凸凹コンビとはよく言ったもので、わたしと夜久は、まさにそんな感じだと我ながら思う。
あー言えばこー言う。口を開けば、絶対に何か返ってくる。そのハタから見たら辛辣ともとれる会話達を、わたしたちはなんだかんだ楽しんでいる。
(まぁ夜久がどう思ってるかなんて知らないけど。少なくともわたしはそう。)
「ジャマなんですけど」
廊下で友達と話してると後ろから声がする。この言い方。誰なのかなんてわかっている。振り向くとほら、眉間にシワを寄せたこいつは“どけよ”と目だけで訴える。
「あれ?小さくて見えなかったごめんね〜」
「誰かさんがデカすぎるんじゃねーの?」
「…ハイ???」
「オイ見下ろすな」
身長165センチ。
周りの男子に比べて拳ひとつぶん小さく見える夜久は、バレー部という他の部活と比べても大きな人達か集まる部活のレギュラーらしい。
前に夜久のところに来てたバレー部の1年生クンが「夜久さんがいなかったらウチの部は成り立たないっす!」と興奮気味に話していて素直に驚いた。
私はというと小学生の時からクラスの背の順では一番後ろが当たり前で、その頃はよくクラスの男子に巨人とかデカ女とか散々な呼び名でからかわれていた。周りの女子には、モデルみたいでかっこいいよ!と毎度同じフォローをされるこの170センチを超える身長は、どんなにぎゅっと丸め込んだって全然飲み込めないほどには大きなコンプレックスだ。
先月席替えをしてから隣の席にいるこの夜久という男は、そんなわたしのコンプレックスを際立たせる存在なのだ。
「おまえそんだけ身長あるんだから、バレーやったら絶対イイのにな」
休み時間、特にやることもなく隣の席のこいつの机に落書きでもしてやろうかと目論んでいた時、突然そんなことを言われる。わたしがバレーねぇ。
「うーーん、」
「なんで?ヤなの?」
「ほら、私、夢はモデルだから」
「……」
「ちょっとなんで黙るのよ」
「バカだろ、ほんとバカだろ」
顔見てから言えよ、と言い放った夜久に肘鉄を喰らわせる。ウッ…とうめいた夜久を見て満足した私は、はっはっはー!と笑った。
「おまえはほんとに女か」
「か弱い女子ですけど、なにか」
「それマジで言ってんなら今すぐ訂正したほうがいいぞ」
「うるさい!わかってます〜」
ぶぅ、と頬を膨らませるわたしを見て、おおそれなら安心、と笑った。なにが安心だ。
こう見えて中身は非常にデリケートなんだから。
横目に睨みを効かせたところで、ふんふんと鼻歌をうたいはじめたこいつが気づくはずもなく。どーせ1時間後の部活のことを考えているんだろう。脳内99%をバレーで占めているであろう単純な脳みそをひっそりと哀れむ。
「オイなんか今すごい失礼なこと考えただろ」
「え!なんでわたしが夜久バカだなーって考えてたのわかったの?エスパー?」
「殴るぞテメェ」
HRが終わって、帰ろうと教室を出たところで背中に衝撃が走る。
「じゃな!」
バンッ!と背中をおもいっきり叩かれて、声にならない悲鳴を噛みしめる。視界には夜久がうれしそうに走ってくのが見えた。部活に行くのが楽しみで楽しみで仕方なかったんだろう。
だからってふつうこんな力強く女子の背中を叩くかしら。
窓から差し込む西日に当たった後ろ姿がどんどん小さくなっていく。なぜだか眩しくて目を細めた。
170918