、というところでしょうか。』
これを聞いてなるほど、と思ったのは記憶に新しい。一織くんにとっての小悪魔のイメージはそれなんだとか。
愛される範囲での魅力的な悪さ……なんだろう。迷惑にならない程度のわがままとか…?でも魅力的なのか…?
うーん…と1人唸る。
「何を考え込んでいるんですか?」
「…あ、一織くん。」
「なんだか少し険しい顔をしていましたけれど。考え事ですか?」
「うーんと、」
「……?」
「…小悪魔ってなんでしょう…。」
「小悪魔…?」
言った後にはっとする。いや、本人に聞いちゃだめでしょう…。
「私は程遠いといいますか…。どんなのが当てはまるんだろうって考えてたらよくわからなくなってしまって。」
「…程遠い?」
「はい。やっぱり魅力的な女の人は多少小悪魔な部分があるのかなぁって思ったんですけど…、そんな合わせ技は私には早すぎましたかね。」
うん。それ。美人なお姉さんとかが小悪魔とかってめちゃくちゃ魅力的だと思う。私も翻弄されそう。だけど私はそれとは違うなぁ…と思う。
「…意識的に小悪魔になろうと?」
「いえ…。小悪魔ってなんなんだろうって考えただけです。大体うまく出来そうにないですし…意識的になろう!なんて思ってはいませんし考えたこともなかったです。」
「…でしょうね。あなたは計算高い人ではありませんから。」
嘘がへたくそな性格も相まって計算して人と関係を作る、っていうのがもっぱら苦手だったりする。だからそんな私が小悪魔なんて考える必要なかったのかな。というか、あれ、なんで考え始めたんだっけ…。
そう考えていると考えるときの癖で手で頬を触ってしまう。その時カサついた感触が頬にあたる。あぁ、指が乾燥してささくれだっているのか。
とりあえず考えるのをやめ、ポーチからハンドクリームを取り出す。新調したばかりのハンドクリームは香りもよくてお気に入りだったりする。
「ハンドクリーム新しくしたんですか?」
「あっ、気づきました?」
「はい。パッケージが以前よりかわ…ファンシーなのになったなと思いまして。」
「でしょう?これパッケージだけじゃなくて香りもお気に入りなんですよ!っと…出し過ぎた…。」
「全く…。無駄に出してしまっては勿体無いでしょう。ちゃんと量を考えないと。」
そのとおりだ…。出しすぎた分をどうしようか考えてふと思いつき、それを行動に移す。
「ぅわっ!突然何なんですか!?」
「一織くん手とっても綺麗だから不必要だとは思うんですけど…出しすぎてしまったのでお裾分けです!」
と言いながら私よりも大きな一織くんの手に余ったハンドクリームを塗る。それなら無駄にもならないし、一織くんにもお気に入りのものを紹介できるし最善策!
「これ、ベタつきとかも少なくて…なかなか良くないですか?」
「そ、うですね…。」
「…よし、丁度いいかな!」
うんうん、我ながらいい考えだったんじゃないか、と謎の自画自賛を頭の中で並べながらクリームを仕舞う。お気に入りのクリームの香りに癒されながらこの後は何をしようかな、なんて考えてみる。
……目の前の真っ赤な顔をしている一織くんには全く気がつかずに。
「…っ、こういうことを無意識にやるのが…あなたの小悪魔なところなんですけど…!」