ALICE+
2017/05/07 18:14
Xanadu SS
杜宮でクロウとアーサーの続きでクロウとトワ
「あれ、お前、確か……」
「あっ!えっと……クロウ君、だっけ」
アーサーと別れてからフランの家に帰宅する途中、クロウはレンガ小路でトワに出くわした。休日彼女が一人でこの辺りに居るのも珍しい。トワとは数日前に知り合ったばかりだが、フランのバイト先の所謂先輩であり、更にはアーサーの彼女だと言うのだから知り合ったばかりの他人とは言えない縁だった。
「今日はフランちゃんと一緒じゃないんだね?」
「今日はアーサーのヤツと会っててな。今丁度帰りって訳だ」
「アーサー君と?」
「今更積もる話があるって訳じゃねぇが、アイツもここに来てから色々変わったみてぇだし、話を聞いてたんだよ。アイツの惚気話聞いた後に若干後悔したが」
それはもう本音を隠そうとしながら回りくどい言い方を延々とした挙句結局言うのを繰り返して話は長かった。肩を竦めてやれやれと溜息を吐くが、クロウはトワの反応がないことに気が付いて彼女を見下ろす。するとトワは吃驚したように目を丸くし、次の瞬間には顔を僅かに染めていた。
「アーサー君、そんな話してたの?の、惚気話とか、あんまりそういうこと言わないから……」
「まぁ、アイツ変な所純情で照れ屋だからなぁ。……はっはーん、なるほど、アーサーがお前についてどう思ってるか、心配になるって事か」
「えっ!?べ、別にそんなことは……!」
「ま、興味ないなら別にわざわざ俺が言うことも……」
「ううっ……」
意地悪に笑うクロウにトワは項垂れた。そして観念したように聞きたいと訴え、クロウは「立ち話も何だし珈琲屋に行こうぜ」と直ぐ近くにある喫茶店にトワと向かった。二人分のコーヒーを頼み、席に着く。
トワがその惚気話、というものを気にしても仕方がない。アーサーは基本的に不器用な人間だった。トワへの恋愛感情を自覚したのも遅ければ、そこからのアプローチも手慣れた様子ではなかったのだから。そして付き合っている今も改めてトワに対してどこが好きだとか、そういうのをあまり口にしなかった。
「それで、その……っ、なんて、言ってたの!?」
「アイツの話回りくどくて全部言うと日が落ちちまうんだが、まぁ要約すると、だ」
クロウは先程のアーサーとの会話を思い出しながら彼が言っていたことをそのまま口にする。別に本人には言うなと釘を刺された訳でもないからいいだろうとクロウも軽く考えていた。
『会ったのは大学で、俺とトワは同じ学部の先輩と後輩だったんだが、俺は留学生っていうのもあってなかなか周囲に溶け込めなくてな』
『そりゃ何時も通りだな。くく、第一印象そんなよくねぇしなぁ』
『お前後で殴るぞ。……ったく、そんな中でもトワが俺に話しかけてくれて、そこから知り合いもどんどん増えていった。感謝しながらも可愛い後輩だって思ってたんだよ』
アーサーのその話を聞きながらクロウは相槌を打っていたが、内心「あぁどっかで滅茶苦茶聞き覚えのある話だ」と苦笑いをしていた。年下の幼馴染を可愛い妹みたいに思っていた時も幼少期にはあったものだ。
何時からかトワと会話している内に妙な違和感を覚えるようになり、優秀で気遣いも出来るトワが誰かに好意を持たれていることを知った時には苛立ちにも似たもやもやとした何かが胸に閊える感覚になり、それが一体何なのか分からず、勝手に気まずさを覚えて暫くトワと距離を置いた。
そんなアーサーの異変にトワも気付いていて、哀しそうな顔をして自分が何かしてしまっただろうかと謝罪をしてきたのだ。トワも、アーサーとの関係を修復したい一心で考えた行動だった。
そこで漸く、初めて恋愛感情を自覚した。自覚までかなりの時間を要し、振り切れたら思い切りはいいのだが所謂朴念仁というタイプの彼にトワもなかなか苦労しているだろう。
『それで、お前はどこが好きなんだ?』
『そ、それは……ったく、トワって小さいけど誰より努力家でしっかりしてて、健気な位、人に対しての気遣う。だからと言ってただ甘やかすんじゃなくて駄目なことは指摘しながらも背中を押して見守ってくれるんだよな』
『……』
『意外と皆のお姉さんって感じだが、頑張り屋過ぎて危なっかしいしな。つい面倒見たくなるっていうか……あの人当たりのいい明るい性格に何度も救われてる。そういう所が、……好きなんだろうな』
『……お前、普段言わねぇくせに、真面目にさらっとそんなこと言うんだから口説き文句の才能はあるよな』
『っ、わ、悪かったな!……なんつーか、本人に言ったら照れるというか、突然どうしたのって驚かれるだろ。というか、俺だけ話してるのって不公平なんだが』
『そこら辺が朴念仁なんだよ、お前。フランについて語って欲しいなら一から十まで語ってやるが』
『……、いや、嫌な予感するからいい……』
クロウの笑顔に何かを察したアーサーは知らない方がいいこともあるだろうとため息を吐きながらクロウを制した。軽い調子でこんなことを言っておきながら、クロウは本音をあまり他人に語らない人間だ。フランに対してどんな感情を抱いて想いを伝えたのかーー多分、それは本人達にしか分からないことも多いだろう。
やれやれと肩を竦めながらもアーサーのその顔は僅かに緩んでおり、幸せそうで何よりだとクロウは笑みを浮かべた。
「……って、言ってたって訳だ」
「……」
「おーい、聞いてるかトワ」
「……聞いてたけどっ……もう〜……」
「くく、愛されてるってこった」
掻い摘んだ会話を全て聞いたトワは顔を真っ赤にして両手で頬を挟み、嬉しさと恥ずかしさにじっとしていられなかった。
本人が居ない所で聞いてしまったのは申し訳ないとは思うけれど、愛情を確認出来て幸福感に満たされるのは事実だった。
「たまには直接言って欲しいなって言っても、いいのかなぁ……」
「いいんじゃねぇの?お前らどっちも遠慮するタイプに見えるし、アイツは紳士の遠慮の皮かぶった男だからつつけばボロでるぜ」
低く笑いながら楽しそうに語るクロウにトワは戸惑いながらも何時かは試してみようと心に決め、残っていたコーヒーを飲み干した。
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