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青々と茂った草原に、真っ白なテントが5つ並んでいる。ひときわ大きなテントの両側には青い旗が立てられ、金糸とシルク糸で白竜の文様が描かれている。
そのテントから、青い装束に大きな盾を背中に背負った少女が出てきた。あどけない美貌に反してその立ち振る舞いには一切の隙がなく、しっかりと定まった瞳が印象的だった。
「カレン様!」
そこへ一人の兵士が駆け寄ってきた。まだ若く、騎士団指定の鎧は傷一つなく、真新しい剣を下げている。
「テントの設営と、警備の配置が完了しました!」
「ありがとう。」
カレンは立ち止って、若い新人騎士に礼を述べた。
「新人騎士?」
「はっ!トラヴィスと申します!」
覚者の中でも主力として知られているカレンに尋ねられ、トラヴィスは嬉しそうに答えた。
「そう、あなたがトラヴィスね。ゲルトさんが話してたわ。期待してるって。」
「おっ、恐れ多き……!」
身を硬くしたトラヴィスに、カレンは小さく笑みを漏らした。
「もっと肩の力を抜いて。そんなに固くなってたら、いざという時に動けないわよ。」
「は……、はっ!」
トラヴィスは顔を赤くして敬礼した。
「それで、問題は特にない?」
改まってカレンが聞くと、トラヴィスはふと顔を曇らせた。
「それが……」


カレンはトラヴィスに案内され、一番端の小さなテントにやってきた。警備の騎士たちは顔をしかめて何やら話し合っており、やってきたカレンに気が付くと、待っていたかのようにすぐに駆け寄ってきた。
「カレン様。奴ら、好き勝手して、全くいう事を聞かないんです。」
「一度痛い目を見せてやってもいいと思いますが……。」
既に鼻息荒くしている2人の警備騎士をなだめ、カレンはテントに向かった。テント内からは、談笑する声が漏れ聞こえる。カレンがテントの垂れ幕を一気に捲し上げると、その声は一斉に静まった。
「全員テントから出ろ。」
カレンが言うと、それまで談笑していた面々は顔を見合わせた。中には悪意ある様子でカレンから顔を背ける者もいた。そこで仕方なくカレンは騎士たちに目配せし、1人残らずテントからひっぱり出した。そして騎士たちに命じ、バケツを8つ持ってこさせ、そいつらの前に並べた。
「そこの川で水を汲んでこい。」
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