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2017/05/07 18:21


メリッサの分岐点をなぞる

agnelloのあいらさん宅のみやこちゃんと守沢千秋をお借りしています。
芸能界に入ってからもう既2年以上が経とうとしている。アイドルとして活躍している守沢千秋は、スタントマンとして学生時代から現場に顔を出して挨拶をして回っていたその人付き合いのよさもあって、1年目で念願の夢だったヒーロー、子供向け番組の特撮番組で主役を務め、学生時代から子供達を対象に休日ヒーローショーをやっていた経験から子供向け番組にも引っ張りだこだ。
そんな華々しく熱い、皆のヒーローである守沢千秋という青年は、ずっとヒーローだった訳ではない。寧ろ、ヒーローに憧れる非力で引っ込み思案で、言いたいことを言えずに居た期間もあるし、仲間達には見せられない情けない姿だって沢山ある。けれど、皆にはそんな姿を見せられずに一人で抱え込んでしまいがちな守沢千秋が変わったのは、一学年下のプロデュース科に転入してきた後輩、東みやこの存在だった。
弱くて情けない姿も含めて、みやこは彼のヒーロー像を応援していたし、諦めずにひた向きに夢に向かって全力で走る守沢千秋が、ヒーローとしても、そして男性としても好きだったのだ。
ヒーローも、時には休む時間が必要であり、安堵出来る居場所が必要だ。そんな守沢千秋の心の寄り所として、みやこは彼を支えていたのだ。

3年生の時にクラスメイトで、同じバスケ部に所属していた綾瀬莉世は、守沢千秋が流星レッドとして輝くことの出来なかった時期を知っていた。流星隊自体、三年生になって初めてメンバーが五人揃い、二年生の頃、彼以外はヒーローという夢など非現実的だと笑った。千秋が現在のように声を大にしてヒーロー像を語ることも出来なかった姿を莉世も知っていたが、何をすることも出来なかった。ただ友人として、話すだけ。
だからこそ、莉世は後輩であるみやこに感謝せずにはいられなかった。千秋くんを支えてくれて、夢を支えてくれてありがとう、と。
そんな千秋と今日、飲む約束をしていたのは同じく彼のクラスメイトだった羽風薫だった。彼もまたアイドルとして活躍し始め、現在は朔間零と共に活躍している。相変わらず女性の扱いに長けているフェミニスト部分が目立っているが、学生時代と違って女遊びをしている訳ではなく、現在は莉世と同棲をしている。
今回千秋は薫と飲み、その間に莉世とみやこは別の店で女子会というものを開いていた。

既に成人をしていてお酒を飲めるようになっていた二人は、飲み屋の個室でおつまみとお酒を注文しながら話し込んでいた。仮にも芸能界に入っていてアイドルをしている身だ。それなりに知名度も上がって来ているから目立たないように気を遣ってのことだった。芸能界での活動のことや苦労話から始まり、話はお互いのプライベートなことにまで発展していた。
「守沢くんも忙しくしてるだろうけど、みやこちゃんを寂しがらせたりなんてしてないよね。守沢くんって気遣いがちょーっと足りない所があるからさぁ」
「気遣いが足りていないか!?うむ、なるべく連絡をしているし、帰れる時は帰るようにしているぞ。あと休日はみやこと一緒によく特撮を見るんだが……」
「あー……なんか二人っぽいよね〜まぁ、そんなみやこちゃんも可愛いと思うけど?」
「羽風にそんな風に褒められるのは嬉しいな!」
「えっ、ちょ、そこは俺には言われたくないって言う所なんじゃないの?」
千秋の予想外の返答に、薫は困ったような顔に変わる。女癖が悪いという印象がどうしても拭えない自分に彼女を褒められても嬉しくないだろうと思っていたし、珍しく彼が独占欲を見せてくれてもそれはそれで面白いのに、と思っていたのに、そういう所が鈍感と言われる守沢千秋なのだろう。
しかし千秋はその言葉の裏の意味を考えようとはしないし、あくまでも正面から受け止める。そして薫が都を褒めているとしても他意が無いことなど分かっていたから気にする余地などなかった。
「俺みたいなタイプに彼女を褒められたら危ないって思わないとさぁ。苦労するよ?」
「?羽風には莉世が居るだろう?」
「……、あー、まぁそうだけど……守沢くんってそういう所が空気読めないっていうかさぁ」
千秋の、的を得た指摘に、薫は僅かに頬を染める。自分みたいな軽薄そうな人間に彼女を攫われてはいけないから敢えて忠告しようとしたのに、率直に正論で論破をしてくる。こういう所がいい意味で非常にやり辛い。どんなに過去に女性関係で問題があったにしても、薫が莉世を真剣に愛していて、彼女の存在を心の支えにしているのは学生時代から変わらない事だ。千秋には二人の間に何があった鎌では解らない。けれど、それでも莉世が隣で精神的に支えるようになってからは、薫のパフォーマンスも一皮むけたような、より一層魅力的になったことは千秋にも分かっていた。
「俺は学生時代に伝えないと誰かに取られるかもしれないって思って焦ってたけど、守沢くんはその辺りのんびりだよね?みやこちゃんと付き合い始めたのも卒業後って話だし」
「あの時は、俺もよく自分の感情を理解していなかったからな。居なくなってから、傍に居ないと駄目だと気付いたんだが……確かに鈍いのかもしれない。俺はみやこを待たせてばっかりだなぁ」
「……守沢くんのそういう所も、相手は受け入れてるんでしょ。……俺も分かるし」
「?どういうことだ?」
千秋の問いに、薫は「男には教えないー」と手でしっしと追い払いながら酒を煽るが、待たせられた相手は確かに悶々と葛藤して居たことだろうと思いながらカランと音を立てて氷の残ったグラスをテーブルに置く。それは、薫にも数カ月間覚えのあった感覚だ。こちらは意識をしているのに、相手は気付いてくれないし、そもそも恋愛感情を抱く余地さえないと感じると、苦しくもなる。
それでも隣に居てくれることが幸せで、どうして自分を異性として見てくれないのだろうかと思いながらも友人でも隣に居てくれる現状に甘えてしまうのだ。莉世のそういう一面も含めて、薫は安心感を覚えていたことも確かだった。だから、千秋と都の時間が掛かった関係も理解できるのだ。
「それより、守沢くんとみやこちゃんって同棲してるんでしょ?そこら辺の話も聞きたいんだけどなぁ」
「特に変わったことはないと思うが……美味しい食事は作ってくれるし、どんなに遅くたってみやこは待っていてくれるな。それに、俺の出る番組を見て面白いと喜んでくれるんだぞ!あぁ、あと俺が買って来た特撮グッズとか、おまんじゅうぬいぐるみを弄ってるのは可愛いな」
「君それ無意識で言ってる?」
千秋の直球過ぎる惚気話に薫は無意識で言っているのだろうかとえんどう豆を摘まみながら甘い甘いと言わんばかりに呆れた顔をするが、本人は純粋に顔を輝かせて爽やかに笑い、本心で言っているようだからタチが悪い。みやこもそんな千秋に振り回されるだけではなく受け入れ慣れているから相性がいいのかもしれないが。千秋くんはアイドルといえども、このまま結婚しても受けがかなり良さそうだと思いながら薫は新しく注文したサワーを千秋の前に置く。
「守沢くんはもうそのままの自然体で許されるよね……あーあ、惚気話を聞かされて酔いも醒めた気分だよ」
「?す、すまない……?しかし、莉世と羽風も今一緒に住んでいるんだろう?」
「まぁね。莉世ちゃんが俺の我侭聞いてくれたって所かな」
そう呟いた薫の表情は柔らかく、嬉しさが滲んでいた。
アイドルになる為に、羽風の家を出た薫は父親の反対を押し切って高校卒業と共に一人暮らしを始めたが、数カ月経った頃に莉世に同棲して欲しいと申し出たのだ。狡いとは自覚しているが、自分が頼めば莉世は受け入れてくれるのではないかと思っていた。
莉世も薫のアイドルとしてのキャラクターを十分理解しているから一般人と同棲していることがばれては不味いのではないかと色々考えたが、了承して今に至る。人の惚気話にご馳走さまだと肩を竦めていたが、薫自身はことあるごとに相棒としてコンビを組んでいる零に惚気話を零していた。
昨日の莉世ちゃんが可愛くてさ、という話を振っても、零としては莉世の保護者のような気分で幸せそうな二人に満足げに話を聞くのだ。人の幸せばかりを喜んでしまう彼らしいが。

千秋と薫のお酒を飲むペースは珍しく緩かった。千秋がそんなに飲まないタイプということもあるけれど、互いの彼女について語り合うことで満たされていた、と言うのが正しいのかもしれない。
――一方、女子会を行っていた二人は、甘くて美味しい果実酒が飲み放題ということで盛り上がっていた。
こちらも自分達の近況について話し始めていたが、日常のことを離すとなると自然と、互いの彼氏についての話に話題も移る。
「へぇ、やっぱり千秋くん忙しいんだね。撮影で数日開けるとかよくあるんだ」
「まめに連絡は取ってるんですけどね。莉世先輩の方はどうなんですか?多分羽風先輩もテレビを見る限り忙しそうだと思うんですけど」
「薫も雑誌の撮影とか入ったりするし、あの通りフェミニストだからこそ真剣さを見せる俳優としても女の子達からは人気があるみたいで。自分でそろそろ抱かれたい男ランキングとかあったらランクインしそうとか言ってるよ」
「あはは、羽風先輩らしい……でも、莉世先輩的にはそれってどうなんですか?」
「え?」
妬いたりしないのか、という問いに、莉世は一瞬目を丸くして考え込むように口元に手を当てて唸る。しかし、莉世はそれも薫の女の子を惹きつける魅力の一つだと学生時代から理解していたから、妬く感情よりも、もし仮にそのランキングに入ることになったら、彼がそれだけアイドルとして人気になっているということを示すものだと考えていた。
「……みやこちゃんは、千秋くんが『皆のヒーロー』になって人気になるのは、妬けちゃう?」
「……いえ、それが千秋くんの夢だったし、ヒーローとして活躍できる千秋くんを見られるのは私も嬉しいから。でも、そうじゃない千秋くんが居ることを知ってるから、それだけで十分だと思うんです」
「うん、そういうことなんだよね。舞台に立ってる時もテレビに居る時も、マイクを持ってる時も皆に夢を見せてくれるアイドルだけど、そうじゃない素の自分を見せて安心してくれてるから、それで幸せだなぁって思っちゃうんだよねー」
時々調子に乗るけど、と呟きながら莉世はふふっと微笑み、薫には普段言わないような本音を零した気恥ずかしさを紛らわすようにコップに残っていたお酒を一気に飲み干す。甘い味が口内に広がって、ほのかな酒の香りが鼻を抜ける。
彼らはファンに愛されて、愛を行動で返して喜ばせ、それを自身の喜びとして活躍するアイドルなのだ。
確かに全く妬くことが無いといえば嘘になるだろう。それでも、みやこも莉世も、アイドルとして華々しく活躍して愛される彼らの姿に喜びを感じていた。ただ、疲れた時は何時でも心の拠り所になれるように、そう願っている。
特に、みやこと千秋の関係について莉世としては色々と感じるものがあったのだ。千秋がこうしてヒーローになる夢を叶えられただけではなく、それを共に喜んでくれる人が傍に居るのは友人としても喜ばしいことだった。その相手が良く知る自分の後輩なら、尚更のことだった。二年生の千秋は、今の様に輝いていなかった。
「みやこちゃん、ありがとうね。千秋くんの夢を応援してくれて。彼を、支えてくれて」
「そ、そんなこと……」
「千秋くんはきっと無意識に、自然に一人で頑張っちゃう人だから、みやこちゃんに弱音とか吐けるんだなぁって思うと安心するんだよね」
だから、千秋くんを好きになってくれて、ヒーローという夢を共に追い掛けてくれてありがとうとお礼を述べる莉世に、みやこは僅かに頬を染めながら首を横に振る。自分はそんなに特別なことをしていないつもりだ。今だって、千秋をちゃんと支えられているかどうかは分からない。それでも彼の友人である莉世にそう言われるのは、堪らなく嬉しかった。
「あーあ、よく助っ人に来てくれてたとはいえ、みやこちゃんがバスケ部だったら良かったんだけどなぁ。英智くんにみやこちゃんを下さいって言えばよかった」
「も、もう、莉世先輩……っ」
「冗談だって。さてさて、千秋くんとみやこちゃんとの惚気話を聞く為にも今夜は呑んで吐き出しちゃおう?」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、メニューの紙を眺めて次に注文するお酒を選び始める莉世に、みやこも先輩を何とか乗せて、あまり話そうとしない薫との話を聞き出そうとお酒を飲み進めるのだが、まさか女子二人で酔っぱらうことになるとはこの時は予想もしていなかった。

薫と千秋の飲みもほろ酔い程度で済み、そろそろ締めを頼んでお暇しようと考えていた所に、薫の携帯の着信音が鳴り響く。誰かと思いながら画面を覗くと、莉世の名前が表示されていたから、千秋に「莉世ちゃんからなんだけどちょっといい?」と断りを入れて、通話ボタンを押して携帯を耳に付ける。現在、千秋の彼女であるみやこと食事を共にしている筈だ。
「もしもし莉世ちゃん?」
『あー、かおるー」
「えっ、莉世ちゃん?なんかちょっと様子変じゃない?もしかして酔ってる?」
『んー、それなりに飲んだけど!あっ、みやこも居るから代わる?』
『千秋くんー!』
耳越しに聞こえて来たみやこの明るい声に、薫と千秋は顔を合わせて二人が酔っていることを察した。流石に帰れないレベルではないかもしれないが、それでもこんな時間に酔った女子二人が家に向かって一人で帰って来るのは危ないと、二人は珍しく意見が合ったのか、無言で頷く。
「女の子だけで飲んでふらふらになって、変な男に掴まるの、すっごく怖いんだけど〜?」
『薫が居ないから寂しかったんですー。薫の好きな所話してたら楽しくなっちゃってついつい飲んじゃったの〜』
受話器から一旦耳を外した薫は顔を押さえて項垂れた。とんでもない爆弾に、帰ったら寂しいなんて言われない位に甘えさせてあげようと思う位に。
「可愛い……」
「どうした羽風!」
「ちょっと、みやこちゃんに代わってくれる……?」
一旦整理をする時間が欲しいと、薫は莉世にそう告げて、携帯を千秋に渡す。確かに肝心な時はストレートに愛情を伝えてくれる子ではあるのだがあまりに不意打ち過ぎる。ほろ酔いの思考をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられている気分だ。悶絶する薫に疑問符を浮かべながら、携帯を受け取った千秋は受話器越しに居るみやこに声を掛ける。
「かなり飲んでいるようだが大丈夫か!」
『莉世先輩よりは大丈夫〜、でも千秋くんが傍に居ないのは寂しいな』
「そうかそうか、今日のみやこは甘えん坊だなっ!安心しろ、ヒーローがすぐに迎えに行くからな!」
「え、何で守沢くんそんなにすんなり受け入れられるの」
これが鈍感と言われる所以なのか、笑ってみやこの甘える声に応える千秋に、守沢くんらしいけどさぁ、と薫は溜息を吐く。
そして今居るお店を何とか聞き出し、今自分達が居る場所から案外近かったことを幸運だと思いながら、コンビニで水を買ってから二人は酔った二人の居るお店へと向かった。二人は既に会計は済ませていたのか、お店の外の壁際に寄りかかって楽しそうに会話をしていた。夜の暗さで目立たなく放っているが、結構顔が赤い。この辺りは治安が良いとはいえ、酔った女子二人で居るのはやはり危ない。
酔いが醒めてからそのことはちゃんと言っておかないといけないなと考えながら、薫は二人が居た店の看板を見上げる。果実酒のお店のようだが、アルコールを強く感じない上にジュースのように感じてつい飲み過ぎてしまうから加減が分からなかったのだろう。
「まったく、冷や冷やしちゃったよ」
「大丈夫か!」
二人が来たことに気付いて、みやこと莉世は顔を輝かせる。まるで犬が飼い主を見付けて尻尾を振っているようにも見える程に、分かり易い反応だった。
「あっ、千秋くんだー」
「よぉしよし、抱き締めてやるから飛び込んで来い!」
「えへへ」
両手を広げた千秋の胸に飛び込んで抱き付き、頭を撫でられると嬉しそうに微笑むみやこの姿に、やはり無意識に惚気ている二人だと薫は溜息を吐く。本人たちは特別な事をしているつもりは無いだろうし、千秋が高校時代から誰に対しても抱き締めてあげたりするスキンシップの激しい人間だとは分かっていたが、それを彼女にするのでは意味合いが違う。薫がちらりと千秋の顔を覗くと、彼もまた嬉しそうに微笑んでいるような気がして、柄にもなくこの二人が幸せで良かったと思うのだ。
ぼんやりとしていると、薫はぐいっと腕を引っ張られて抱き締められる感覚に振り返る。すると、不満そうに顔を顰める莉世が自分を見上げて腕を抱き締めて来た。
「薫おそいってばー私だってもっと薫を独占したいのに千秋くんとばーっかり飲んでずるいーっ」
「莉世ちゃんがこんなに酔っぱらう所見たことなかったけど、普段俺が我侭聞いてもらってる分、新鮮だなぁ。正直俺が居ない所だと危なっかしいんだけどさ。吸血鬼とかに襲われちゃうかもしれないでしょ?」
「零さんそんなことしないもんー、それに薫にしか私も甘えないし」
「いいよ、莉世の言うことは何でも聞いてあげるから」
「家に着いたらいーっぱい甘やかして」
これは誘っているということなのか、それとも純粋に千秋のように抱き締めて欲しいということなのかよく分からないが、その言葉通り、偶には自分が莉世を沢山甘やかしてあげようと決意して、薫は足元をふらつかせる莉世の腰を抱く。
千秋にここで解散しようと声を掛けようとしたのだが、既に二人の世界に入っている千秋とみやこにふっと笑みを零して「じゃあね、千秋くん」とひらひらと手を振った。
千秋とみやこも帰宅に着き、その手は握られていた。街灯が照らす暗い道を、二人が住む家に向かってゆっくりと歩く。夜風に当たって酔いも収まり始めたことで、みやこは莉世と交わした会話を思い出していた。あんなにも、自分達の中を祝福されるなんて、それだけでも幸福な事のように思えるのだ。
「莉世先輩に千秋くんと一緒に居ること、ありがとうって言われたの」
「莉世に?」
「同じ部活だったし、千秋くんのことを心配してたみたい。私が千秋くんに、特別何かしてあげてる訳じゃないけど、一緒の夢を追い掛けることは出来るから」
「みやこが居るから、俺はどんな困難にも屈せずに立ち向かって行けるんだぞ。俺こそ、みやこには感謝してる」
千秋のその言葉だけで、十分だった。微力ながらも彼の支えになっているのなら、彼が前に進んでいく為に息を抜くことが出来る居場所を作れているのなら、それだけで良かったと思えるのだ。
「千秋くんの手、温かいね」
繋いだ千秋の手は温かく、みやこは微笑みながら千秋を見上げる。「よく言われるな!」と言いながらも、千秋は繋ぐ手に力を込めて指を絡めた。


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