ALICE+

2017/05/07 18:15


クロスオーバーSS

菊流さん宅のユリウス(X2)とクロウのお話。
裏の世界を知り、その世界に身を投じると決めた幼少期。
その悲痛な決心に裏付けられた己の信念。そして使命に生きて来た二人は性格こそは大きく異なる。

ユリウスから見ればクロウという本音を隠しながら上手く立ち回るお調子者な一面がある青年は身近な人間で比較的近い系統の人間と言えばアルヴィン辺りだろうし、クロウから見ればユリウスの気さくさがあるものの生真面目な性格はマキアス辺りを思い浮かべる。

互いの恋人である女性二人が彼らが一体どんな話をしているのだろうかと不安に思っている一方で、この二人はバーでお酒を嗜みながら思いの外会話を弾ませていた。
系統が違うから会話が噛みあうのかーーというよりもクロウが振る良くも悪くも男子特有の下世話な話題も含まる話題にこの堅物そうな、クランスピア社のエージェントという立場であるユリウスが良い顔をしないのではないかとクロウ自身も心配している所だったが、それはどうやら杞憂だったようだ。


「生真面目かと思いきや案外そうでもないんだな。冗談が通じるみたいで安心したぜ」
「冗談が通じない訳ではないよ。お茶会をしている二人が……というよりもフラン君が別れる前に君に何か色々注意をしていたみたいだし心配しているのかもしれないが」
「俺が余計な事を言うんじゃねぇかって心配してるらしくてな。まぁ、やめろって言われた所で彼女がこの場所に居ない男同士……喋りたくもなるじゃねぇか」


フランが焦り、困ったような顔で怒ることさえもクロウにとっては愉しい反応のようで、生真面目そうなフランが如何に彼に振り回されているのかが伺えた。
しかし、ユリウスはそれを気の毒だと思う訳でも無かった。恐らくクロウがフランに抱く欲求や愛情の形、そしてユリウスがレイに抱いているそれは似ているように思えたからだ。


「確かに、困った顔や泣きそうな顔を見ると、ついつい更に余裕をなくして苛めたくなる気持ちは分からなくもない」
「へぇ、話が分かるじゃねぇか。真面目な顔してあの大人しそうな子相手にそんなことを考えてるなんてなぁ。男である以上そう言う性癖とか性欲ってのは切っても切り離せないよな。で?具体的にナニしてるんだ?」
「……それを話すと流石にレイに怒られそうだが」
「まぁ俺もフランに怒られるけど。こっちは何時ものことだからな。嫌がられるが最終的には俺を受け入れようとするしな」
「やはり、そういった"性癖"に関しては話が合うかもしれないな」


レイも自分を赦し、全てを受け入れようとしてしまう。それに甘えきってしまってはいけないと思ってはいるのだが、受け入れられることに安堵するし、逆に彼女からも求めて欲しくて意地悪をしたくなるのだ。
カランと氷を鳴らしながらグラスに注がれたお酒を口内に含むユリウスの冷静に自己分析をするその言葉に、クロウもまたぐっと酒を飲み「分かるぜー」と笑いながら同意をする。

恥じらっていた彼女の余裕が無くなって必死に自分を求めて来るその転換が堪らないのだ。生真面目な表面に隠されたその愛情と欲求を受け止めるのは大変そうだとクロウは肩を揺らしてくっくと笑うが、ユリウスも会話の端々から伺える様々な行為をする為に隠すことも無く要求していてそれを受け止めるのも大変そうだと苦笑をする。


「まぁ、俺の場合は正直フランとのことはそもそもの切っ掛けから賭けだったが、偶然と幸運が重なって今一緒になれてるんだよな」
「奇遇だな……俺も、きっと幸運に恵まれなければ一緒に居なかった。レイを失うと知っていて最後の最後まで縛り付けておきながら……他者との幸せを本心では願えないまま命を散らそうとしていた」
「……利己的だよな」


アンタも、俺も。

クロウの言葉にユリウスは横に座っている彼を見る。
クロウのすっと細めたその眼差しの底冷えするような深い深い闇。それが裏の世界で生きて来た、非人道的な決断をも下せる冷酷な感情も持ち合わせた人間の物なのだと、ユリウスには分かっていた。自分もそういう世界で生きて来て、経験があったからだ。
あぁやはり、こういう所も似ているのかもしれない。自分の手では相手を幸せに出来ないだろうと知りながらも切り捨てることは出来ず、自分の為に縛り付けてしまったのだ。


「こういう人間を受け入れてくれる女性が現れるなんて、思っていたか?」
「いーや、俺は本分を切り離そうとしてたからな。そういう人間を本来なら作るべきじゃないって重々理解してたはずだった。ただ受け入れられたっていう訳じゃなくて……フランは、真っ向から俺にぶつかって来たけどな」


手で銃の形を作ってばーん、と撃つような仕草をしたから愛おしい彼女とも武器を交えて争ったということなのだろう。少し話しただけに過ぎないが、フランがそういうタイプの人間なのだろうとは分かっていた。その意志の強さや言動はルドガーが言っていた分史世界ミラという女性に近いのかもしれない。
今でこそ和気藹々とした会話をしているが、こちらと同じように一波乱があった末なのだ。


「芯が強いという辺りはそちらの彼女とレイは似ているのかもしれない。だが、どちらも遠慮をするんだな。俺の場合は……弟を最優先にして生きていた分、彼女に遠慮をさせていた」
「あぁ、あのレイって子はお淑やかで落ち着いてるよな。アンタを許しそうだ。後悔とか苦悩を全部抱えながら」
「……、飄々とした態度で誤魔化されそうになるが、良く人を見てるな」
「いや、抱え過ぎてもなお足を止めなかった人間を知ってたってだけだよ」


それが誰かをクロウは語ることは無かったが、ユリウスはそれがフランのことなのだと察した。そして二人は自覚をしていた。もしも出会っていなければきっと親族以外の誰かに対して愛情を抱くことも、今の幸福を知ることは無かったのだろうと。

お酒を互いにもう一杯頼み、時折下世話な話も織り交ぜながら会話を弾ませたのだった。


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