あれからというもの、夜久の好きな人が誰なのか気になってしょうがない私は、探偵よろしく調査に勤しんでいた。
夜久本人には何度も聞き出そうとしてみたが、頑なに教えてくれない。きっとわたしに弱みを握られるのが嫌なんだろう。

ふと夜久と同じ部活の彼なら知っているのではないかと、他クラスの教室へ向かった。
教室の入り口で、ちょうど探していた黒髪を見つけて声をかける。

「中宮さんジャン」
「黒尾くん!聞きたいことがあるの!」

夜久の好きな子って誰か知ってる?

会って早々本題に移ったわたしに、黒尾くんは若干引き気味になりながらも知らない、と答えをくれる。

「てか夜久の好きな子とかキョーミねーな」
「うそ?!気にならないの?!」
「中宮さんは気になるんだ」
「うん!」

へぇ、と言った黒尾くんは面白そうにニヤリと笑った。
180センチを優に超える彼は、私から見てもとても大きく感じる。基本的に男子と同じ目線の自分が、こうして見上げて話すのはなんだか新鮮だ。

「まぁ検討は大体つくけど…」
「え、うそ!誰?!」
「あとは本人に聞きなよ」

本人?と首を傾げたところに、黒尾くんの影からまさに話題の張本人が現れた。今気づいたわたしには、いつからいたのかもわからない。

「夜久…黒尾くんの後ろにいたらほんと気づかないね…」
「うるせェ、つーかおまえ何してんだこんなところで」
「中宮さんが夜久の好きな子知りたいんだってさ」
「は?!!」
「…気になるんだもん」

てへ、と笑ってみたものの夜久の顔はおもいっきり引きつっている。何故ここまでするんだ、と顔が物語っているのがわかる。

「まぁあとは二人でやってくれる?俺暇じゃないから」

じゃ、と教室へ戻ってしまった黒尾くんを引き止める理由もなく、二人で廊下にぽつんと残る羽目になってしまった。
周りは掃除中の生徒や同じく他クラスから来た生徒で賑わっており、誰も私たちを気にかける者はいない。
はぁ、と大きく溜め息をついたと同時に夜久がしゃがみこんだ。
そんな夜久に目線を合わせるように、向かい合わせにしゃがみこむ。

「もー、おまえ、しつこい」
「協力するから!ね!」
「…おまえの協力とか、かえって邪魔になりそう」
「ちなみに私の知ってる人?」

ぐいぐいと畳み掛けるわたしをじとっと見たあと、あーもうほんっとしつけーなぁ!と夜久は溜め息と同時に声を張る。



「知ってるも何もさ、おまえだけど」



「………」
「なんとか言えば」
「…え?今なんて?」

しっかりと耳には入ってきたはずなのに、頭の中で何度リピートされても飲み込めない。

知ってるも何も、おまえだけど。
おまえって、わたしのこと?
夜久の好きな人って、わたしのこと?


「わ、わたし…?」


ようやく理解したと思ったら全身の血液が全て顔に集まったんじゃないかと思うくらい熱くなった。
いまだしゃがみこんだまま真っ赤な顔で夜久を見たわたしは、こちらを見る夜久の顔もほんのり赤いことに気づいてさらに熱を上げる。


「ほんとバカじゃねーのおまえ」


どうしよう。
いつもみたいな返しはできるはずもなかった。


170921