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眩しいほどの青い芝が延々と続き、地平線には群青に霞む切り立った山が聳えている。そんな鮮やかな景色の中に、真っ白な点がいくつも集まっているのが見える。あれはテントだ。白地に青と黄色の紋様が描かれた旗もいくつか見える。おそらくそれは、なんらかの団体の野営地だった。
近くの雑木林に身を隠している男女数名は、その野営地を虚ろな目で眺めていた。もう2日ほど何も飲まず食わずで、精神的にも限界だった。あの野営している人間たちに助けを求めたら、最悪捕えられて殺されるかもしれないが、どちらにしてもこのままでは餓死してしまうのも明らかだった。
このわけのわからない広大な大地に放り出されて3日目。彼らは希望も失いかけていた。

「カレン様!」
巡回当番をしていた騎士がひとり駆け寄ってきて、カレンは踵を返した。騎士は敬礼をしっかりとし、用を話し始めた。
「行き倒れになっていた者を5名発見し、確保しました。敵の可能性もありますが、どうなさいますか?」
「武器は?」
「所持していません。南西の雑木林で2名が倒れ、3名が衰弱しているところを発見しました。衣類はしっかりしていたので、強盗に遭ったわけでもなさそうですが……妙な奴らです。」
「……会わせろ。」
「はっ。」
騎士の先導につき、カレンは小さなテントに足を踏み入れた。そこには、女が3名、男が2名、やつれた顔で後ろ手に縛られていた。その中の4名が、カレンを見てはっとした。カレンはふいに冷たい目をして彼らを見下ろした。
「カレン様、いかがなさいますか?」
騎士が指示を仰ぐと、一人の女が衰弱した目で信じがたいようにカレンを睨み上げた。カレンはじっとその女を見下ろし、静かな声で言った。
「水と食事を与え、保護してやれ。最低限でいい。神殿まで保護し、保護施設へ届ける。」
「はっ!」
了解した騎士に後を頼み、カレンはテントを出た。漏れ出そうになった溜息をこらえ、指揮官用の大きなテントへ向かった。
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